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命だけもった人々-関東大震災/夢二

初回号「東京災難画信」一、都新聞 大正12年9月14日掲載
昨日まで、新時代の伊達男が、所謂文化婦人の左の手を取って、ダンシングホールからカフェーへと、ヂヤツク・ビツクルの足取りで歩いてゐた、所謂大正文化の模範都市と見えた銀座街が、今日は一躍数里の焦土と化した。
自分の頭が首の上に着いてゐることさへ、まだはつきりと感じられない。 化学も、宗教も、政治も、暫く呆然としたやうに見えたに無理はなかった。大地震の意図を誰が知つてゐたらう。自然は、文化を一朝一揺りにして、一瞬にして太古を取返した。路行く人は裸体の上に、僅に一枚の布を纏つてゐるに過ぎない。何を言ふべきかも知らず、黙々として、たゞ左側をそろそろと歩いてゆく。
命だけ持つた人、破れた鍋をさげた女、子供を負つた母、老婆を車にのせた子、何処から何処へ行くのか知らない。たゞ慌しく黙々として歩いてゆく。おそらく彼等自身も、何処へゆけば好いのか知らないのであろう。 おそらく彼等自身も、何処へゆけば好いのか知らないのであろう。

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最近、大きな火山噴火に伴っての地震の警告がされている。

YOUTUBEでは災害関連の動画も多くなった。

リュックには災害用品を、津波情報に注意して、避難場所の確認 水 食糧 寒さ対策 心の準備・・

いつやって来てもおかしくない、という言葉が頭に浮かぶ。

「ゞ慌しく黙々として歩いてゆく・・」

夢二の言葉は私の心の響いて、状況が目に浮かんだ。

人間はとてつもなく大きな災難に遭った時に

そうなってしまうのだろう・・・

自らも言い表せないほどの感情を抱きながら、

人々や、情景を見つめて描き言葉にして表現した夢二。

私は、これが彼が偉大な天才画家だった証拠だと思うのです。

                     キョウコ

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