山の怖い話
こんばんわ!
せっかくのお盆なので、怖い話を投稿していこうと思います。苦手な方はそっと戻って下さいね。
僕が大学生の頃、アルバイト先で田中さんという社員の方がいました。田中さんとは、お互いに釣り好きということで親しくなりよく飲みに行ってました。
その日も田中さんと、2人で居酒屋で飲んでいると、田中さんが渓流釣りをしていたときの不思議な話をしてくれました。
田中さんが、30代で体力にまだ自信があった頃、釣りをしようと車で山に向かい、山奥の沢へ歩いていったそうです。
しばらく歩いて、だれも来ないような山奥でいいポイントをやっと見つけた田中さんは釣りをはじめたそうです。
釣りをはじめてなにか違和感を感じる、ただその違和感の原因がわからない。
その違和感の理由がわかったのは、釣りをしてしばらくしてからだったそうです。
違和感の正体それは、視線。誰もいない山奥で視線を感じる、周りを見渡すと川のさらに山手の方に、猿のような生き物がいる。
野生動物とは目を会わせないようにする、山に登る人たちが気を付けてることで、田中さんも目をそらして釣りに集中することに。
何度か竿を振っていると、上流からなにやら動いている気がする。さっきの猿だったら嫌だなぁと思いつつ、田中さんは横目で上流の方を目をやると、大きな岩に猿がいて田中さんの方をじぃ~と見ていたそうです。
そのとき、田中さんは猿の顔が無表情のおじさんのように見えたそうです。とっさに目をそらし、早くこの場所から逃げようと釣糸を巻いていると、
「釣れたか?」
先ほど、大きな岩にいた猿が自分の近くまできて話しかけている。いつの間に、近くに来たんだ。
猿が何か話してる、怖い、必死に声が出そうになるのを我慢して釣糸を巻いて、猿の方を見ないようにして下流に歩いたそうです。
するとまた、「釣れたか?」としわがれた声で聞いてくる。
問い掛けを無視して、歩いていると後ろから絡みつくような視線を感じる。森は静寂で鳥の鳴き声も聞こえない、自分の呼吸音だけがやけに耳につく。
竿を投げ出していきたいが、買ったばかりの高い竿を置いてはいけない。
後ろは振り向いたらダメだと思い、竿先を前にして真正面だけを見据えて急ぎ足で歩いたそうです。
下流にくだり、やっと自分の車が見えるところまで着いて、ほっと息をなでおろしたときに、
「逃げるなよ」
短い言葉でしたが、それは確実に耳元で発せられたものだったそうです。
田中さんは、自分でも訳のわからない大声を出しながら走り出したそうです。
途中、木の枝に引っ掛かったのか帽子が引っ張られて落ちたそうですが、お構いなしに走ったそうです。
やっとの思いで、車の場所まで着いたらすぐに、車のエンジンをかけて逃げ出したそうです。
車を走らせながら、バックミラーを見ると自分の帽子を持った猿のような生き物が車を見つめていたそうです。
ひとしきり話すと、田中さんは目を閉じて深いため息をはきました。
「田中さんのために、帽子を持ってきてくれたんじゃないんですか?」
酔ってた僕が冗談まじりにたずねると、
「ありゃ、意地でも顔を見せたかったんだろうな、良かったよ。竿先を前にしていて、普段は竿先は後ろにしているんだ」
「へぇ~、竿先が前じゃいけないんですか?」
「なんだ知らんのか?前に人がいたり、障害物があるとあぶないし、竿が折れちゃう可能性もあるだろ。
だから、竿先は後ろに向けるのがマナーなんだよ。
もしあの時、竿先を後ろにしていたら、竿を掴まれて後ろ振りむいてたかもな」
そういって、顔を真っ赤した田中さんは神妙な顔をしてお酒を飲んでいた。
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