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俳句「当てもないけれど・・・」

待ちわびし手紙ポストに小鳥来る

 中学入学とともに親許を離れた私にとって、手紙はこころの支えだった。電子メールというのは「情報」だが、手紙は「物」である。物だから形がある。色がある。重みがある。匂いがある。手触りがある。さすがに味覚は刺激しないが、同じようにことばを伝える手段であっても電子メールと手紙はまったく別物といえるくらいに違う。

 いまは自分が手紙を出すこともなくなったし、事務的な書類以外の郵便物が届くこともほとんどなくなった。それでも、郵便配達のバイクの音がして、ポストに郵便物が落ちる音がすると、少しこころときめく。

 当てもないのに、いまも私は手紙を待ちわびている。

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