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灘の下町ブレンド B面

現在の住まいから、南東に300mほど下った所に水道筋の入り口がある。正確には、灘センター商店街。そこをしばらく下ると、コロッケ屋さん、魚屋さんがあって、小さな入り口が見えてくる。こどもの手を引きながら、無意識に小さな入り口を左折する。そう、灘中央市場の西口(入口)だ。そんな日常の話。

(仮想じゃんけんゲーム)
入り口右側に、精肉店Dさんがある。ここで必ず挨拶をする。帰りに買います。と声をかけ、魚屋さんO商店の分岐を左に入る。すると、壊れてうごかないゲーム機が3台設置されている。その中の1つは、こどもたちのお気に入りだ。電源の入らないゲーム機相手に、仮想じゃんけんを始める。合いの手「ズコっ」は欠かさない。昔、現在の王子公園駅前商店会に、ミニ四駆を買いに行っていた模型屋さんがあった辺りで、私もじゃんけんゲームに没頭していたことを思い出す。

(平和と戦争)
ゲーム機を過ぎて、東に少し進むと、休憩所があって、鳩と戦車の乗り物が見えてくる。通称、平和と戦争。これはボロボロだけど、まだ動く。料金は20円。でも、10円で動くことが多い。ガタンゴトン。ガタンゴトン。一定のリズムで、きしむ音が心地よい。

(普通に話す時間)
一旦、中央市場の東口を出て少し南に下ると、灘中央市場2つ目の入り口が右手に見える。そこを右折して、すぐのところ。惣菜のTさんでニシンの酢和えを買う。こどもたちも、私が買うものがわかっていて、私より先に注文を済ませている。背後から声をかけられる。F商店のおばちゃんだ。ちょっと前、クリスマスの頃に、カギのかかっている防災空地を開けてくれた。そして、クリスマスツリーの下で絵本を読んだっけ。そんなことを思いだしながら、漬物屋Tさんにもご挨拶。塩と味噌を買う。

(手にはヤクルト)
しばらく西に進むと左手のかしわ屋さんTさんに差し掛かる。買い物予定がなくて、一度普通に通りすぎたら、頭上から「◯◯さん、黙って行きすぎたらアカンで」と背中に言葉が突き刺さってきた。すぐに振り返り、挨拶をして鶏肉や唐揚げを買う。気がつくと、こどもの手にはヤクルトが握られている。それ以来、かしわ屋さんの前を通ると、こどもたちが立ち止まり、ショーケースを眺めるようになった。もちろん、今は買い物を欠かさない。

(市場の中の水族館)
さらに西に向かう。最初西口から入って分岐があった所。魚屋さんのO商店。いつも目の前で魚をさばいているので、こどもたちにとってはもはや水族館。生きた魚や海老も見られる。ここでは、いつも刺身を買うけれど、夕方店じまいの頃には刺身がなかったりする。ボソボソっと話すおじちゃんに「さばこか」と一声かけられる。棚に魚が残っている。「お願いします」と答えると、ものの5分で大量の刺身が作られる。閉店前ということもあって、とてもお得な値段で手に入る。

(そして、ラムネ)
魚屋さんとのやり取りを終え、ようやく西口(出口)に戻る頃、精肉店Dさんのショーケースでこどもたちが立ち止まる。確か、来しなに「あとで買います」って、言ってたっけ。両手一杯の荷物をぶら下げたまま、お肉を注文していると、今度は、こどもの手にはラムネが握られているる。買い物を済ませDさんの前の空地の椅子に座って、こどもたちがラムネを頬張る。

ようやく買い物が終わった。
今日のご飯、何やっけ?そんな日々の繰り返し。その日常がたまらなく好きで、市場に通いつづける。

灘の下町ブレンド。
特別でも何でもない。普通に暮らす日々の記憶。

A面につづく

※このコーヒーの売上の一部を、摩耶山再生の会を通じて、摩耶でのイベントや坂バスなどに寄付致します。

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