見出し画像

デジタルヘルス領域で医療従事者が活躍するために必要な素養

何を隠そう私は、元々理学療法士として、医療機関で働いていた医療畑出身の人間です。最近では、社員から「萩原さん、何か医療従事者っぽいっすね」と言われる始末ですが、、

特に弊社の事業領域では、自分が医療現場で養ってきた経験が活きているなと感じる部分も多く、医療従事者が民間サービスとして発揮できるバリューの大きさとその可能性を改めて感じている毎日です。

その一方で、医療分野のサービスではあるものの、医療の有資格者であれば誰でも活躍出来るわけではありません。エンジニアやデザイナー、ビジネス人材など様々な職種の人達がいる組織の中で、医療従事者としてのバリューを発揮するためには特有のスキルセットが必要であるとなります。

今回は、特に医療従事者がデジタルヘルス領域で活躍するために必要であると考える素養を4つにまとめました。
ぜひこれからの新しい医療人材としての活躍を目指すみなさんに読んでいただきたいと思います。

①臨床推論能力

まず、一つ目には、臨床推論能力を挙げました。
<医療機関での診療行為>と<オンライン診療やデジタルヘルスサービス>での大きな違いは、患者(ユーザー)と医療従事者との接点の大きさです。

前者では、「通院・入院」という行動が発生するため、時間的や場所的な拘束が発生し、患者と医療との接点は自然と大きいものとなります。

一方で、後者の場合は、患者は空き時間、普段の生活圏内での利用が中心となり、接する提供サイドの人数も少なくなります。

つまりは、医療現場での患者医療者間の関係性が「面」であるのに対して、オンライン診療やデジタルヘルス領域での関係性は「無数の点」に近いものとなります。

人同士の接点にフォーカスすると、これまで「患者 vs 医療従事者チーム(多)」であった関係性が「患者 vs(医療従事者+医療従事者+医療従事者)」の関係へと変化します。この変化によって医療従事者個人に期待されるパフォーマンスは大きくなり、幅広い疾病知識に基づく判断や、限られた情報である無数の点を結びつけて、サービスの方向性を判断をする臨床推論能力がより必要となります。

ここでサポートが期待されるのがAIをはじめとするテクノロジーです。ログやデータ化される指標が圧倒的に増える分、テクノロジーによってサービスの品質は補完、強化されます。

ただそれらは一部であり、まだ多くはデータオリエンテッドにて担保できるものは "最低限のボトムラインの品質管理" であり、医療従事者がどのように自身の臨床推論上でテクノロジーを使いこなすことができるかが問われます。また患者サイドもまだサービスとしての人の温かみを求めている部分も多く、個人に最適化した満足度の高いサービスを提供するためには、医療従事者の属人的なスキルへの依存度は依然高いものとなります。

これは、サービスの医療領域としての専門性が強いほど、また、疾病としてのユーザーのペインが強ければ強いほど、医療の知識に基づく、臨床推論能力を活かしたサービス改善への貢献における期待度は高くなります。


②(デジタル)コミュニケーション能力

医療現場で行われるコミュニケーションは基本的に対面でのface to faceでのコミュニケーションが中心となります。

一方で、遠隔でのコミュニケーションでは、顔は見えるWEB電話のこともあれば、電話での通話やチャットなどでのコミュニケーションとなることが想定されます。

この場合、相手の表情や所作を含め、医療現場でのコミュニケーションと比較し、受けとることのできる情報量が少なくなります。

つまり、相手の心情を声のトーンや文章の行間などから察する能力がより重要となり、それに応じて適切な対処をとる必要性が生じてきます。

逆もまた然りであり、こちらが提供できる情報量も限定されるため、コミュニケーションの齟齬を防ぐためにも必要十分量の情報を適切に伝えるスキルも求められます。

ツールとしてITが普及したとしても、患者サイドと接する「接点」を担うのは、医療従事者であり、ここで生じるコミュニケーションがサービスの質を左右するのです。


③ 仮説検証能力

遠隔診療やデジタルヘルスの特有の医療機関での診療行為では得られないメリットも数多くあり、その一つがデータ化です。

これまでの医療行為ではデータ化が難しかったユーザー行動の流れや利用状況、生活習慣のログなどが数値として蓄積され、医療情報との紐づけが可能となります。

これらはこれまでの診療行為では取り扱っていなかったデータ群であることがほとんどです。

そのため、より良いサービス設計を行っていくために、医療従事者には新たにこうしたデータを活用し、仮説立てとその検証のサイクルを回していくスキルが求められます。

医療現場では、エビデンス・ベースド・メディシン、ナラティブ・ベースド・メディシンと言われるように科学的根拠や患者ごとのストーリーに応じて医療行為を提供していくものとされます。

デジタルヘルス領域では、これまでデータ化されていないナラティブの部分をいかにデータ化して、エビデンス化されていないデータの仮説検証を行いながら、サービスの改善を進めていくかが肝となります。


④ (テクノロジーへの)適応力

デジタルヘルスとは、医療/健康領域とテクノロジーの掛け算によってユーザーへ提供できる価値の最大化を目指すものです。

医療の専門家である医療従事者が、テクノロジー領域にどれほど興味を持って自らの知見を深めていけるかは非常に重要な要素です。

特に当社のようにエンジニア、デザイナーチームと日々ディスカッションをしながらサービスを開発しているチームにおいては、お互いの専門領域への敬意と相互理解があって、初めて同じ方向を向いて最適解への追求が可能となります。

よくある失敗は、医療従事者が自分の経験則に基づいて、「こんなサービスがあったらいい!」と開発サイドに一方的に投げるパターンです。これでは、互いの価値は掛け算にはならず、医療従事者の想像の範疇のちょっと便利なものしか生まれてきません。

課題の本質からエンジニア、デザイナーたちと共有し、誰が、何に困っているのか、どのように解決するのか、といったサービスのフレームワークの構築から同じ目線で取り組んでいくことで、お互いの価値を最大限に活かした新しい文脈でのサービスが初めて生まれてきます。

そのためには、医療従事者がテクノロジーの関心を持ち、知識を高め、相手の文脈でのコミュニケーションに適応していく必要があります。

以上、私が日々感じているデジタルヘルス領域で医療従事者が活躍するために必要な素養をまとめてみました。

このように医療現場で培った能力をデジタルヘルス領域で最大限に活かすためには、これまでの経験に固執せず、新たに養っていくスキルセットが必要です。

またここからは大いに宣伝ですが、PREVENTでは、名古屋大学医学部発のデジタルヘルススタートアップとして、この領域で活躍する次世代の医療専門職の育成に力を入れており、PREVENTからデジタルヘルス領域で活躍する医療人材を輩出していきたいと考えています。

これからデジタルヘルス領域で活躍していきたい方、予防領域でのチャレンジに少しでも興味がある方は、ぜひ一度お話しさせてください!!


いいなと思ったら応援しよう!