
ミニグラス。アイスコーヒー。そして、怒りまっせの一言。
神戸市兵庫区H地区にある老舗。近くに寄ったので、ふらっとご挨拶。
80歳を超える店主さん。現在もお元気で、はきはきされている。
カウンター越しにアイスコーヒーをオーダー。
少し耳が遠くなったのか、聞こえなかったようで、もう一度大きめの声でオーダーし直す。「アイスコーヒーお願いします」。実は、お得意様にご挨拶に伺う際に「アイスコーヒー」は少し頼みづらい。自分の中で、「店の代表的なブレンドを注文することが礼儀だ」みたいな概念が何となくある。ただ、今日は暑すぎた。店に入るなり汗が吹き出し、とにかく体を冷ましたい一心で、ついついアイスコーヒーと口走る。
ふと、顔を上げると、かなり小さめのグラスに、氷の入っていないアイスコーヒーが出てきた。もちろん黙って飲む。よく冷えている。そして、かなり濃厚で、とても香ばし。しっかり苦味がベースで、少し独特の香りも出てきた。おいしい…。もったいないからと、ちびちび飲んだ。でも、出てきたグラスが小さいから、すぐになくなる。
「マスター、お替りください。氷なしいいですね!」というと、マスターが「お替り飲んで大丈夫ですか」との問いかけ。「???」どういうことなんだろうと考えていると、「いや、萩原珈琲の皆さん、いつも一日にたくさんの店回って、たくさん飲んではるから、お腹ちゃぽちゃぽかなと思ってまして。」「おなか冷えたらあかんので、氷も抜いてます。」とのこと。
無事、氷なしのお替りアイスコーヒーをいただく。さっきと味が違う。「マスター、これ同じもんですか?」すると、マスターが「実は先と配合ちゃうんです。これは、自分が好きな配合のアイスコーヒーですねん。」っと、突然出てきた裏メニューアイスコーヒー。さっきよりも味がすっきり。これも2杯目への気遣いなのかな?と少し勘ぐったりもする。話も尽きず、さんざんお話をさせて頂いた。そろそろ帰ろうとマスターに声をかける。「領収書、お願いします」すると即座に、「そんなん言うとったら、怒りまっせ!」と一言。
ミニグラスとアイスコーヒー。そして怒りまっせの一言。
そこには、やはり何物にも代えがたい、やさしさと会社への愛を含んだ思いが込められている。そう勝手に感じている。