人のためになる曲とは
最近歌詞の作り方を変えた。
大きく変わったところで言うと、
以前よりオーダーメイド的なリリックの書き方になった。と、これだけでは何の事なのかさっぱりなので
まず、今までの大まかな曲の作り方を2パターン紹介する。
・トラックを先に貰い、それを繰り返し聴いて世界観を構築していく。
・先に既存のトラックにラップを乗せて、そのあとアカペラを元に音をプロデューサーにつけてもらう。
だいたいこのどちらかに当てはまるのだが、
どちらにも良さがある。
しかし、今回自分が注目したのは自分の「ラップ」の部分である。
ちなみにこの記事を書いている段階でこのマインドになってまだ間もないので、
この考え方が今後も全てに当てはまるとは限らない。
少しマニアックな話になるが、
僕のラップというのは縦のグリッドに忠実で、
端的にいうと"リミックスし易い"ビートアプローチというのを心掛けてきた。
というのも、なぜかというと、一曲書いたら同時に「リミックス」という選択肢が付随するので、単純にリリースの効率が良いからである。
そして、リリースペースの維持/制作のスピード感というのは僕の中で必須で、
さらにいうならば"何か作っていない(創作していない)と死ぬ"とさえ思うからである。
しかし、最近生きている中で、「人のためになるもの」ということを考え始めた。
というのも、これは音楽に限ったことではないが、
人のために作られたものというのはパワーがある。
例えば食事にしてもそう。
誰かの為に料理をするのは苦にならないが、自分一人だとファストフードで済ましてしまう、なんてことは一人暮らしの「あるある」だと思う。
そして誰かが自分の為に作ってくれた料理は信じられないほど美味しい。
それは自分では再現不可能な味である。と僕は思う。
そこで僕は考えたのが、「誰かのためになる音楽とは」ということ。
これがまた説明するのが難しくて、僕の場合はだが、1stアルバムで受けた「フロー重視で言葉が残らない」という耳の肥えたリスナーたちからの指摘に対しての反発心や、自身が無意識で持っていたラッパーとしての固定概念が作品を重ねるごとに強くなっていき(もちろんその他の自分を取り巻く環境の変化なども混ざり)、いつしか「俺を評価しろ」「俺のリリックは凄いだろ」「俺の方がヤバイ」などといった気持ちがリリックを次第に覆う割合が大きくなっていたのです。
その方向性は今思うと遠回りだったのだが、後悔はしていなくて、今当時の自分に助言できるとしても「その時本気で信じた道ならそれで良い」と思う。
その辺が変わり始めたのが前作「Rappelle-toi」なのだが
まあこのアルバムなんかは地味に大きな転換期だったと今でも思う。
それからしばらく経って、これはヒップホップという文化特有のものかもしれないが
セルフボースティングも含め、とにかく「今まで自分の為に作っていた」と思った。
それは前述のボースティングを除いても、とにかく自分の表現の追求。
自分が納得できるもの。技術の向上。自分のアートとしての〜など、
どこを切っても「自分」が出てくる。
それはそれでピュアで良いのだけれど、じゃあ誰かの為になることを第一に考えていたか?と問われれば「はい」とは即答できない。
「なれば良いな」とは思っていたが。
で、今、新たに色々なアーティストと曲を作っていて思うのだが、
自分の為にオーダーメイドで作ってくれたトラックやリリックの有り難さ。
これは本当に身に沁みる。遠回りした甲斐さえ感じる。
で、自分なりに曲の解釈を改めるべく片っ端からラッパーを聴き漁った結果、
そのビートに対しての適切なアプローチというのが間違いなく存在して、それは他のビートには代用し難いものである。
という事に気が付いた。
オリジナル×オリジナル=オリジナル
という事なのだが、BPM(曲の速さ)などを無視して、そのビートが欲しい言葉というのがあると。
感覚としては「ビートメイカーたちがパッドを叩いた感触を感じながら書く」というと少し伝わるだろうか。
それを踏襲した上で、更に上記の「人のためになるリリックを書く」というところに差し掛かるわけなので、なかなかに道は険しい。しかし二つは別なことのようで実は同じ終着点に向かっている。
人のためになるリリックとは、僕が思うに生活に寄り添う音楽であるという事だと、今は思っているのですが、特定の誰かに向ける必要はなく、しかし、そのシーン、用途はこちら側は明確なほど良いと思ったいます。
それが例えこちらの予想と違っていても、明確にイメージしておいたほうが制作面で確実に仕上がり具合が変わってくる。
そしてその生活に寄り添う音楽を作るにはまずビートに寄り添わなくてはならないということです。
以上の大きな2点を踏まえて、現在大掛かりな作品を作っているので、
気長に待っていただければ幸いです。
長くなりましたがあまりロジカルにリリックに関して話す機会もないので、今の僕の考え方を記しておきました。