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ニューメキシコ州

ニューメキシコ州

ニューメキシコ州に、通訳の仕事で出張した。幾つかの州を巡る仕事で、一ヶ所での仕事が終わった。

電車で移動中、たまたま米国人女性作家である、ウイラーキャザーの小説「大司教の死」を読んでいた。 

ウイラーキャザーの作品は、「 おー 開拓民よ!」また、「私のアントニオ」などがある。米国では有名な女流作家だ。  

ヨーロッパ移民が、東海岸から、西へ西へと移住してゆく時代を、小説の材料にしている。

通訳業務のため、移動中の2000年代と、小説で描かれている開拓民時代では、200年以上の時の流れの落差がある。 

とはいえ、偶然にせよ、小説の主人公と同じ方向への旅である事で、わたしは勝手に興奮していたのだ。  

ローマ教会司教が、ニューメキシコ地区で、教義を広めるため、ニューメキシコへ向かう話を、夢中になって読み進めながら、汽車の窓から草原をみた。

ニューメキシコは、どの米国の州とも違う雰囲気が漂っている。 

まずは建物だ。 砂、粘土、小さく刻んだワラなど、天然の素材で作られた住宅は、アドビ建築と言われる。  

天然素材が粘土なので、レンガ型に作り、それを組み立てて作る。  

家の壁がとても分厚く、外の直射日光を遮断すると同時に、外より室内はずうっと涼しい。

踏み締めて歩く道路の色も薄茶色、家も同色で、家の形も、四角い。 要するに、屋根が平らなのだ。

なんとも不思議な気持ちで、独特の雰囲気を醸し出している、町の日陰を歩き回った。

翌日の仕事は、アート コロニーでの仕事だった。 

多様なアーティストが、 数人づつ、スタジオ(作業場)を共有し、それぞれの芸術製作に携わっている。 

そのようなスタジオが、沢山集結している場所を、アート コロニーと呼んでいる。

ニュー メキシコ州で、最大の都市アルバーカーキ(Albuquerque) の、郊外の丘の中腹に、そのアートコロニーがあった。 

夏に訪れたので、気温は高かったが、 不思議と、丘の中腹のためか、 窓が開け放されている部屋の中も、風が吹き抜けて、割と涼しかった。

芸術振興事業団から、 奨学金が下りていると言う。 

その奨学金は、優秀な先の見込みが大きな、若手芸術家に授与される。 

分野が違っても、一堂に会する事で、お互いの制作意欲を刺激するのが目的なのだろう。  

何人かのアーティストに、日本の研修団員が質問した。  

それ以上に、若手米国人芸術家が、矢継ぎ早に日本について、 日本の浮世絵、焼き物などに関する質問を、沢山浴びせたのには驚いた。

私は仕事が終了後、急いで空港に向かった。 

日本のお客様は、 翌日の早朝ロスに飛び、そこから日本へ直行便で帰国される。

本来なら、全行程御一緒して、ロスでお見送りをするが、 その時は、次の仕事がウエストバージニア州で入っていた。  

忙しい時期だと、自宅に帰る余裕もないまま、渡り鳥の擬く、次から次にへ飛ぶ場合もあった。

ニューメキシコ州から ウエストバージニア州は、偶々、 我が家へ帰る方角にあり、有効的に仕事ができた事例だ。


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