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[フマジメ/ネコチャン]前川みくという1つの到達点、そして新たな一歩について

※ニコニコブログに2016年9月28日に投稿した記事を移行したものです

はじめに

先日、モバマスに[フマジメ/ネコチャン]前川みく(以下、フマジメネコチャン)が登場しました。憂いを含んだような特訓前の姿、悪い顔をした特訓後、と共に珍しい顔を覗かせていてとても魅力的です。

しかし、当然ながら魅力的なのはビジュアルだけではありません。今回のセリフやエピソードを追っていくと非常に感慨深い内容となっています。今までの前川みくの歩みがギュッと集約されているんです。そのうえで、新しい一歩を踏み出す、そんな内容になっているように思います。大きな転換点となるようなカードなのではないか、と思っています。

この記事では、フマジメネコチャンが前川みくにとってどういう意味を持つものであったか書いていこうと思います。以下、目次です。

1.第1の転換点、[マジメ/ネコチャン]前川みく

1-1.マジメとフマジメ
当然ではありますが、今回のカードと対比したくなるのが[マジメ/ネコチャン]前川みく(以下、マジメネコチャン)です。フマジメネコチャンにマジメネコチャンを意識したセリフがあるわけではありませんが、マジメネコチャンから始まった物語がここで一定の到達点に達したと思っています。

1-2.「それで前川みく論を語ろうだなんて100年早いにゃあ……。」
マジメネコチャンの思い出エピソード前編で、「Pチャンもみんなも、みくの真の姿を知らないんだから!」というセリフに続けてこんなことを言われます。そのうえで登場したのが「前川さん」の通称でお馴染み、真面目な学生姿のみくでした。

それ以前はネコチャンとしてのみくしか顔を見せていなかったわけです。このカードで素顔の(ないし、"猫を被っていない")みくに触れることになりました。

しかし、思い出エピソード後編では「……はっ、Pチャン、みくのマジメなところわかった?わかったでしょ!?なら帰って~!!」と言うなど、まだ素顔を見られることには困惑している様子もうかがえます。

1-3.転換点としてのマジメネコチャン
しかし、思い出エピソードでは「帰って」と言ったものの「○○チャンにはみくのコト、ちゃんとわかっててほしいもん」とのセリフも飛び出します。そして、このカード以降、徐々に素顔のみくが顔を覗かせるようになります。

"ネコチャンアイドル前川みく"という一面だけではなく、"前川みくという個人"に触れるきっかけとなったのがマジメネコチャンなのです。最初から強く信頼し、懐いてくれるみくではありますが、ここをきっかけとして更に絆が深まっていきます。

2.「素顔を見せる」というハードル

2-1.失敗から始まったアイドル
マジメネコチャンは「素顔を見せる」きっかけになったという意味で大きな転換点でした。そして、みくにとってこの「素顔を見せる」ことは非常に大きな意味を持つのです。これがなぜ「ハードル」と呼びうるか、この点に触れていきましょう。

前川みくは失敗から始まったアイドルだと思っています。ぷちエピソード1、デレステのメモリアルコミュ3で共に語られていますが、正統派アイドルとしてデビューしようとするも上手くいかなかった過去があります。そこで編み出したのが「ネコチャン」になることだったのです。

しかし、猫耳をつけてもなかなか人気が出ないままPとの出会いに繋がります。そして、これも特殊なのですが、みくはPに"見つけてもらった"わけではありません。押し掛けたうえで"拾ってもらった"のです。

モバマスは所属の経緯は不明瞭ですが、ライバルとしてライブバトルを行ったうえで、負けたみくが転がり込んできたことが伺えます。デレステは所属経緯が少し異なるものの明確な描写があります。こちらでもみくが押し掛けたことは同様です。そのうえで、プロデュースしてほしいとのみくの願いに対して、Pは「"しぶしぶ"認める」のです。

アイドルとして上手くいかないスタートがあり、当初はPも好意的に迎え入れたわけではありません。その点を鑑みれば、自身をして「魅力がないみく」(デレステ・メモリアルコミュ3)と称する、ネコチャンでないみくを見せるのには抵抗があるでしょう。

2-2.垣間見えるようになった素顔
マジメネコチャン以降のカードには、ムーンナイトキャット、アスタリスク、ハイカラサクラ、まちぶせキャット、そして今回のフマジメネコチャンが登場しています。この中で注目すべきはムーンナイトキャット、まちぶせキャットの特訓前です。

特訓後(仕事中)や人前では相変わらずネコチャンなみくですが、Pと1対1の場面で素顔を見せる機会が増えてきました。共に思い出エピソード後編では、ネコチャンじゃない前川みくを見せてくれています。例えば以下のセリフはそれがよく分かります。

そう、明日からは、いつものみくに戻るから……Pチャン、お願いしてイイ?
今日は、もうちょっとだけ一緒にいてほしい……
(ムーンナイトキャット 思い出エピソード後編)
やっぱりこういうときは『チョコあげるにゃん♪』みたいな……。あぁいや、猫チャンは、冗談だと思われちゃうかも……。
(中略)
あっ!えっと、これは、えっと……チョコ!そう、チョコなの。だから、えっと、チョコ、あげる……。
いつも、ありがと。
(まちぶせキャット 思い出エピソード後編)

マジメネコチャン以降、素顔の自分を見せても大丈夫だという信頼が徐々に育まれてきたと思うのです。

3.屋上の語りで到達したゴール

3-1.マジメネコチャンを踏まえて
前置きが長くなりましたが、フマジメネコチャンについて、とりわけ特訓前に注目しながら書いていきます。

マジメネコチャンを意識したセリフこそないように思いますが、学校にPを呼び寄せるというのは大きな変化です。先ほども触れましたが、マジメネコチャンの思い出エピソード後編では「帰って」と言っていたのですから。

「学校のみく」も臆せず見せてくれるところまできた。マジメネコチャンとの対比で、まずこの点が明らかになるのです。

3-2."夕暮れ"の語り
フマジメネコチャンの特訓前は夕暮れの屋上が舞台です。今回、夕暮れという時間帯にみくが語ることは非常に示唆的だな、と思います。

お昼はマジメなネコチャンも、月が出たらイタズラな顔で、夜のお散歩に出かけるのにゃ。その間の、ちょっぴり切ない黄昏みくにゃんを見られるのは…今だけだよ、○○チャン。見逃したら、めっ♪
(フマジメ/ネコチャン 特訓前)

みくのこのセリフにもある通り、昼/夜という区分がそれぞれマジメ/フマジメに対応しているかのようです。あるいは、デレステのSSRキャットパーティーのセリフを引くならば、夜はねこチャンの時間です。それと対極のマジメな素顔は学生のみくと捉えることも出来るでしょう。

いずれにせよ、昼/夜のどちらにも属さない「今だけ」の顔をみくがここで見せてくれているのです。そして、これはみくの語り口にも表れています。思い出エピソード後編の序盤は猫口調ではない素顔に近いみくですが、終盤にかけて徐々に猫口調のねこチャンみくに変わっていきます。

夕暮れに呼応するようなグラデーションが語り口に表れ、マジメ/フマジメという区分も、素顔のみく/ねこチャンのみくという区分も、何かもが溶け合っていきます。ただ、そこにいるのは"前川みくという個人"全部なのです。

こうした点を鑑みると、思い出エピソード後編のみくの声音も今までのどれとも違うように聞こえます。それでいて、やはり前川みくなのです。

3-3.「受け止めてねっ♪」(シンデレラガールズ劇場774話)

シンデレラガールズ劇場では、高い柵の上から思い切ってPのもとへ飛び込むみくが描かれました。「随分思い切りよく飛び降りた」とPに評されますが、ここにPとみくの信頼の物語が1つの到達点に達したことを感じるのです。

ここまで書いてきたように、みくには「素顔を見せる」というハードルがあり、それはマジメネコチャンを転換点として徐々に乗り越えられてきました。そして、フマジメネコチャンで"前川みくという個人"全部を臆することなくPのもとに見せることが出来たのだと思います。

「受け止めてねっ♪」のセリフと共に思い切りよく飛び降りたのは、Pが"受け止めてくれる"という信頼のもとでしょう。そして、この「受け止めてねっ♪」には、物理的なそれだけではなく、どんな自分でも受け止めてくれるよね、という今まで以上に強い信頼が含まれていると思うのです。

みくがどこにいても、○○チャンは見つけてくれるよね。だから、今までと違うみくの姿でも、見つけてくれるはずにゃ♪
(フマジメ/ネコチャン 特訓前 親愛度MAXセリフ)

どんな姿でも受け止めてくれる、という信頼にこのカードで見事到達したのです。そして、そのうえでみくの新たな一歩へと繋がります。

4.踏み出した一歩

4-1.「カワイイ女の子の頂点」へ
フマジメネコチャンは信頼関係がある到達点に達したことを示すとともに、新たな一歩を描いています。

みくはPチャンのおかげで、みんなに愛されるネコチャンアイドルになれたにゃ。でもそれ以外の、新しい魅力も必要なのかなって。
あ、ネコチャンアイドルを辞めるって話じゃないよっ!これは、Pチャンといっしょに叶えた夢だもん!絶対手放せないし。
でもほら、今までのみくのイメージって、キュートなネコチャンとかセクシーなネコチャンとかでしょ。これもいいけど、他にもないかな~、って。
トップアイドルになるためには、いろんなお仕事ができたほうがいいよね?みくだって、ちゃーんと考えてるんだもん!
(フマジメ/ネコチャン 思い出エピソード前編)

思い出エピソード前編から、ネコチャンアイドルとしてある程度成功していることが伺えます。「Pチャンといっしょに叶えた夢」というセリフには思わずグッときてしまいますね……。

そのうえで、更に高みを目指すべく「キュート」、「セクシー」以外の一面を探そうとしているのです。これは、みくがアイドルになった背景を考えると非常に大きな一歩ではないかと思います。

シンデレラドリーム特訓前、デレステRなどでみくがアイドルを目指した理由が語られています。みくは可愛い女の子に憧れていました。そして「カワイイ女の子の頂点」がアイドルと考えてアイドルを目指したのです。

そのみくが、「キュート」、「セクシー」以外の武器を探そうとしているというのはやはり新たな一歩なんだな、と感じます。それだけ「トップアイドル」に強いこだわりを持っていることが感じられて担当Pとしてもグッとくるポイントではないかと思います。

4-2.Pチャンと一緒に
「トップアイドル」という夢は、「カワイイ女の子の頂点」を目指すという目標の延長に設定されるものとも言えますが、それだけではありません。「トップアイドル」はPとみく、2人で叶える夢です。

にゃはっ♪こうして形にしなくても、みくのプロデューサーはPチャンだけにゃあ。一緒にトップを目指すんだもん♪
(3周年 ガラスの靴プレゼントキャンペーン)

その「トップアイドル」に向けて、Pを信頼して、"いっしょに"新しい魅力を探そうと促すのです。一貫してPを強く信頼してきたみくの姿勢が見て取れます。

とゆーわけで……新しいみくの魅力、Pチャンも一緒に探してよね!だって、みくはPチャンのアイドルなんだからっ♪
(フマジメ/ネコチャン 思い出エピソード前編)

新しい魅力を一緒に探してほしい、という提案にも実は今までの足取りが感じられます。

にゃああ…これぞ大正ロマン!みくと和風のキュートなコラボで、きっと新規のファンをた~くさんゲットにゃ♪Pチャン、素敵な衣装ありがと~☆みくの可能性、もっと広げるにゃあ~!
(ハイカラサクラ 特訓後)

同じくハイカラサクラの特訓後には「Pチャンは、みくの新たな魅力を引き出してくれるモン!」というセリフがあり、こうした今までの歩みも踏まえているのではないかな、などと感じ入ってしまいます。

「ねこチャンはすぐ忘れるっていうけど、みくは、Pチャンとの思い出、ひとつも忘れないよ?」(第5回シンデレラガール選抜総選挙)というセリフもあるみくです。今まで積み上げた思い出を踏まえて、更に一歩先へ、一緒に歩き出そうとしているようにどうしても感じられますね。

どんな自分でも受け止めてくれるという信頼のもと、みくは新しい魅力を探そうと歩き始めたのです。

5.まとめ

マジメ/ネコチャン以降、徐々に素顔を見せてくれるようになっていたみく。フマジメネコチャンは、みくが全部を信頼して委ねてくれるところまできた、と示すカードだったと思います。その点で、1つの到達点となったと言えるでしょう。

しかし、劇的に関係が変わったのではありません。積み重ねてきた歩みの上に、自然と今回のカードがあるように感じられます。

「気まぐれなみくでも、○○チャンになら捕まっちゃう」という特訓前のセリフには、今までと変わらないみくも十分に感じられます。「気まぐれなみくでも」というセリフまわしは、例えば最初のRカード特訓前にも登場しているものなのです。

そして、どんなみくでも受け止めてくれるという確かな信頼のもと、みくはPと一緒に新たな魅力を探すことを決意するのです。「今のみくは悪役だってできるにゃ!○○チャン、褒めて♪」という特訓後のセリフは印象的です。Pと一緒に積み重ねてきた歩み、そして深めてきた信頼があって、「"今の"みくは」と言えるのでしょう。

トップアイドルを目指して、前川みくの物語は新たな局面に入ったのではないかな、と強く感じずにはいられません。

おわりに

フマジメネコチャンの思い出エピソード前編を読んだ瞬間、「あ、そうか、ここまできたんだね……」という気持ちになり、その想いのままつらつら書いてみました。みくは本当にPを信頼してくれる子なので、このカードのセリフ1つ1つがとても感慨深いです。

今回、より信頼関係が強固になりました。「受け止めてねっ♪」という劇場のセリフにあるよう、安心して自分をゆだねられる相手と信頼されているわけです。これから新たな物語を築こうとしているみくに、ぜひ寄り添ってあげてほしいな、と思います。

みんな、前川みくをよろしく。

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