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幸せの重さと、そのかたち

深夜のコンビニに入ると、ビニールパーカーにつっかけサンダル、寝癖頭の中年女性が電話しながら食品を物色していた。

女の声色で「なにがいいの~?」と親し気に話しているのを聞いて、深夜にコンビニごはんを買わせる男性はどんなひとなのだろうな、ふたりの関係はカップルかな、夫婦かな、不倫かも、などと下衆な勘繰りをしていた。

新宿という立地もあってある種の生々しさも感じ、一歩引いて考えていたが、いやしかし、と思い直した。

これだけうれしそうに話しているのだから、相手のことが大好きなのだろうし、相手はすごく素敵な男性かもしれないし、そもそもコンビニごはんがどうだろうと相手がどうだろうと、彼女の幸せは彼女にしか測れなくて、私が自分の物差しで測ろうとするなんて傲慢でしかないな、と。

そして、たとえ私の抱えている幸せと彼女の抱えている幸せを、同じ天秤に載せてグラム単位で測れたとしても、彼女のほうが私よりずっと幸せかもしれない。

幸せの形は人の数だけあって、全部違う形なんだ。

中年女性はそんな気付きを私にもたらした後、幸せそうにサンダルを鳴らしながら去っていった。

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秋カヲリ@星天出版代表
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