ちゃんとした婚約指輪
立爪ひと粒ダイヤの指輪、台座はプラチナ。
これがちゃんとした婚約指輪のイメージ。
私の指には似合わないだろうなと思っていた。
シルバーが絶望的に似合わないからだ。
そんな私には欲しい指輪があった。
ダイヤが連なったゴールドのエタニティリング。
光の糸みたいな指輪を結婚指輪と重ね着けするのに憧れていた。
シルバーに認められたい私とゴールドをつけたい私。
意を決してそんな指輪が欲しいと彼に伝えてみた。
普通の指輪じゃない指輪を買う事に、彼は少し難しい顔をした。
彼は彼なりの婚約指輪へのイメージや憧れを抱いていたのかもしれない。
最後までちゃんと話を聞いてくれた後で、「じゃあそんな指輪を買いに行こう」と言ってくれた。
何故かこの時になってプロポーズされた実感がばさばさと降って来た。
この人は私を良しとしてくれてるんだと思った。
話し合いにも満たない小さな会話に何故かすごく感動した。
もちろんこうやって全てにイエスと言ってくれる訳では無いのはわかっている。
でもこの人は絶対ちゃんと話し合える人だと直感で思ったのだ。
結婚するなら話し合える人が良いとこんな所で気が付いた。
結婚してしばらくして子が産まれ、大きな変化の連続を共に乗り越える中で、相手の合わない部分や気に入らない部分をポロポロと見つけてしまう。
本気で殴ってやろうかと思うくらいに腹が立った時、いつも私は指輪を見る。
ちゃんと相手の意見を聞こう。もう一度相手の気持ちを考えよう。
当たり前の事を当たり前に気遣うのだ。
ちゃんとした指輪が似合わない私を、良いと言ってくれた夫と今日もちゃんと生きて行こう。