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詩「もしも命が贈れたら」
もしも命が贈れたら
もし命を分割して
贈ったり貰ったり
することができたら
百二歳まで生きられる老人十人が
二歳で亡くなる子どもに
二年分の命を贈って
二十二歳まで生きられる
というようなことが
実現できるのだろうか
もっとも人生に絶望した二十歳の若者が
百歳の老人に残り八十年分の命を贈る
というようなことも起きるかも知れない
そのためには
自分の寿命が分からなければならない
そうでなければ
誰かに命を贈ろうとして
残高不足
てなことになりかねない
一方で秦の始皇帝のような権力者が
永遠の命を得ようとして
人びとから命を駆り集める可能性もある
そもそもこれは
馬鹿げた妄想だ
命が贈れたとしても
すべての人の寿命は平等にはならない
自分の寿命が分かることは
人が電化製品になるようなものだ
それでも私は妄想せずにはいられない
この世の不条理に
こころ曇らすたびに