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山上と麓の2点の中間、MAYA KANKO HOTEL。
一枚の写真を入手した。かなり昔の写真のようで、印象深い女性がこちらを向いて笑いかけている。ホテルのテラスでの一枚ようだ。幼少期にこのホテルの横を通った記憶がかすかにあるような、ないような。そして突然、妄想の世界が始まった。
気晴らしに、外の景色を眺めようとテラスに出た。長峰の尾根、沢には杣谷川が流れている。
ふと、風に乗って甘い香りが漂う。
ふり返ると、女性が立っている。
ワンピースに、ファーの付いたカーディガン。
頭に金物の飾り物、首からは大きな真珠のネックレスをさげ、高めのヒールをはいている。
「まちのハイカラさんだろうか。」
目が合う。少し硬い表情で笑いかけてきた。
軽く会釈をする。
また、風が吹いた。
そして、甘い香りが漂う。
少しの間を空け、テラスを降りて前の広場に出ることにした。女性との距離が近づいてくる。香水の甘い香りが徐々に強くなる。と同時に、少し懐かしい香りも漂い始める。
さらに距離が近づく。
香水の甘い香りに混じり、また懐かしい香りだ。女性の前を通り過ぎ、階段を下り始めたころ、ふと懐かしい香りが、私の記憶と結び付く。
それは、私が生まれ育った「まち」の香りだ。
ワンピースにファー付きのカーディガン。
金物の髪飾り、真珠のネックレス。
厚めの化粧に、不慣れな笑顔。
ひょっとすると…。
しばらくして、部屋に戻る。もう女性はいない。椅子に腰掛け、そして一杯のコーヒーを飲む。
かつてそこに、人がいた。
時代とともに栄華と衰退、復活を繰り返し、廃墟となった今、日常だった空間が非日常の世界に生まれ変わる。
独得の華やかな香りから、ふと懐かしさを感じる。飲み終わった後のいつまでも続く余韻が、廃墟となった今も、地元の人々に愛されていて、「女王」の姿に重なる。
山上と山麓の2点を結ぶ中間地、虹の駅すぐにある「摩耶遺跡」関連イベント (ガイドウォークや遺跡ツアーなど) でも手に入ります。
※このコーヒーの売上の一部を、摩耶山再生の会を通じて、摩耶でのイベントや坂バスなどに寄付致します。