【LIVE(in the)BRAIN 2】レンガ造りとマーメイド

本記事は、文章企画「LIVE(in the)BRAIN 2」の参加記事です。
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赤レンガ倉庫の広場で行われる、野外ワンマンライブ

(キーワード:海辺、風)




野外に響く絵の具を遮り、「マーメイドの嘘が本当になってしまう前に」と叫ぶ第一声。一曲目はなんと「マーメイドスキャンダラス」である。
ここで、野外ライブならではの特徴が顔を出す。プロジェクションマッピングにより、バックの赤レンガ倉庫の壁一面に沢山の泡が浮かび上がるのだ。今回はほぼ全ての照明演出がこのプロジェクションマッピングによって行われるため、普段のライブハウスやホールのライブとはまた違った世界観表現が楽しめる。

2曲目、先ほどまであった泡はぷかぷかと浮いているような表現だったが、ここにきて泡は猛スピードで急上昇するほか、その量も増え、無数の粒が下から上で流れていく。まるで炭酸のようだと感知したその瞬間、「to the CIDER ROAD」のイントロが響き渡る。

暑さも忘れるほど爽やかな空気感はあっという間に4分間を駆け抜け、更に次の曲へと持ち越される。
「Silent Libre Mirage」では、"赤"レンガ倉庫にもかかわらず青く発光。青い赤レンガ倉庫なんてそうそう見れるものではなく、それは今この瞬間が限りなく非日常であることを示している。
そんな青色であるが、アウトロからだんだんと濃くなって、夜を思わせる紺色に。真夏のピークに演奏する逆張り精神が嬉しい、「サンタクロースは渋滞中」だ。あまつさえバックでは沢山のサンタクロースが飛び交っており、炎天下とびっくりするほど合わない。だが、素行の良い人が治安の悪い言葉を歌うのがグッとくるのと同じように、「合わない」という事象こそが何より似合っている。究極の解釈不一致は逆に解釈一致なのだ。
駄目押しの"Merry Christmas!!!"(クソデカゴシック体)も相まってトンチキなパートは終わり、ジェットコースターのようにシリアスへ急降下。
冬という情報だけをそのままに、辺りの明かりは仄暗く。ギターが吐き出す鈍色の音は、「スノウリバース」のイントロだ。
マーメイドは炭酸や海の中を泳いでいたが、サンタクロースによって足をプレゼントされる。初めて見る雪の中を歩き、「僕の足跡はやっと動き出した」と感じる、みたいな文脈である。

鈍色の和音はいつしか銀色にグラデーションを成し、それは金属のような鋭利さを醸し出す。切っ先鋭いロックナンバー「セレナーデが止まらない」が、無機質な銀色の中に激情を灯す。
「マーメイドの嘘が本当になってしまう前に」から始まった1ブロック目は、「嘘はもう沢山だ」と叫ぶこの曲にて終了を告げる。

2ブロック目、マーメイドの他愛ない日常が始まる。「City peel」では、人間の街を叙景することで片隅の己を叙情する。バックの照明は、赤レンガ倉庫の壁を街の俯瞰地図に見立て、窓を建物、その間のレンガ部分を道とし、そこを複数の棒人間が何気なく往来している様子が描かれる。
次の曲は、「街」と「風」をキーワードに接続される。都会の一等地で歌われる「ふと見上げる空が四角だから」が小粋な、「クロスハート1号線(advantage in a long time)」である。言葉にしたら半端になる気持ちを紙飛行機にして、秒針とともに溶け行く日々の風に乗せる。

しかし、日常は長く続かない。しばしの暗転ののち、次の曲は静寂から始まる。不穏な単音に記された曲名は「WINDOW開ける」。清々しいほどの青空の下にもかかわらず、曲の魔力だけで情景をジャック、心象風景はすっかり嵐の夜である。
その動乱に続くは「シューゲイザースピーカー」。この流れは、ツアー「Ninth Peel」からのセルフ引用である。ここでも「足元が見えるか?」と。足の存在を強調。

さて、童話「人魚姫」では、足を手に入れたマーメイドは、愛する人をナイフで刺すことが出来ず、最後には泡となって消えてしまう。
だがここはUNISON SQUARE GARDENのライブ、バッドエンドでは終わらない。悲しき結末には決してなるものかと、ポジティブなマーメイドは快進撃を始める。赤レンガ倉庫で見たい曲ナンバーワン、「kaleido proud fiesta」が、ここにきて満を持して登場。世界を一気に多幸感で染め上げる。
そしてそのまま「オリオンをなぞる」へなだれ込み。王子を刺すはずのナイフは、全てを解決するためのヒーローの武器へと変身。「ナイフを持つ その、本当の意味」を胸に、迫りくる困難は快哉なまでに薙ぎ倒す。

後は最後まで一気に駆け抜ける。横浜の海から風が強く吹いて、ヘクトパスカルは低きに流れる。「Catch up, latency」もまた、箱根駅伝がテーマの作品のタイアップなだけあって、「風」と「足」を強く想起させる。
物語の結末としては本来間違っているが、「敬具、結んでくれ 僕たちが正しくなくても」がその生きざまを肯定するのだ。

そしてラスト、「シャンデリア・ワルツ」で大団円ハッピーエンドを迎える。レンガ造りの建物を背に「レンガ造りのウォールロードが 重なった希望に見える」と歌うのがニクい。魔法の力で足を手に入れたマーメイドは、今度は代償のない純粋な希望でできた「わからずやには見えない魔法」を、誰かにかける立場になったのである。

華やかな照明は、いつの間にか暗くなった空を克明に彩り、壁の端から端まで使って、虹色の「UNISON SQUARE GARDEN」の文字を映す。「またね!」とだけ残し、いつも通り、彼らは軽やかに去っていくのだった。

set list

01.マーメイドスキャンダラス
02.to the CIDER ROAD
03.Silent Libre Mirage
04.サンタクロースは渋滞中
05.スノウリバース

06.City peel
07.クロスハート1号線(advantage in a long time)

08.WINDOW開ける
09.シューゲイザースピーカー
10.kaleido proud fiesta
11.オリオンをなぞる
12.Catch up, latency
13.シャンデリア・ワルツ


いかがだったでしょうか。

マーメイドを基軸に、海と風の要素を回収しながらハッピーエンドまで持っていく1時間一本勝負のライブ。詳しい開催背景は特に設定しておりませんが、多分夏の夕方ごろから始まっていると思われます。多分。

最終日の記事ってこんな短くていいんかなという気持ちもままありますが、今回はさっと読める仕様ということでご勘弁いただきたく……。

まずは今回企画に参加してくださった皆様、本当にありがとうございました!本編記事だけでなく、ミニ企画「in the BRAIN mini」も色んな方が参加してくださって嬉しい限りです。
次はいつどんな企画をやるか、はたまたもうやらないのか、今のところ何も展望がありませんが、次の機会がありましたら何卒またよろしくお願いします!
それではまた!


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