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アイカツプラネット!6話感想――Going My Way

はじめに

今更ではありますが、アイカツプラネット6話の感想を書こうと思います。※ちなみに前回1~5話について以下の記事を書いています。

今回からいよいよアンとキューピットが本格的に物語に絡んできました。現在のところ、星礼高校組とは違い「仲間」というよりは「ライバル」の立ち位置であり、今後の交流でどう関係が変わっていくのか楽しみにしています。

さて、今回のエピソードは今までのアイカツシリーズに登場するエピソードを想起させる構成になっていました。それが『アイカツ!』3話の「あなたをもっと知りたくて」、『アイカツスターズ!』11話の「密着!白鳥ひめの一日」です。

一方で、当然ながら『アイカツプラネット!』として独自の物語・結末に着地しています。今回はアイカツシリーズ内で類似のエピソードを手掛かりに、それら物語との差異から本エピソードが何を描いたか書いていきます。

1.これまでのアイカツシリーズとの共通点

今回のエピソードは以下の構成となっていました。

1.憧れの存在のお仕事に密着する
2.憧れの存在の完璧な振る舞いを目にする
3.憧れの存在は自身とは持って生まれたものが違う存在であると(安易に)結論付ける
4.憧れの存在の凄さがとてつもない努力に裏打ちされたものであることを知る
5.(反省したうえで)自身も努力することを誓う

既に「はじめに」で挙げた2つのエピソードはいずれも類似の構成を取っています。『アイカツ!』であれば、いちごは美月の1日マネージャーとして仕事についていき、その凄さを間近で体験して「"天才"だから」と納得します。しかし、仕事が終わった後、夜の美月パレスで厳しい表情でダンスレッスンをしている美月の姿を見て、その凄さの背景を知り、あおいと努力をいっそう積み重ねることを誓います。

「アイカツスターズ!」でも同様に、ひめの仕事に同行したゆめが、天才と眼差しを向けていたひめの凄さが努力に支えられていることに気がつく構成となっていました。

また「アイカツ!」で描かれた擦り切れた床とキューピットロードを細かい類似点として指摘できるでしょう。

「アイカツ!」3話では、美月がとてつもない努力を重ねていることを示す表現として、擦り切れ、剥げている床が描かれました。この描写は、道なき丘での度重なるランニングの末に「キューピットロード」を作り上げたキューピットの姿にも重なります。気が遠くなるほどの努力を継続して今がある、ということを示す表現としてどちらも機能していました。

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(『アイカツ!』3話「あなたをもっと知りたくて」)

では、アイカツプラネット6話は上記エピソードなぞっただけかというと、そうではないと思います。上記エピソードとの差異を指摘しつつ、「アイカツプラネット!」独自の――音羽舞桜の物語について整理します。

2.アイカツプラネット独自の展開

最大の違いは、このエピソードを経て憧れの存在との関係がどう変わるか、だと思います。今回のエピソードは舞桜/ハナが愛弓/キューピットをライバルと捉えるまでの物語でした。

クラスメイトとの会話、ステージ後の感想など、舞桜自身が愛弓/キューピットに対して憧れの感情を持つと同時に、自身では敵わない(そもそも同じ土俵に立てるとも思っていない)遠くの存在と位置付けていることが何度も語られました。しかし、いずみに次の通り諭されます。

いずみ「キューピットがトップを競うライバルだってことを忘れないで」
ハナ「キューピットちゃんとは持って生まれた才能が違いすぎるというか、私なんかがライバルなんてむしろ失礼ですよ」
(中略)
いずみ「ハナ、アイカツは楽しい?」
ハナ「はい」
いずみ「その気持ちは大事だよ。ハナが楽しくアイカツする姿を見て、ファンのみんなも笑顔になってくれるんだから。でもね、頑張って頑張ってライバルと熱く真剣勝負をするのもまた、アイカツなんだって、私はそう思うんだ」
ハナ「! はい!」
(『アイカツプラネット!』6話「パーフェクトの神様」)

舞桜/ハナはキューピットが見えないところで努力を重ねていることを知り、安直に「才能が違う」と言ったことを反省します。この気付きまでは『アイカツ!』や『アイカツスターズ!』のエピソードとも類似する構成です。

しかし、その上で憧れの存在との関係を「ライバル」と描き直す点は相違点でしょう。いちごが美月を、ゆめがひめを「ライバル」として認識し、超えようとするまでは更にエピソードを重ねる必要がありました。

そして何より、「追いかける"憧れの存在"」ではなく「競い合う"ライバル"」として舞桜/ハナと愛弓/キューピットの関係を描いたところに、舞桜/ハナの物語の主眼が見えるように感じています。

3.走っていく道

舞桜のアイカツの特殊性はトップアイドルのハナを引き継いでいることにあると思います。別の人――陽明咲が作り上げたハナを引き継いだうえで、「新しいハナ」を作り上げていくことが音羽舞桜が走っていく道です。
※「新しいハナ」という表現は2話でいずみの口から語られている

4話、そして5話は上記をより推し進めて「私らしさ」を表現することを肯定的に描きました。「"明咲のハナ"のように」ではなく「"舞桜のハナ"として」進んでいくことの重要性、あるいは楽しさが描かれました。

そして、本エピソードのラストで舞桜が駆けていく道にそれがよく表れているように思います。キューピットロードとの比較でこの点がより浮き彫りになります。

キューピットは、「明咲のハナ」をアイカツプラネットにおける目標としていました。「持って生まれた才能が違う」と言わしめた明咲/ハナに向かって諦めることなく走り続けたことが、道なき丘を、それこそ道が出来るほどに走り続けたことで表現していました。

そして、目標とする存在を追いかける描写として、これまでのシリーズ内でも度々描写された長く続く階段も描かれました。明確な目標に向かって努力を続け、ゼロから道を切り開いてきたのがキューピットです。

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(『アイカツ!』166話「私が見つけた最初の風」)

一方、舞桜は現実世界で走ります。先述の通り、舞桜のアイカツで焦点化されるのは「舞桜のハナ」として成長していくこと――「私らしさ」を表現することです。「新しいハナ」として成長出来るか、輝けるかは当然ながら舞桜自身にかかっているのです。

そして、舞桜が走っていく道は舗装された道です。「ハナ」は明咲によって既にトップアイドルという地位を得ています。既に踏み固められた道が目の前には用意されています。

しかし、その道は曲がり角以降が見えません。この道がどこに続くのか、舗装された安全な道か(もちろん舗装されたコンクリートの道路にもそれに伴う大変さはあるでしょう)、道なき道か、蛇行しているのか坂なのか――今後の舞桜の道はまだ見えないのです。

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まとめ

今回のエピソードは既存のアイカツシリーズで描かれたエピソードを想起させながら、「舞桜のハナ」として成長していくための道のりを描いたと思います。

キューピットを追いかけるという着地点ではなく、自身の道へと駆け出す落とし方は「なりたい自分になれる場所」を謳う「アイカツプラネット!」であることを強く感じさせられました。

舞桜がハナとして進んでいく道は、序盤こそ既に明咲が踏み固めた上にあるはずですが、これから徐々に「舞桜のハナ」として踏み分けていく必要が出てくるはずです。その道程を予見させるラストだったと思います。

おわりに

初見で「『アイカツ!』3話で観たやつだ…!」となりましたが、よくよく見ていくと「アイカツプラネット!」の、何より音羽舞桜の物語になっているエピソードだったと思います。やはり、アイカツらしさを感じると嬉しくなってしまいます。

キューピットにとっては(明咲の)ハナが、舞桜にとっては明咲がそれぞれ目指すべき、ないし、乗り越えるべき対象として表れていました。2人がどういう形で明咲/ハナと関係を結んでいるかで、努力する世界がアイカツプラネット/現実と分かれているようで面白かったです。
※アイカツプラネット世界で運動したり、食べたりすることは現実世界にどうフィードバックがあるんでしょう?

それにしても、天才と言われる人も陰で努力を積み重ねている、というエピソード内で「持って生まれた才能が違った天才」とまで語られる陽明咲、いったいどういう人物なんだ…。

さて、ここからシンプルな感想に寄りますが、6話に入って舞桜に星宮いちごっぽさを大いに感じています。とりわけ、栞との関係は初期のいちごとあおいを見ているようでした。アイカツ事情に詳しくない舞桜が栞に色々教えてもらう構図、うっかりした舞桜をカバーしたり慌てて止める栞の構図――どこか懐かしくなってしまいました。良い…。

また、今回初めて描かれた舞桜と杏の関係もとても良く。愛弓の呼称をめぐって杏から小さな敵意を向けられつつも、最後まで「可愛い~!」と柳に風で受け止める構図がとても好きでした。舞桜の天然、ポジティブに振り回される杏、見たいな…。

もちろん、今回も個人的にとても嬉しかったのが推しトーク3人組(舞桜のクラスメイトでアイドルの話をしている3人)の登場です。5話でハナとキューピットが『シンデレラ』に出演した映画が完成していたので「ハナ推しvsキューピット推しが見られるのでは…!」と楽しみにしていた通りの展開で最高でした。3人ずっと活き活き、わちゃわちゃしていてくれ…。

この記事を書いている3/13(土)の翌日はいよいよ10話――現在のハナの正体が舞桜であると公表する回です。7話~9話では、アイカツプラネットだからこそ表現できる「私らしさ」という物語をるり、響子、栞でそれぞれ描いていたと思います。

この流れを受けて、舞桜が音羽舞桜として「私らしく」アイカツをしていくことがどう受け止められるか、6話になぞらえるならば、舗装された道の先で舞桜/ハナが最初に踏み出す道がどんな道か非常に楽しみにしています。

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