服の設計士hagyの「服の見どころ・腕の見せどころ」vol.27~ZOZOでオーダーしたスーツ~
今年も花粉が舞う季節になりましたね
花粉より桜の花が早く舞ってほしい今日この頃
みなさまいかがお過ごしでしょうか
はじめてご覧の方、このnoteは型紙設計士つまりパタンナーである自分の「服に対する視点」を紹介しています
これを読んでいただき、服の選び方が少しでも変われば幸いかと存じます
前回のnoteはみなさまの拡散のお陰でたくさんの方に読んで頂けました!
ありがとうございました!
さて今回は話題に事欠かないZOZOです
はるか昔(笑)にZOZOスーツで計測してオーダーしたスーツが年末に届いてまして、ついにその封印を解きました
じゃん✨
でZOZOのスーツって実際どうなの?
結論から言いますと
「テーラーでオーダーしたものを期待するとダメだけど、ふつうに店頭で並んでいるスーツとしてならいいんじゃない?」
って感じですかね
テーラーで採寸して仮縫いをして作ったスーツのフィット感には及ばない(そりゃそうだし、ZOZOさんもそこまで言ってないし)けど、店頭で売っているスーツの自分サイズ版と考えれば、まぁありなんじゃないかと思います
ただし
ZOZOスーツで正確に採寸できてない!( ;∀;)
ZOZOの主な問題はこれに尽きると思いますね
根本が間違っているからパターンが良かろうが縫製が良かろうが出来上がる商品は言わずもがな…
「百聞は一見にしかず」なので着用した画像を見ていきましょう
前から
ん〜〜〜袖が短い!!w
しかしそれ以外はまずまずじゃないですかね〜
次は横から
うん、袖の長さ以外はまずまず
最後に後ろから
ちょっと脇と腰あたりのシワが気になりますが、背中とかはいい感じかなと
(それにしても自分の体が歪んでるなw)
と、まぁこんな感じで、袖の長ささえ合っていればふつうに使えるな〜って感じでした
〈終〉
で、終わっても仕方がないのでw
ZOZOのジャケットの最大の特徴である、前身頃(ダーツあり)+後身頃の2面体で構成されたパターンについてお話しようかと思います
これがZOZOのジャケットです
矢印の部分はダーツです
比較するために一般的なジャケット(3面体で構成)を
画像では分かりづらいかもしれないのでパターンにすると
これがZOZO
これが一般的なもの
違いは明らかですね
上の2面体と3面体の技術的な違いをあげると
①2面体より3面体の方が立体的に作れます(感覚的にわかるかと思います)
②くびれがある人だと、ウエストを細くするためにダーツの幅が大きくなり、ダーツ先がめちゃ尖ってしまいます
③バストよりウエスト・裾が大きい人の場合、ダーツは摘んで細くすることしかできないので太くできません
また、ウエスト・裾を大きくするには後ろの切り替えで幅を出すしかなく、その一部分だけ大きくなってバランスがおかしくなります
詳しく説明していきます
まず①について
一般的にジャケットは前・横・後の3面体で構成します
前から見た形、横から見た形、後ろから見た形をそれぞれのパターンを使って表現します(完璧にパターン通りの見た目にはなりませんが)
ZOZOのパターンだとウエストから上はダーツのところで折れて3面体のようになりますが、ウエストから下は前と横がつながっているので立体的な表現ができません
実際のジャケットを見てみると
ウエストから下、ダーツの幅が先細りになる部分からまっすぐストンと落ちるシルエットになっています
これに対して3面体の方は
緩やかなカーブでウエストのところで細くなり裾にかけて広がっています
ZOZOのパターンでは前と横がつながっているので裾にかけての広がりは出ません
このようにパターンの違いでシルエットの違いが出ます(もちろん2つのジャケットは寸法が違うので厳密な比較にはなりませんがシルエットの傾向はこうなります)
しかし、ZOZOがそういうシルエットを目指していないなら、縫製・裁断の手間が減って効率的なので、このパターンでいいかなと思います
次に②はウエストを細くするためにダーツの幅を大きくすると…ってことなんですけど
ここのダーツの幅を
左から右に変わるとどうなるかというと
丸印がダーツ先なんですけど、ダーツ幅を大きくするとすごく尖ります
左のように少しくらいの尖りならアイロンでなじませることが出来ますが、こんなに尖ってしまっては無理です
しかし男性でくびれがある人(バストとウエストの差が大きい人)ってそうそういないので、ZOZOのパターンでも大丈夫だとは思います
この点においても、効率的に作れる利点を優先しているのかなと思います
最後に③
ダーツでは細くすることしかできない、というのはお分かりいただけるかと思います。太くしようとしてもダーツをなくすのがMAXです
ウエストと裾まわりを大きくするには青丸印のところをひたすら大きくするしかありません
試しに大きくすると
こんな感じ(一応、背中心でも若干大きくできます)
これで製品を作ると大きくした部分だけが体から離れて、バランスの悪い仕上がりになってしまいます
実際、ZOZOはバストよりウエストが大きい人のジャケットはどうやってパターンを作るんでしょうね…
なんだかんだで長くなったんですけどお分かりいただけたでしょうか?
ざっくりまとめると
「ZOZOスーツの採寸がおかしかったので袖が短い!」
「2面体のパターンは作業効率を考えるとアリだけど、デメリットもあるよ」
ってことです
あとジャケットの袖とパンツについて少し書きたいことがあるのですが、長くなったので二回に分けて近々書きます!
それでは最後までご覧いただきありがとうございました
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