「ちょびっと強くなれた」早耶の一歩――デレステ・松原早耶の新展開について
※ニコニコブログに2017年3月26日に投稿した記事を移行したものです
はじめに
先日のシンデレラキャラバンにて、[ロワイヤルハート]松原早耶が登場しました(以下、ロワイヤルハート)。Twitterで「早耶」と定期的に検索しているのですが、好意的なツイートの波に目を通すのが骨でした。嬉しい悲鳴です。
さて、待ちに待ったSRの追加は、同時に、コミュ、台詞の追加を意味します。つまり、デレステ時空で松原早耶の物語が前に進んだのです。
個人的には、今回追加されたコミュ・台詞ともに非常に嬉しい内容でした。メモリアルコミュ1話、そしてRでは、強い決意、根底にある想いをこれでもかとぶつけてきた印象を持っています。その内容を十分に引き継ぎつつも、現時点での未熟さ、はたまた早耶らしい愛らしさを詰め込んだ"バランスのいい"内容だったと感じます。
では、デレステ時空において早耶の物語はどう進んだのでしょうか。また、バランスがいいとはどこから導かれる印象なのでしょうか。今回は、この点について書いていきます。
1.「甘ったれ」と「甘えんぼう」の線引き
むぅ~。早耶だってわかってますよぉ~。甘ったれと、甘えんぼうは違いますもんねぇ。だから、早耶、頑張りますぅ。
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 親愛度100)
まず注目したのは上に引用した台詞です。甘えたがりの早耶ですが、「甘ったれ」と「甘えんぼう」を明確に区別していることがうかがえます。
では、早耶の言う「甘えんぼう」とはどういう在り方なのでしょうか。「甘えんぼう」でいて、なお頑張るとはどういうことなのでしょうか。以下で考えていきます。
1-1.モバマスのロワイヤルハート
デレステのロワイヤルハートについて書いていく前に、簡単にモバマスのロワイヤルハートについて印象をまとめておきます。こちらは、ともすれば「甘ったれ」と映るような台詞が少なくないのです。
はぁ、ふぅ、早耶、もうダメですぅ~。やる気はあっても…これ以上レッスンなんてできませんよぉ。ほらぁ、体もこんなにフルフル震えちゃってますぅ。休憩でいいですよねぇ?早耶のお願いきいてぇ
(モバ・[ロワイヤルハート]松原早耶)
早耶、Pさんに大事にされたいだけなんですぅ。そうすれば少しずつ、ちゃんとしたアイドルになりますからぁ。ね?ね?
(モバ・[ロワイヤルハート]松原早耶)
特訓前の練習風景では、へたり込んでいる絵柄の通りに、もうこれ以上レッスンができないという泣きごとが聞かれます。弱っている、これ以上は出来ない、慰めてほしい、などなど……。どれくらいレッスンをこなしたかも分からないだけに、「甘ったれ」にも映りうるでしょう。
あるいは、シンデレラガールズ劇場207話「理由は言えない」もその印象を強めます。ロワイヤルハートの早耶が恵磨さん、留美さんとレッスンに臨んでいるのですが、トレーニングを始めて1時間で早耶はギブアップと音を上げています。
もちろん、特訓後はステージで"アイドルとして"十分に振る舞っています。また、そもそも初期の早耶が体力不足だったことを考えれば、"早耶なりに"頑張っていたと言えるでしょう。事実「早耶、がんばりましたよぉ」という台詞もありますし、「はぁ…はぁ…んぐ…はぁ…」と可愛さが隠れてしまうような、キツそうな台詞もあります。
「ごめんなさぁい。つぎはもっとできる子になりますからぁ~」という特訓前の台詞から推察できる通り、現段階で出来ることはちゃんと行っていたのでしょう。
ただ、早耶がレッスンにどういう心境で臨んでいたのか、キツイ中で何を考えていたのかまでは少ない台詞からだと見えづらいのです。どうしても「甘ったれ」な印象を感じさせてしまいます。
1-2.「甘え」はあるけど「諦める」子ではない
では、デレステのロワイヤルハートにも触れていきましょう。こちらでも感じるのは、やはり「甘え」があることでしょう。レッスンがキツイと泣きごとを言います。すぐに疲れます。それでも簡単に諦める子でもありません。
もう、くたくたぁ~。…ちょっぴり汗もかいちゃってるし~。えぇ~?汗だくになるまでぇ~!?
そんな~!もう、髪とか乱れちゃっても知りませんよぉ~
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 プロフィール)
「そんな~!」と文句が先に出ますし、「髪とか乱れちゃっても」と可愛くあることに気を取られています。それでも、そこで辞めるのではなく、ちゃんとレッスンを続けているのです。
今回の追加コミュも同様でした。ランニングがきつくてズルをしようとしましたし、可愛く甘えたりもしました。それでも、なんだかんだと最後まできっちり走り切りました。
ズルをしようとしたり、すぐに音を上げてしまったり、正直まだまだ未熟な面はあります。だからといって、そこで立ち止まる「甘ったれ」でもないのです。道半ば(とりわけメモリアルコミュ2の早耶はアイドルになってから日が浅いでしょう)の早耶だからこそのバランスです。
でも、ちゃんとやり遂げたら……甘えてもいいですよねぇ?○○さん♪可愛くて、甘えんぼうな女の子。それが松原早耶なんですぅ~♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 親愛度100)
Pに甘えることでモチベーションを上げているような台詞も散見されます。「甘えんぼうな女の子」として振る舞いながら、まだまだ未熟ななかで努力を重ねていることがよく分かるのです。
1-3.未熟さと愛らしさの狭間で
モバマスのロワイヤルハートでは、「甘ったれ」という印象をどこか感じさせた早耶でした。しかし、今回のロワイヤルハートで、「甘えんぼうな女の子」として振る舞いつつ、現時点で出来る範囲で努力を重ねていることも見えたと思います。
「甘えんぼう」は早耶なりに愛らしさを演出する手段だと考えられます。もちろん、体力不足という弱点、未熟さも「甘え」に繋がっていることは確かでしょう。未熟さと愛らしさが絶妙に同居しているのが、ロワイヤルハート時点の松原早耶という女の子なのだと思います。
だからといって、誰彼構わず甘えているわけでもありません。「甘えんぼうになるのは、○○さんにだけだもん…」という台詞もあります。音を上げながらもレッスンを頑張り、Pに甘えてモチベーションを上げて、またレッスンに臨んでいるのです。
そして、事実早耶が努力していることは特訓後の台詞からよく分かるのです。
2."アイドル松原早耶"は支えられて一歩を踏み出す
2-1.早耶がファンを獲得するということ
今回の特訓後はステージで踊る早耶が描かれています。つまり、ファンに向けてアピールをする早耶の姿が見られるわけです。これは、メモリアルコミュ1や、Rのコミュ、台詞を見ていると非常に喜ばしいことです。
メモリアルコミュ1に見られる通り、早耶は彼女なりに可愛くなる努力を重ねていました。しかし、その努力はなかなか報われず、認められてきませんでした。他の読者モデルからは陰口を叩かれ、Pからの「頑張ってる。君は可愛いよ」の言葉にも、「早耶が、可愛い……?」と当初は上手く受け止めることができませんでした。
こうした背景があるからこそ、Rの特訓コミュや親愛度台詞はいっそう響きます。
早耶、アイドルになるときに、
怖いものが一つだけあったんです。
それは……嫌われること。
(中略)
カワイイ私でいると、嫌われちゃうんじゃないかって、
不安で仕方なかったんですぅ……。
(中略)
誰かに嫌いって言われても、
たった一人に好きって言ってもらえるアイドルになるの!
(特訓エピソード・R)
早耶なりの「可愛い」を突き詰めることは誰かに嫌われうることだ、というのが早耶が経験から導き出してきた考えです。「好きって言ってもらえる回数が増えたら、嫌いって言われる回数も増えるんだろうなぁ……。」(デレ・R+ 親愛度150)という台詞にもその考えが滲んでいます。
そして、早耶は「たった一人」でもいいから好きって言ってもらえるよう頑張る、というところから始めました。自身を認めてくれたPの言葉だけを頼りに、これまで突き詰めてきた自身の「可愛い」でさらに前進しようと決意したのです。
でも、頑張ってるって言ってくれましたよねぇ。
カワイイって言ってくれて……
早耶は早耶のままでいいんだって……。
自分のカワイさに自信を持って、
アイドルを続けていいんだって思えたんですっ♪
(特訓エピソード・R)
その早耶を応援してくれる人がちゃんと存在していることが分かる今回のカードは、それだけで非常に価値があります。同時に、ファンの存在は早耶にとっても確実に後押しになると言えます。
可愛く振る舞えば、振る舞うほど……カワイコぶってるって思われるかもぉ……でも誰に嫌われても、早耶はアイドルになりたいです♪
だって、早耶を好きでいてくれる人を、幸せにできるお仕事だからっ♪誰よりも幸せになってほしいなっ☆
(デレ・R 親愛度100)
早耶はアイドルを、自身を好きになってくれた人を「幸せにできるお仕事」と称します。その早耶が、ファンを獲得したときどう変わるのか。
モバマスのロワイヤルハートでは、それまでメモリアルコミュ1のような背景があまり描かれてこなかったこともあってか(最近実装されたぷちには、早耶の背景についても記述があります)、ファンについての言及はほとんどありません。だからこそ、今回のロワイヤルハート特訓後は、ファンを獲得してどう変わるかも大きな注目点となります。
そして、この点こそが早耶の「努力」と関係してくるのです。
2-2.「早耶を好きになってくれた人のほうを向いて、まっすぐにアピールするのぉ♪」
この台詞はロワイヤルハートの特訓コミュのものです。努力してもなかなか報われなかった早耶ですが、ちゃんと向くべき方向が定まりました。今回、明確に「好きになってくれた人」たちが登場したのです。
先述の通り、早耶にとってアイドルは、自身を好きになってくれた人を「幸せにできるお仕事」です。当然、ファンの存在を受けて努力を重ねます。事実、特訓前から既に努力している姿は描かれています。
どんな場所でも可愛くなるためのレッスン!わんつーさんしっ♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
体力つけるの難しい~。秘密のレッスン、必要かも…
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
早耶の中心でもある「可愛くなる」ため変わらず努力を傾け、弱点である体力不足もちゃんと認識しています。特訓後の台詞で「レッスンしてても息切れしなくなったのぉ~。これって成果が出てる…?」とあるように、努力していたことがうかがえます。
今日のために、たっくさん頑張りましたぁ♪今日の早耶は一味違うよぉ。たっくさんのキモチを賭けてくださいねぇ。
それ以上のハッピーをお返ししますからぁ~!
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ プロフィール)
特訓コミュでお仕事が「イチバンうれしいごほうびかもぉ♪」と早耶は言います。それは、自身を好きになってくれた人にハッピーを返すことができるからかもしれません(自身を可愛いと認めてくれる人たちに会えるから、というのもあるかもしれません。しかし、これはハッピーを返すことができる、という点と裏表の関係でしょう)。
だからこそ、上に引用した早耶の台詞は強い説得力を持ちます。
そして、ステージの早耶はファンの存在を前にしてまた決意を新たにするのです。
早耶のことをわかってくれる人がこんなに…。お返しは…早耶のハートで♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
早耶も、つよい心でファンを信じます!信じてますから☆
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
かつて、「誰かに嫌いって言われても、たった一人に好きって言ってもらえるアイドルになるの!」と強い心を持つことを誓った早耶は、自身を認めてくれる人たちに出会いました。そこで、自身の「可愛い」を認めてくれる人たちを信じることを改めて誓うのです。
早耶と勝ちにいきましょ♪レッスンの成果ぜーんぶ見せますからぁ
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
たくさんのキモチ、早耶にあずけて☆何倍にもして返すからぁ♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
みんな、ついてきてくれるのぉ…?じゃあもっと可愛くならなくちゃ!
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
イジワルすると、ファンのみんなに言いつけちゃうからー!べーだ♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ホーム)
自身を好きになってくれた人たちに触れて早耶はまた少し強くなりました。やや強気な台詞に自信がうかがえます。そして、さらに上を目指そうという向上心が垣間見えます。松原早耶は認められ、支えられながら、また一歩前に進んだのです。
特に最後に引用した台詞は個人的にツボです。自身を最初に認めてくれたPに対して、こうした軽口を叩けることが嬉しいのです。言いつけたときに「味方」になってくれる、そんなファンが早耶に出来たこと、そして、早耶がそう信じていることがとても大きいのです。
早耶を認め、可愛いと思っている人は「たった一人」でも、当然、Pだけでもなく、どんどんと増えていることが実感できる素敵な台詞だと思います。
2-3.世界は劇的には変わらない
ファンの存在もあり、早耶はいっそう努力できる子になったと言えるでしょう。ただ「可愛くなりたい」と願っていた女の子が、ファンのためにも頑張ろうと"アイドルとして"また一歩踏み出したのです。
"早耶なりの"努力はかつて誤解されたこともありました。今回のロワイヤルハート時点でもまだ「甘ったれ」と「甘えんぼう」の狭間にあるとも言えます。それでも、ファンの存在もあって、少しずつ本気になった早耶をただただ「ぶりっこ」や「甘ったれ」と呼ぶことは誤りでしょう。
しかし、これはあくまでもじっくり見ているPやファンの視点です。
はぁ~あ。アイドルって難しいですぅ~。
レッスンは大変だし、カワイイだけでもダメでぇ……。
早耶はこういう女の子なんですっ!って、
ちゃんとアピールしないと、すぐに誤解されちゃうんだぁ。
(特訓エピソード [ロワイヤルハート]松原早耶)
未だに誤解はついてまわるようです。それでも、今の早耶はめげずに歩みを進めています。ここまで述べてきたファンの存在が支えになっていることでしょう。しかし、それだけではありません。
Pの存在が早耶を強くしているのです。
3.前を走る道先案内人
3-1.早耶から語られるP像
早耶の目に映るPはどんな存在なのでしょうか。デレステはPに関する言及が多いので、一部これを拾ってみましょう。
甘やかしてくれないんですかぁ~。……そういうところも、好きなのがちょっぴり悔しいですぅ。もう、やりますよぉ~。最後までっ!
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 親愛度50)
もう…○○さんは、早耶の頑張らせ方わかってるなぁ
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ホーム)
○○さんは何でもお見通し?駆け引きも通用しないのぉ
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
どうやら、早耶の目には甘えさせてくれない、どこか厳しさのあるPと映っているようです。例えば、今回の追加コミュはそれが顕著でした。途中で泣きごとを言った早耶に、「立とうか」、「行こう」とのみ声をかけて、最後まできっちり走らせました(そのうえ、帰りも走ろうと実際に走り出すあたりはややスパルタかな?)。
かといって厳しいだけでもないようです。メモリアルコミュ2で(演技でしたが)早耶が転んだ時は、まず「大丈夫?」と心配しています。また、甘えさせてくれないかというと、そうでもないのです。
ツンツンじゃなくて、ナデナデにしてください~。ほら、きてきて!
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
ごほうびに、○○さんが抱きしめてくれたら…きゃんっ
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
(いちゃいちゃしている…!)レッスンなど、基本的には厳しく、真摯に向き合っているようです。それでいて、早耶がPのことを好きでいるのは、早耶のことをちゃんと見ているからでしょう。
「○○さんは本当の早耶を見てくれるから…」とは、デレステ・Rの台詞です。また、ぷちデレラではこれに続けて、「だから、ついてきましたぁ♪」とも語っています。「甘ったれ」には厳しく、それでいて「甘えんぼう」な早耶も時折受け入れるP。
最初に早耶の努力を認めた時のように、松原早耶という個人をしっかり見て、導いていることが伺えます。
まったくの余談ですが、ごほうびに抱きしめてほしいと言いながら、実際に抱きしめられると「きゃんっ」って言っちゃう早耶、非常に可愛いですよね?
3-2.手を引く存在
松原早耶をしっかりと見つめて、「甘ったれ」を許さないPは、早耶の能力面の向上に一役買っていることでしょう。しかし、それだけではなく、早耶の心理面でも大きな支えとなっています。
誤解されちゃったり、挫けそうになったりしたけど、○○さんと一緒だったから、今も笑ってられるんですよねぇ。ありがとっ♪
今度は、○○さんをウルウルさせるぅ~!だから、もぉ~っと一緒に来て♪ふふっ。なんだかんだ言っても、早耶の手を取ってくれること、知ってるんだぁ♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ 親愛度300)
……でも、今の早耶は、前よりちょびっと強くなれたから。
プロデューサーさんと一緒に頑張った分の強さが
あるから……大丈夫!
(特訓エピソード・[ロワイヤルハート]松原早耶)
前章の最後でも触れましたが、未だに誤解はついてまわるようです。それでも早耶が強い心をもって前に進めるのは、最初に「頑張ってる。君は可愛いよ」と言ってくれたPの存在があるからです。「早耶、がんばるっ☆でも、○○さんだけは、がんばってる早耶を知っていてね。ずっとずっと大好きでいてね。」(デレ・R+ 親愛度150)という台詞が背景にあるでしょう。
デレステのPは決して甘いわけではありませんが、松原早耶という個人をちゃんと見て、ここまで一緒に歩んできたことが伺えます。そして、この2人の関係は、メモリアルコミュ2によく表れているように思います。
うふふっ。でもね、プロデューサーさんが、
前を走ってくれてたから、ここまでついてこれたんだよぉ。
ズルしようとしても、カワイく甘えても、
プロデューサーさんは許してくれないし……。
でも、プロデューサーさんには、嫌われたくないし、
もっと好きになってもらいたいからぁ……。
早耶、これからも、
もっともぉっと頑張りますねぇ~!
(メモリアルコミュ2)
Pは早耶の少し前を走りながら、時に早耶の手を取りつつ、それでいて甘やかさずに早耶についてくるよう促してきたと読み替えることもできるでしょう。この読み替えをどうしても推してしまうのは、「どこまでもついていくんだからね~」という早耶の締めの台詞に理由があります。
お気づきの方も多いかと思いますが、モバマスでもデレステでも、早耶がPの元に押し掛けた際の台詞が「断られても勝手についていく」なのです。早耶の「ついていく」というイメージがここで鮮やかに用いられているのです。
押し掛ける形での所属は、早耶にとってPとの出会いがそれだけ特別だったこと、Pを信頼していることを表す重要なエピソードだと思っています。そのイメージを引きながら、前を走る道先案内人というイメージが、Pに付与されているように感じます。そして、早耶はPを信じて、懸命についていきながら、一歩一歩進んでいるのです。
ついてくって決めたの!この気持ちだけは揺るがないっ
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 ルーム)
前を走るPの存在が、早耶を少しずつ強くします。Pは松原早耶という女の子を引きあげているのです。
3-3.認めてくれた「特別」
早耶が"アイドルとして"一歩前へ前進する支えとなったのはファンだけではありませんでした。やはり、Pという存在は早耶のなかでとても大きいのです。
早耶がみんなのものになっても、○○さんが特別なのは、ずっと…ずっとですからねぇ♪
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ 親愛度200)
早耶を認めてくれる人が増えても、あの日、早耶に「頑張ってる。君は可愛いよ」と声をかけたのはPただ一人なのです。その重さを感じる台詞でもあり、また、早耶からの強い信頼を感じる素敵な台詞でもあります。
まだまだ未熟な部分はあるものの、前を走るPについていきながら、徐々に「アイドル」になっているのです。他でもない、一緒に走ってきた道のりが早耶を成長させていることでしょう。
可愛くなりたいって、誰よりも思ってるのは早耶だからぁ……。早耶がいちばん頑張らなくちゃ。今まで伝えた言葉、嘘にしたくないからぁ~。
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶 親愛度100)
この台詞は今回一番グッときました。2人での歩みを早耶が深く胸にしまい込み、そして、更に前へ進もうとしていることが感じられる、最高の言葉です。
「キャラも、心の強さも兼ね備えた最強のアイドル」(特訓エピソード・R)に少しずつ近づいているように感じます。
4.「ちょびっと強くなれた」早耶の一歩
さて、デレステのロワイヤルハートについて書いてきたことをこの章でまとめましょう。デレステ時空で早耶の物語はどう進んだのでしょうか。そして、冒頭に述べたバランスのよさとは、いったい何を意味したのでしょうか。
4-1.「甘えんぼう」も努力する
モバマスのロワイヤルハートは、どこか「甘ったれ」に映りました。しかし、その裏で早耶はたくさん考え、たくさん努力していたはずなのです。今回はこうした側面が、松原早耶という女の子の背景を汲みながら丁寧に描かれたと思います。
「甘ったれ」と「甘えんぼう」は違うとの言葉通り、時に泣きごとを漏らしても、途中で投げ出すようなことも、諦めることもありませんでした。可愛さは変わらず磨き、体力不足も改善しようとしていました。
Pに甘えようとすることはそれこそたくさんありましたし、実際に甘えていました。しかし、それはレッスンをサボるということではなく、早耶なりのアピールであったり、モチベーションアップの方法でした。自身を好きと言ってくれるファンのために、早耶も現状できるだけの努力をしたと言えるでしょう。
メモリアルコミュ1を読むと、その決意、思考法に強い女の子だと錯覚してしまいます。でも、彼女が自身で言うように、早耶は「甘えんぼう」な普通の女の子です。もっと言えば、アイドルとしてはまだ未熟でしょう(ぷちデレラを見ると、当初はダンスもボーカルもイマイチ、ヴィジュアルも可愛さ以外を上手く表現できません)。
その未熟さをしっかりと描写しつつも、「今まで伝えた言葉、嘘にしたくないからぁ~。」と努力する姿を十分に描いた今回のコミュ、台詞は本当にバランスがよく、素晴らしいものだったと思います。
"早耶なりの"努力が、"アイドルとしての"努力に徐々に昇華されていく様を見たように感じるのです。
4-2.大きな一歩、まだまだ一歩
以上述べたように、早耶は今回また一歩前に進んだと思います。メモリアルコミュ1や、Rで言っていたことをちゃんと実行に移したのです。少しずつ、強さを手に入れています。
女の勝負は好きじゃないけどぉ…アイドルの勝負なら負けなぁい
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ルーム)
衣装だけじゃ、可愛くはなれないもんねぇ。内面まで、可愛くだよぉ~
(デレ・[ロワイヤルハート]松原早耶+ ルーム)
以上の台詞もお気に入りです。早耶がアイドルに本気になっていること、「可愛い」に対して真摯に向き合っていることがよく分かる台詞です。"アイドルとして"着実に大きくなっています。
でも、松原早耶の物語はまだまだこれからです。
簡単な話、モバマスの松原早耶はもっと前を歩んでいます。早耶の物語が先へ先へ続ていることは既に分かっているのです。
体力不足の克服、可愛いだけじゃない早耶の魅力の発信などは、今後早耶が歩んでいく先にあるものでしょう。踏み出した一歩は大きいものの、一歩に過ぎないのです。
Pとの関係も、もっと深く変わっていくことでしょう。いずれは他のアイドルとの絡みがデレステ内で見られることも期待したいですね。特に、メモリアルコミュ1で周囲の女子と溝があった早耶です。これもとても重要なはずです。
未熟さと愛らしさを抱えて踏み出した早耶が、今後デレステ時空で更にどう成長していくのか、楽しみにしたいところです。
おわりに
新たな展開が本当に、本当に嬉しかったです。特に、シンデレラキャラバンの期間中は早耶に関するツイートが増えに増えて、愛されていることを感じられました。「よかったね、早耶」の一言です。
ロワイヤルハートというカードは、自身のなかでやや消化の難しいカードでした。「甘ったれ」な側面がやや強く、前後の頑張ろうとしている早耶とどう折り合いをつけるか、やや考えたカードでもありました。あくまでPに向けた「甘え」だと考えれば、ある程度腑に落ちるのですが……。
そのロワイヤルハートがデレステで登場し、早耶の言葉、気持ちが一層伝わるようになったのは本当に幸いでした。早耶が少しずつ"アイドルとして"前に進んでいる姿を強く実感できました。丁寧に描いてくださったデレステに感謝しきりです。
デレステの早耶Pは自身の早耶に向き合うスタンスとはやや違います。その早耶Pが今後、早耶とどう関係を深めていくのか、これも注目しています。
いずれにしても、今後また早耶がデレステ、そしてモバマスと登場してくれる日を楽しみにしています。今回をきっかけに早耶に興味を持ってくれる人が増えたことを願うばかりです。
これからも、少しずつ成長していく松原早耶を支えてあげてくださいね。