アイカツプラネット!5話までの感想――これは"私の"ストーリー
はじめに
1月に開始した『アイカツプラネット!』も気がづけば5話まできました(とか書いているうちに6話も放映されました)。昨夏からアイカツシリーズにどっぷりハマっていた私は「実写パートもあるのか…どうなんだろう…」と不安と期待半々で待っていましたが、既にどっぷり楽しんでいます。
実写パートがあろうが「アイカツだな…!」と感じさせる内容、可愛らしいアニメパート、楽曲もステージも今までのシリーズ同様とても好きです。また、アバターでアイカツをするという『アイカツプラネット!』独自の要素が今までのシリーズとの差別化を十分に果たしているだけでなく、とても面白い要素になっていると感じています。
さて、今回は1話から5話の感想、気になった点を書いていきます。
私は1話から4話が舞桜のアイカツの始まりを描く一連のエピソードと捉えています。言うなれば『アイカツ!』77話の「目指してるスター☆彡」に相当するエピソードを『アイカツプラネット!』の物語として丁寧に描いた、と受け取っています。そして、5話からが真実”舞桜のアイカツ”が描かれたな、と。
上記のような印象はどこからきているのか、また、今後の物語でどんなことが気になっているか、以下で整理してみます。
1.”聞かせて、これは誰のストーリー?”――「憧れ」の始点
「SHINING LINE*」で描かれる通り、アイカツシリーズにおいて受け渡されていく「憧れ」は非常に大きな意味を持っていると思います。「憧れ」は始点であり、先へと進んでいく原動力であり、次の「憧れ」に繋がります。
手渡されていく「憧れ」はアイカツシリーズで非常に印象的に描かれてきました。『アイカツ!』1話で星宮いちごが神崎美月のステージを初めて観た瞬間はもちろん、『アイカツオンパレード』25話では、憧れに出会った瞬間の「あの目」がとても大事に描かれました。
そして今作の冒頭、屋外スクリーンでハナのステージを見つめる舞桜はまさしく「あの目」をしていたでしょう(ハナを見つめる舞桜のシーンでSEが入るなど、確実に印象付けがおこなわれている)。
しかし、本作の特徴的かつ面白い点は憧れに出会ったことで「”ハナのように”なるためアイカツをする」ではなく、そのまま「”ハナとして”アイカツをする」という方向に物語が動くことです。これは今までのアイカツシリーズとは逆方向の展開と言えるでしょう。
「憧れ」に近づくために外形を寄せるという点で思い出すのはやはり大空あかりです。『アイカツ!』76話では星宮いちごそっくりの髪型、手にはしゃもじ、そして何より(いちごちゃん”みたいに”ではなく)「私、いちごちゃんになりたいんです!」という発言、と鮮烈な初登場をしました。
一方で、続く77話では「いちごちゃんになりたい」ではなく、私だけの光で輝くことこそが大事であると気がつくことになります。「これは私のストーリー」という台詞と共に「いちごちゃん」を真似していた髪を切るシーンがとても印象的です。
あるいは『アイカツスターズ!』の27話でも同様に「ひめ先輩のようなS4」ではなく、ゆめ自身のS4像を練り上げることの重要性が説かれました。
上記にあげたいずれのエピソードでも重視されているのは、誰かの真似をするのではなく、自分だけの輝き方を目指すことです。『アイカツ!』77話ではエピソード内で披露された通り「ちいさくたって自分だけの光、オリジナルスター目指してるスター」としての姿を肯定的に描いたのであり、『アイカツスターズ!』ではシーズン1終盤のOPであり、ゆめがS4戦で披露した「スタージェット!」の歌詞が同様のことを謳っているでしょう。
あかり「私は、いちごちゃんになりたいと思ってた。だけど、私は自分の光を大事にしなきゃ。――これは私のストーリー」
(『アイカツ!』77話「目指してるスター☆彡」)
もっと輝きたい きっと私らしくSTARS!
(中略)
なりたい私になれ! 冒険しようよ
右にならえのコーデじゃつまらない 物足りない
自由な心であれ 正解は私が決めるの
(「スタージェット!」)
対照的に、舞桜は外形がハナそのものであるだけでなく、(明咲がやっていた頃の)ハナらしく振る舞うことに意識が置かれています。
2.”なりたいビジョン自由自在に”――なりたい自分になる
舞桜がハナらしく振る舞うことを意識している一方で、周囲は「明咲のやっていたハナ」のように振る舞うことを決して強要していません。例えば、3話で紗良とドレスの打合せをするシーンにはそのギャップがよく見えます。
紗良「さてと、舞桜ちゃん、どんなドレスを作ろっか」
舞桜「えっと…。可愛くて、ハナが似合いそうなドレスがいいです!」
紗良「なるほど。例えば…こんな感じとか」
舞桜「うわ~、上手!」
栞「ハナのイメージにピッタリ」
紗良「でも、せっかくなんだから舞桜ちゃんの好みもいれた方がいいと思うな」
舞桜「私の好み?」
紗良「だって実際に着るのは舞桜ちゃんでしょ。自分が可愛いと思うドレスを着て気持ちを高めるのって大事なんだよ」
(『アイカツプラネット!』3話「ドレスに胸キュン」)
このシーンに顕著なように、舞桜にとっては「ハナらしく」振る舞うことが第一であり、「私らしく」振る舞うことはまるで意識されていません。そして、そんな舞桜に「アイカツプラネットのアイドルとして大切なことを響子から学んでもらう」(4話いずみ・紗良のやり取りより)と呼ばれたのが響子です。
4話では、クラスメイト達がハナの雰囲気が変わったと話すシーン、ビートの友人からイメージと違うとハナが指摘されるシーン、と「明咲のやっていたハナ」らしく出来ていないことが描写されました。落ち込むハナに対してビートが掛けた言葉が、舞桜にとってのスタート地点になったと思います。
ビート「私ね、ビートを始める前は正直ちょっともやもやしてたんだ。みんな、梅小路響子はこうだって勝手に思い込んで、決めつけてる気がして。その時、面白そうだったから興味本位でこっそりここに来てみたの。ここでは私がどんな人間か勝手に決めつけたりしないから、すっごく自由で、自分らしくできた。それからはなんか気持ちがスッキリして、もやもやしなくなったんだ。私だけじゃないと思う。もしかしたら子供かも。もしかしたら女の子かも。でしょ?」
ハナ「!」
ビート「ここは、誰でも自分の好きな自分になれて、自分らしくいられる場所!」
ハナ・栞「!」
ハナ「私、ハナのときも私らしくしていいのかな」
ビート「だって、今のハナはあなたでしょ!」
(『アイカツプラネット!』4話「やまとなでしこロック変化」)
ただ、ここでいう「私らしさ」は、『アイカツプラネット!』独自のニュアンスがあるように感じられます。ビートの台詞にあるように、また、ビートの在り方そのものがそうであるように、ここで重点を置かれているのは「誰でも自分の好きな自分になれて、自分らしくいられる場所」としてのアイカツプラネットであり、それを踏まえての在り方だと思うからです。
「自由で、自分らしく」振る舞うことには、現実の私が持つ「自分らしさ」に留まらず、現実の私から飛躍した「自分の好きな自分」として振る舞うことが強く含意されていると思います。
「明咲のやっていたハナ」に囚われず、”音羽舞桜として”アイカツをしていく――なりたい自分として進んでいく素地がここにできたのです。
3.”見つけた、これは私のストーリー”――「新しいハナ」の萌芽
5話は「音羽舞桜のハナ」として行う最初のアイカツでした。前回の振り返りで語られる通り、「私は私らしくハナをやる!」と決意しての第一歩です。その中でとりわけ印象的だったのがシンデレラのオーディションシーンです。
ルリ、アン、ビート、ハナ、そしてキューピットが同じくシンデレラを演じるシーンがまるまる描かれました。それでいて、全員が個性的で1つとして同じシンデレラはいないのです。この構図が「私らしくハナをやる」うえでとても示唆的だと思います。
「アイカツプラネット」の世界ではアバターで活動します。そして、そのアバター、振舞いは「なりたい自分」で良い、自由であることは4話で強く描かれました。しかし、現実世界の自身をネガティブに切り離しているかというと、そうではありません。
例えば、4話のビートがコーラを優雅に飲むシーンには響子がどうしようもなくにじみ出ています。その響子にとって、「キャラは全然違うけど、どっちも本当の自分」(5話・舞桜の前回の振り返りより)です。アバターと中の人は不可分です。
むしろ、ステージ用のドレスが元となるドレスとドレシアによって初めて成り立つように、「アイカツプラネット」におけるアイドルもアバターと中の人が合わさって初めて成り立ちます。そして、オーディションのシンデレラに見られたように、演じるもの――外形が同じだからこそ、むしろ個性は際立つのです。
振り返れば、「明咲のやっていたハナ」を演じようとしていた時ですら、ドレスを纏ったあとのポーズ、2話の撮影時でそれぞれバレエのポーズが出ています。そこには「つい踊っちゃいました」(5話・響子と外でエチュード中のやり取り)とバレエが咄嗟に出てしまう舞桜の「個性」がにじみ出ています。
ここに、いずみが1話で言っていたような「新しいハナ」の萌芽が見えると思います。そして、響子が言うように「舞桜ちゃんにしかできないシンデレラ」をオーディションで演じきったところに、「私らしくハナをやる」最初の一歩が見えたと思います。
まとめ
アバターでアイカツをやる、という点に新鮮さと面白さを当初から感じていた今作ですが、実際に物語を追っていくことで現時点でとても魅力的に機能しているように感じています。
憧れの対象として登場したハナ自身をアバターとして引き継ぎ、舞桜らしいハナとして成長していくという構図を鑑みると、ハナというアバター自身がバトン(あるいはリボン、手渡しの希望、アイドルの夢などと表現されてきたもの)であると捉えることもできそうです。
5話ではオーディションで物語を無視して踊り通したり、褒められて楽しそうにピースするなど、(おそらく)舞桜の自然な振る舞いが出てきて、また少し印象も変わったように思います(いちごやあいねに通じる天性の愛らしさを感じる…)。外形が同じだからこそ際立つ「私らしさ」が今後どんな物語を引き起こすのか、とても楽しみにしています。
おわりに
既に6話も放送された後ですが、1~5話の感想をいったんまとめてみました。「アイカツ!」しているな、と感じるだけでなく、アバターでのアイカツであることが非常に活きていて毎回とても楽しんでいます。
個人的に、舞桜のクラスメイトで推しトークをしている3人が現在非常に気に入っています。今までアイドル学校(ないしアイドル科)だったので、クラスメイトが主人公達の間近でファンとして語る場面がなかったので新鮮、というだけでなく、わちゃわちゃと楽しそうで見ていて幸せな気持ちになります。今後も頻繁に登場してほしい3人です。
まだまだこれから、シオリのアイカツスタートや、ハナの中の人交代を発表、明咲の再登場などなど楽しみは盛りだくさんなので、引き続き楽しく視聴していこうと思います、
※舞桜兄とハナ推しクラスメイトはハナが舞桜と知ってどうなるのだろうか…
アバターにも人格があって、中の人とお喋りしないかな~(妄言)