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【LIVE(in the)BRAIN】ぐるぐる刺激、かくしてNinth

こちらは、UNISON SQUARE GARDENの妄想セットリストを考える文章企画「LIVE(in the)BRAIN」の記事になります。

↑企画の概要はこちらから


そのため、この記事に書かれていることは全て妄想であり、実際には存在しません。ご留意ください。


さて、企画最終日、参加者で持ち寄ったお題をランダムに振り分けた結果、私が書くことになったテーマは……。

USG2023 ”LIVE (in the) HOUSE 3”


LIVE(in the)HOUSEをもじった名前をしたこの企画のトリがこれというのは、なんともお誂え向きである。……いやマジでランダムに振り分けたんです、信じてください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

そんな今回のお題だが、実は提供者様から、より詳しい指定があった。
以下は、提供者様に頂いた画像である。


さあ、この制限の中でどう曲を組むか?
それを考えるために注目したのは、「時期はちょうど今くらいの2023年2~3月」というところ。
もしこの時期に配信ライブをするとしたら、それはどんな意図か。

おそらく、ニューアルバムの宣伝だろう。
9枚目のアルバム「Ninth Peel」の発売が決定し、それを買ってもらうため、配信ライブを通して発売までの期待感を高める目的。

ということで、多分こういう施策があった。

・ネットショップでアルバムを予約するとシリアルコードが貰え、これを用いることで配信ライブのチケットをちょっとだけ安く購入することが出来る
・特典付版のチケットを買うと「LIVE(in the)HOUSE 3」及び「Ninth Peel」についての特別インタビューが読める
・グッズはTシャツから食べ物までいろいろあり、その一部は9thアルバム収録曲にちなんでいる(「痺れるジンジャーエール」とか「耳から出てきそうなスパゲッティ」とか「ひじに装着してお茶を沸かせる急須」とか)

加えて、自分で「既に音源が公開済みの9枚目収録曲4つは必ず演奏する」という縛りを追加した。ちなみに、「もう君に会えない」はDRIP TOKYOや公式チャンネルの生配信で演奏しているので、今回はやらない。

あと、大事な条件がもうひとつ。それは、「この公演が『配信ライブ』であるということを存分に生かすライブにすること」。
私は、あらゆる創作物において、「その媒体で作る意味」「その媒体だからこそ出来る表現」を追求しているものを好きになりがちである。漫画だからこそコマ割りのアイデアで魅せられるし、アニメだからこそカラフルで流動性のある演出が出来るし、小説だからこそ心情を長い言葉で表現できる。媒体そのものが持つ特徴を生かしている作品を見ると、嬉しい。漫画をアニメ化したときに、アニメ用に表現をアレンジ(かつ味は変えずに)していると、嬉しい。
そんなわけで、配信ライブというものにも、配信でしか出来ないことをやっていて欲しいという勝手な希望を抱いている。
そして、この私のめんどくさい嗜好性に、2020年、なんとユニゾンは応えた。「LIVE(in the)HOUSE 2」の初手、「マスターボリューム」のMV再現などが顕著だが、彼らは「配信だから出来ること」を取り入れたのだ。一生ついていくからなマジで。

なので、今回も例に漏れず、配信ならではの表現をしてくるものとして妄想することにする。


では、これらの背景を踏まえ、2023年3月15日に行われた配信ライブ「LIVE(in the)HOUSE 3」を、レポ形式で紹介していこう。

食べ物を用意して、いざ開演!



そのライブハウスは、かなり小さめの箱に見えた。一瞬だけ映った無人の客席の広さから考えて、キャパは200人前後といったところか。
さて、いつものように絵の具が流れ……と言いたいところだが、今回はどうやら違う。十数秒間にわたり、真っ暗なステージが画面を支配する。右側には、座っている人影がひとつ、薄っすらと見えた。

すると、突如としてスポットライトが点く。ただ一点、その人影を照らして。そこには、アコースティックギターを構え、瞼を閉じて俯いた斎藤宏介の姿。依然真っ暗な画面中央~左側を見てみても他に人影はなく、孤独感を強調するかのように、光はひたすら彼だけを差し続ける。
カメラが切り替わり、斎藤の顔がアップに。ギターに沿えていた手をゆっくりマイクへ移動させ、目を瞑ったまま──大きく息を吸って、その独唱は始まった。




『さよなら街明かり、ずっと愛してたよ』






『呟いた瞬間遠ざかった奇跡』






『僕の意地と誇りなんてそんなもんだよ』






『間違いだらけでもしょうがないや』



そこから数秒の間を置いて、ギターの和音と共に歌い出した。「夢が覚めたら(at that river)」である。
照明も色めき、青と黄色のコントラストが揺れる。その光景は、この曲が初披露されたライブイベント「fun time HOLIDAY 8」の際のそれを彷彿とさせるが、決定的に違うのは、斎藤が座っていること、アコースティックであること、そして、あと二人がいないことである。

1番、2番に渡り、流れるように奏でられるコードストロークが、柔らかく、それでいて煌びやかな印象を残す。

が、転機は落ちサビ。ギターが再び鳴き止み、『さよなら街明かり、ずっと愛してるよ』『河の流れによく似たラララ』は、再び独唱となる。切ない声色が、会場内で残響した。

その後、また訪れる無音。すると、斎藤はアコギを、自身の横にあるスタンドに置いた。そして立ち上がると、ステージの袖から、見慣れたギターを持って来る。ATELIER Zの、あの白いエレキ。

マイクの位置を高くし、立った状態で、ようやく続きを歌う。

ララ、ララ、ララ、ラララ──。

激情的な歌声とギターでラスサビに突入すると、不思議なことが起こった。


ベースとドラムの音が聞こえるのだ。


画面は依然としてステージを端から端まで映し、そこに二人の姿はない。あるのは、スタンドに立てかけられたベースと、置かれているだけのドラムセット。人間は、斎藤だけだ。にもかかわらず、どこからか、その音は鳴り響いている。
『Flashback of that river』と繰り返す斎藤の声に、優しくも力強いコーラスが乗る。
音だけを聴けば、それは確実に、「いつもの」ライブだった。なのに、見える景色との齟齬が、違和感を増大させる。何が起きているか分からないが、とにかく変で、とにかく綺麗だったのだ。


楽曲が終わると、映像はゆっくりと場面転換した。

映ったのは、三台のアナログテレビ。ピラミッド状に、下に二つ、その上に一つだ。
右下のテレビには、斎藤が。左下のテレビには、田淵が。上のテレビには、鈴木が。
ついさっき聞こえてきたリズム隊の音色は、どうやらこの連なるテレビから鳴っていたらしい──そんなストーリー性を感じさせる。

瞬間、テレビ内画面は砂嵐へと切り替わる。テレビを映していたカメラは、そのまま目線を上に向けた。そこに広がったのは、先ほど「夢が覚めたら(at that river)」を演奏したところとは全く違う、ホール会場のステージ。

三人が待機している。

すぐさまドラムのカウントが響き、混沌を極めた激しいイントロが掻き鳴らされた。


「カオスが極まる」


「いつもの」が始まった。


荒々しくも精確な演奏。ステージを縦横無尽に踊り狂う田淵。腕に残像が見えるほど爆速で叩いていく鈴木。斎藤の「ぶちかましてくれ」で突入する治安の悪いサビ。間違いない、これはユニゾンのライブである。

ライブ円盤を思わせる、主張し過ぎずかつセンスのあるカメラワークが三人を捉える。
アウトロの打ち込みトラックゾーンでは、再び砂嵐のテレビを映す。今思えば、これはこの曲のMVのセルフオマージュだったのだろう。

こうして『極まってしまった』後、「ようこそ!」の挨拶と共にドラムのハイハットが響く。照明は黄色。ギターが乗り、ベースが乗って、一転、軽快な音色が耳を包んだ。「スロウカーヴは打てない(that made me crazy)」は、もはやライブの定番曲らしい。

相変わらず、途中で挟まる7拍子は最高のアクセントだ。また、サビの『腕は上がんなくちゃなわけがない 踊らない?踊れない』の一節も、家の中で見るライブだからこその文脈を与えられていたように思う。
それに何より、この曲のポイントである「ライブによってギターソロが変わる」という特徴もありありと見せつけられた。曲自体は何回もライブなり円盤なりで出会ったことがあるのに、このソロには聞き覚えが無さすぎる。楽曲が常に鮮度を失わないためには、なるほどこういう方法もあるのか。
なお序盤にもかかわらず、斎藤にちょっかいをかけに行く田淵は健在。

『レイテンシーを埋めています』からノータイムで始まる鋭いイントロは、ポップアルバム『CIDER ROAD』のロックナンバー「セレナーデが止まらない」
個人的に、この曲は音源のサビのリードギターが大好きなので、ライブだとそれがないのがほんの少し寂しいのだが、そんなのは些末な問題で、カッコいいことには変わりがない。
サイダロリバイバルに行けなかった私にとって、この曲とは「LIVE(on the)SEAT」以来の出会いだった。

アウトロ最後の一音が鳴ると同時に、画面には大きく「LIVE(in the)HOUSE 3」と書かれた画像が表示された。計算され尽くした波乱の幕開けに、思わず拳が上がった。


再びステージが映り、斎藤カメラに切り替わると、本日初のMC。
「せっかく9枚目のアルバムが出るので、それに乗っかって面白いことが出来ないかなと思って、久しぶりに配信ライブをやってみることにしました。自由に楽しんでってください、よろしく!」

そう挨拶して演奏されたのは「MR.アンディ」。曲の分数としては長い部類でありながら、一瞬たりとも冗長に感じることはない。むしろ時間が早く過ぎていくし、不思議と懐かしい気持ちにもさせてくれる。
また、鈴木のドラムの手数が音源と段違いな点も面白い。なのに曲が一切崩れておらず、むしろパワーアップしていた。

インディーズの頃から存在したその曲が終わると、すぐさま「ナノサイズスカイウォーク」が始まった。こちらは逆に、かなり最近の曲である。
カレイドツアーを想起させる水色の照明が爽快感を増大させ、なんだか頭がすっきりしたような感じになる。いい意味で肩の力の抜けた、それでいて澄み渡るような音。カップリングの中でも、私はこの曲がかなり好きだ。

アウトロの余韻残響を残したまま、楽曲はジェットコースターのように切り替わる。ジェットコースターというのは、「ポップな曲調からロックな曲調へ」という比喩でもあり、「最新の曲から再び昔の曲へ」という比喩でもある。その色褪せないサウンドは、何を隠そう、「カラクリカルカレ」である。
この残響カラクリ入りは、パトベジツアーでの「フライデイノベルス」からのそれと同じような感じ。意外とこういう繋ぎで光る曲なのだ。ライブの度に、楽曲たちの新しい側面がどんどん見つかっていく。

次もやはり曲間0秒でスタート。私がライブで聴くのは実は初めて、「プロトラクト・カウントダウン」。『チクタクチクタクチク』と『チク』のほうで終わらせる歌詞にセンスを感じる。
音源も最近聴いていなかったし、けっこう久しぶりな気分だ。これを機に、改めて今度3rdアルバムを通して聴くのもありかもしれない。

ところで、『走るよ、君の涙が止まるまで』と歌い上げたその後に、『リプレイ、まだ平気かい?止まれはしないんだよ』と口にするのは、あまりにもずるいじゃないか!

「リニアブルーを聴きながら」は、始まった瞬間、このブロックはこれで最後なのだなと肌で分かった。「MR.アンディ」から連なる5曲の結実、そこにこの曲がいる。
ユニゾンの王道ど真ん中の、爽やかでカッコいい、駆け抜けるようなバンドサウンド。ジェットコースターのようなこのブロックを占めるには、なんとも相応しすぎる選曲である。

「今日を行け、何度でも、メロディ」と踏みしめるように歌い、そして、最高のアウトロが終わる。曲名通り青く光る照明も暗転し、ひとつ区切りがついた。


30秒程度の水飲み休憩が終わると、一言MC。

「新曲やります」

落ち着いた雰囲気のジャジーなイントロが鼓膜を包む。
9thアルバム収録の新曲「Numbness like a ginger」である。

アルバム発売宣伝記念配信で鈴木が「同期無しにしよう」と宣言していた通り、特徴的なピアノの音が聞こえて来ない。が、これはこれでいい。ところどころ、本来ピアノが奏でているフレーズをギターやベースがカバーしている箇所があり、こういうのがライブの魅力だよなあとしみじみ。
田淵もこの曲ではあまり動かず、真心を込めるかのようにベースラインとコーラスを置いていく。

アウトロが終わると、ドラムのキックとウォーキングベースだけが途切れずに数小節鳴り続ける。そこに後からギターが乗っかるという、音源とは大きく異なる形の入りで始まったのは、「終着点はここじゃない」という言葉を丁寧に掬い取るような、優しくて強い楽曲。


『僕の言葉が死んだ時 アスファルトは気がつきやしないだろう』


「Simple Simple Anecdote」が、今日はいつにも増して心に響く。
こちらの背中を押す、というよりは、「このくらいでいいんじゃない?」と遠くからあっけらかんと言っちゃうような温度感が心地いい。
『今日はなんとかなるぜモードでいいや』『僕の言葉がまた生まれる』、その言葉を通して、喉の乾いた感情が、再起する。
乾いたなら、水で潤そう。

曲が終わり、次の曲が始まる。4カウントに続く爽やかなコード進行と共に、照明が水色に変わった。
ナノサイズやリニアブルーのときの水色とはまた違う、まるで液体のように揺れる光。水の中だと錯覚するほど、ゆらゆらと。
「Silent Libre Mirage」。スタイリッシュで凛とした曲調の中に、「何様ってやつだ」「さっさと構えろ」と荒めの言葉遣いの歌詞を入れ込んでくるバランス感が魅力。

終着点はここじゃなく、信号は変わるし星は生まれるから、張り切って跳べ──このブロックには、そんな再生の文脈が込められているように感じた。

最後のコードの余韻を残したまま、鈴木を中心に捉えたカメラにスイッチされると、ノンストップでドラムソロに突入する。

相変わらず意味が分からない腕捌きである。どうしようもなく楽しそうな表情で、それでいて際限なく正確に、そこに在るべき音を叩いていく。
中でも今回特に目立っていたのは、スティックを回す回数がとにかく多いこと。普段のドラムソロでもほぼ必ずと言っていいくらい回しているが、その比ではないくらい回していたように思う。

華麗なるリズムビートが一段落つくと、何やら不穏なサウンドのセッションが展開された。
どこか苦しそうで、必死にもがいて、そうやって前に進んでいる。そんな音。
セッション特有の、段々聴き馴染みのあるフレーズが混ざってきて楽曲に察しがついていくあの感覚がする。
ここで合点がいくのだ。何故先ほどのドラムソロで、鈴木がスティックを回しに回していたのか。

気がつけば、ステージの中心に何かが設定されている。
360度カメラだ。

イントロが始まると、画面はそのカメラからの映像を映し出した。
カメラはぐるぐると反時計回りに回転し、鈴木→田淵→客席→斎藤→鈴木→……といった具合に、立体的に湾曲した画角でステージを何周も見回す。
やもすると酔ってしまいそうな、主観的な視点での映像。
まるで、遊園地のアトラクション──コーヒーカップにでも乗っているような。

「コーヒーカップシンドローム」のイントロが鳴り響く間、画面はステージを回転し続けた。
この表現は、配信ライブでなければ不可能だ。現地ライブでは「自分の目」という定点カメラでしか壇上を観測できないが、「カメラワーク」という概念を携えた配信ライブというコンテンツなら、「回る」をこんなにも視覚的に作り出せる。
流石に曲中ずっと回転し続けるのは視聴者が酔ってしまうからだろう、1Aに入ると通常カメラに切り替わった。
JET CO.の音源にあるような荒々しさは鳴りを潜めつつも、今のユニゾンだからこそ出来るスタイリッシュな激情が、こちらに肉薄する。
心なしか、田淵が俯いて弾いていた時間が長かったような気がした。

アウトロ、三人それぞれの楽器をアップにした映像に切り替わっている隙に、いつの間にか360度カメラが撤去される。

曲が終わると、間髪入れずに斎藤が「よっ」と言ってギターを掻き鳴らす。
間違いなく、ぐるぐる繋がりである。
9thアルバムにも収録される奴の名は「Nihil Pip Viper」
マイナーキーロックからの反動で、とにかくキャッチーでポップな音色が繰り広げられる。
『全身にぐるぐるぐるぐる刺激』の部分では、パトベジツアーでも見た「何かが回ってる風のデザインの照明」が。ユニゾンの照明はいつだってセンスの塊である。
間奏では、本日二度目の田淵による斎藤ちょっかいタイム。ベースを弾き散らかしながら、斎藤の周りをぐるぐる回る。吹き出したせいでギターのフレーズをちょっと間違えていた。楽しそう。
そして、裏声絶好調のラスサビ『Nihil Pip Viper 逃げ切れるのかな?』から、最高にカッコいい『締め付けてやるぜ』! これには……痺れざるを得ない!


最後の一音を鳴らし終わり、刹那、無音。
空気の襟が正されるような感覚。
その静寂は、凛とした一声がこじ開ける。



『高らかに 空気空気 両手に掴んで 咲き誇れ美しい人よ』


「Invisible Sensation」。自律的に前へ進む強さと、余りある多幸感。それらを存分に両立、凝縮したポップキラーチューン。
終盤の追い上げである。
ここでも、映像だからこその表現が登場。まず、三人のバックに緑一色の壁が現れる。「この曲のシングルジャケットの再現だ!」と興奮。
──と思いきや、サビになった瞬間、緑の壁があったはずの場所に、ユニゾンのロゴマークが出現!花のように見えるあのデザインが、白く輝く!
そう、なんとジャケット再現としての緑の壁を、クロマキー合成の土台、つまりはグリーンバックとして利用したのである。
ロゴを背景に歌うのは、照明が黄色なことや、客席側にいる撮影スタッフをときどき意図的に映していることからも考えて、この曲のMVの再現と捉えていいだろう。
今回のライブのMVP楽曲をひとつだけ挙げろと言われれば、私はこれを推す。

曲が終わると、クロマキーで合成される背景は変わり、「LIVE(in the)HOUSE 3」のロゴに。一曲前の「Nihil Pip Viper」の歌詞である『愛を謳ってくれ』に呼応するかのように、『愛してる それだけ』と紡がれる。
久しぶり、「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」
いつも難解な表現をするユニゾンが「愛してるだけで十分」と宣言するというだけで唯一無二の価値があるこの曲。
彼らの音楽を聴いていると思うのだ。愛というのは誰かとか世界とかを救うものじゃなくて、他でもない自分を救う存在なのかもしれない、と。誰もがエゴイストだから、心配はないのだ。

『だからまだ見たことのないあの場所へ行きたい』

『君さえ良ければ ねえ』

こちらが能動的に考えて動いて、自分の手で幸せを掴むことが大事で。

まだ見たことのない場所は、きっと楽しい。


「ラスト!」


その高らかな宣言に導かれて、いや、勝手についていって見えたのは、最後のくせしてワクワクが止まらない、何かが「はじまる」予感のする音。


『Oh, NO.6!』


「アトラクションがはじまる(they call it "NO.6")」

背景は元に戻り、ロゴも特に無し、照明だけのいつもの感じ。
いつもと変わらない、いつものユニゾン。
笑顔で弾いて、笑顔で叩いて、笑顔で歌って。
そこにステージがあり、音楽が鳴って、世界が光る。それだけで、目撃する意味になる。
絆なんかない共犯関係なのだ。勝手に楽しもうじゃないか。


このライブが終わったら、いったい何がはじまるのだろう。
そういえば、この配信は9thアルバム「Ninth Peel」の宣伝施策の一環だったか。
であればきっとこの曲で終わったのは、9枚目という新たなアトラクションのはじまりを告げる目的だったのかもしれない。
そう考えてみれば。
最終ブロックは、「コーヒーカップシンドローム」で始まり「アトラクションがはじまる」で終わる。遊園地繋がりだ。だが、それだけではない。
このブロックで強調されていた「回る」ということ。ぐるぐると、回転するということ。


ナンバー6。回転。


「6」を回転させると……「9」。


どこまでいっても、未来で会う9枚目への布石。
ならば、存分にワクワクを募らせて待っていることにしよう。

アウトロの音が伸びる部分で、三人は思い思いに動く。立ち上がってシンバルをとにかく叩く鈴木。ベースを床に置いてバク転する田淵。ギターを縦に持ち上げて掻き鳴らす斎藤。

言葉はいらない。ただ……楽しい!

「UNISON SQUARE GARDENでした、バイバイ!」

デッ、デッ、デッ、デッ、デッ、デッ………デッ!






最後の一音と共に、画面には「9th Album『Ninth Peel』4/12 Release!」と映った。
スライドはゆっくりと、アルバム特典やアルバムツアー会場の紹介などに切り替わっていく。ちゃっかりアニメ「ブルーロック」の宣伝もしちゃう。まあ、主題歌ふたつとも収録するのだ、そりゃ折角なら宣伝するか。

さて。
一通りそれらのスライドが流れ終わると、再びカメラの映像に替わった。
捉えているのは、あのアナログテレビ。ただし、あの時は3台あったのに対し、今は1台しかない。
テレビ内に映るは、冒頭で「夢が覚めたら」を演奏した、小さなライブハウス。
斎藤がステージ袖から出てくる。ギターを持つ。





田淵が出てくる。ベースを持つ。

鈴木が出てくる。ドラムの椅子に座る。



今度は、三人が揃った。


視聴者の画面が、シームレスにテレビ内映像に切り替わる。

一言。

「おまけ」

力強いブレス、そして──。


『かくしてまたストーリーは始まる』


既に音源公開済みの9枚目収録曲、その最後のピース。
小さな箱で奏でられる「kaleido proud fiesta」の壮大な音は、アンバランスなようで、不思議と美しい。
何故この曲が本編ラストではなくおまけなのかといえば、「アトラクションがはじまる」を最後の曲とすることで生まれる文脈を大事にしたかったからだろう。その上で、9枚目に向かう配信ライブでこれをやらないのは嘘だろ、となったのではないだろうか。

また、思えば、「夢が覚めたら」と「kaleido proud fiesta」は実は事前収録で、それ以外が生配信だったのだろう。「同じライブで会場を変える」というテクニックもまた、配信ライブでしか出来ない所業である。

最初一人だった斎藤が、最後には田淵&鈴木とともに演奏する──これも、MV再現だろうか。カレイドのMVの「後半まで三人が同じ画角に映っているシーンがない」という特徴を踏襲したのかもしれないが、これは考えすぎかもしれない。

今後もユニゾンの代表曲として輝いてくれるであろう「kaleido proud fiesta」。次はツアーで聴かせてもらうことにしよう。

かくして、快進撃は始まった。




……いかがでしたでしょうか。
「LIVE(in the)HOUSE 3」、いずれ本当にやりそうな気はしていて。けど、今回は妄想の祭典。「もしインザハウス3があったら?」というよりは「もしインザハウス3の開催がこの時期だったら?」というところに焦点を当てて考えさせていただきました。これなら存在するはずないからね。

物好き達によるセットリスト妄想企画「LIVE(in the)BRAIN」の本編は、ひとまずこれで最後。あとは明日まとめ記事を投稿し、本当の終幕となります。
まとめ記事はバックナンバーとしての機能も備えているため、余計な情報は入れないようにしようと思っておりますので、一足早くここで感謝を書かせてください。
参加者の皆様、お疲れさまでした!そして、私の軽い思い付きを面白がって乗っかってくださり、本当にありがとうございました!誰も参加しなかったら……とまでは流石に思っておりませんでしたが(事前に絶対参加しますと言ってくださったフォロワー様がいらっしゃったので)、想定より多く来てくださり……やったあ!と思っています。15日間開催と決めたときは「いや長すぎだろそんな来ないわ」と感じながら半ばおふざけで告知したものです(しかし、自分含め13人も参加者が集まったことで、幕間日を合わせてなんと15日ぴったり!有難すぎ)。

また、参加はせずとも企画を楽しんでくださった読み専の方々にも感謝を。ハッシュタグで観測できる範囲のみではありますが、感想などを呟いていただいたのを見てウキウキになりました。

改めまして、妄想の祭典、その本祭はこれにて終了!
またいずれ何か企画するときには、ぜひ乗っかってくださると嬉しいです(予定でしかないですが、年内に「LIVE(in the)BRAIN 2」はやりたいな……とこっそり思っています)。

それでは……See you next live!


~セットリスト~

01.夢が覚めたら(at that river)

02.カオスが極まる
03.スロウカーヴは打てない(that made me crazy)
04.セレナーデが止まらない

05.MR.アンディ
06.ナノサイズスカイウォーク
07.カラクリカルカレ
08.プロトラクト・カウントダウン
09.リニアブルーを聴きながら

10.Numbness like a ginger
11.Simple Simple Anecdote
12.Silent Libre Mirage
13.ドラムソロ
14.セッション~コーヒーカップシンドローム
15.Nihil Pip Viper
16.Invisible Sensation
17.誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
18.アトラクションがはじまる(they call it "NO.6")

19(おまけ).kaleido proud fiesta

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