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突然、流れ始めた音楽。それはちょっとだけ、違っていた。

大阪のとあるお客様を訪問。
平日の朝10時、店に入る。既に3人の男性客。常連のお客様だろうか。店に入った直後から、少しアウェイな空気が押し寄せてくる。

下町の住宅街にある老舗の純喫茶。クールビズとは言え、朝から会社員風の人間が、「おはようございます。」と大声で入店すると、確かに「誰や」となるのかもしれない。

店内には、しばらく無音の時間が流れる。こんな時、「やっぱりBGM欲しいな」と思うし、喫茶における音楽の大切さに、あらためて気づかされる。ちなみに、今日の場合は、クラシックでも、jazzでもいい。だって、この瞬間は「」が、心のよりどころなのだから。

ようやく、3人のお客様が会話を再開する。ほっと一安心し、私も店主さんと会話を始める。

主人が渓流釣りの名人で、あっ、いやいや仙人か。アマゴ釣りが得意で、一回の釣行で50匹は越えてたけど、とりすぎて…(つづく)

店主さんのお話が止まらないなか、ポンポンっと右肩を叩かれた。ふと、振り向く。先ほどの常連のお客様3人が話しかけてきた。「お前も行くか?」
手は後ろの方を指している。そこにはドアがあった。反射的に、「いえ、結構です。」と答える。3人の影が隣の部屋に消えていく。

気がついたら店主さんの話は、ご主人のゴルフの話に変わっていた。14歳年上のご主人が、コロナ以降ゴルフに行けていない話や、45歳からゴルフを始めたのに、70歳を越えた今もスコア100をきっている話。ゴルフをしない私には、少し難しい話だった。

話の途中。突然、音楽が流れ始めた。
さっきまで「」が心のよりどころだった。無音の中、「」が欲しいなと願っていた。でも、ちょっと望んでいた「それ」とは違う音だった。

コーヒーを飲み干し、席を立つ。挨拶をして、お店を出る。私の背中には、先ほどの3人の歌声が響いていた。

街中(町中)にある喫茶店。そこには、絶えず新しい人間ドラマが生まれる。

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