おやすみなさい
全部夢で、まぼろしで
散りばめたお菓子みたいなキラキラがまぶたの奥で形を変える
「あの子の本質はまだ子供のまんま」
と、あの人は言ってたよ。
浅草、秋の夕暮と今しか飲めないお酒がある。
口のまわり、真っ白な泡をつけて
「あの子以上の人を見つけられる気がしないんだよね」
って言ってた。
齢23やそこらでそんな人を見つけられる幸せと、そう思われることに無自覚で無頓着なあの子と、色んな気持ちが交差して思わずガラスのグラスの底を仰いだ。
見上げた空は、明け方か夕暮れか混ざる時間がある。
そういうロマンチックなことって口に出すと途端に恥ずかしいよね。
はずかしいことをしれっと言える、そういった強さ。
ねぇ、日常にタイトルなんてないよね。そうだよね
クーラーのパタパタしたフィルターを初めて掃除した。
私はね、眠っていたいの、坊の部屋みたいな。
夢でいたいから自分の部屋だけは現実とかけ離れた空間を意図的に作っていて、ラブホテルのモラトリアムみたいなそれ、固まった空気と空間と孤立はあんまりにも流れの早い日々に、今だけ頼りのない終止符を打ってくれるようで安心する。
ずっと子供のまま、ずうっと夢で会いたい。大人にならないで、結婚しないで、子供なんて作らないで。
ただ夢でいたいのに、お風呂場で濡らしたフィルターは醜い灰色の埃をいつまでも吐き出す。
いつまでも、いつまでも……。
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