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君たちはどう生きるか 感想&考察

鑑賞後の方向け。
自分用メモに近いため、ネタバレ「しか」ありません⚠️

スタジオジブリ最新作「君たちはどう生きるか」を鑑賞した。
公開から2日様子を見ての鑑賞となったが、Twitter等SNSでの前評判は芳しくないものも多いように思え、逆にその賛否の割れ方に興味をそそられた。
事前のハードルが低くなっていたこともあり、「思ったより観られるぞ?」「思ったより面白いかも…」「あ、これ好きかも」と段階的に惹き込まれていった。
とはいえ、あまりにもメタファー・抽象的表現が多すぎて、一つずつ噛み砕いていかないと、全体像として何がいいたいのかも掴めない作品だ。
ネットに溢れているであろう他人の考察を目にする前に、とりいそぎ自分用にメモしていく。

◎眞人が塔のなかの世界に入る前

塔のなかの世界へ入る前は、母の死へのトラウマ・新しい家庭・新しい学校・変な青サギに襲われるなど、なかなか過酷な環境変化が眞人に訪れる。
子どもらしくありたい年頃だが、戦時中かつ甘えられるお母さんも居なくて、お父さんも忙しそうなうえ新しい家庭があって疎外感を感じている。
それでも礼儀正しく大人びた姿を見せるばかりか、狡猾に武器を調達するなど、眞人なりに上手く生きようとしている。しかし、学校に馴染めないからか、喧嘩のあと自ら怪我を負い、しばらく学校を休む。
「君たちはどう生きるか」の本と母のメッセージを読み、涙するシーンで、何か心変わりをしたように思える。行方知れずになった夏子を追って塔の中へ。

◎塔のなかの世界について

●世界観

この塔のなかの世界に通じるものを感じたのは、「千と千尋の神隠し」で千尋が訪れた世界と、ナルニア国物語に出てくるナルニア。
前者については、私自身かなりあの世界観が好きなので無理矢理合わせているところはあるかも。海を渡るところや、導いてくれるキリコさんについてはリンを思い浮かべたし、キリコさんの仕事場で大量発生したわらわらは、ススワタリを彷彿させた。海を渡っている時に出てきた黒い半透明の人型の存在も、「千と千尋」で見覚えがある。
ナルニア国物語については、扉の向こうに王国が広がっており、そこに迷い込んだ子どもたちが冒険をする話であるが、この話は実は宗教色の強い物語だとされている。
ナルニアは実は神の国で、ナルニアの王アスランはキリストであるとする説が濃厚だ。うろ覚えではあるが、登場人物たちはほとんどが死亡し、ナルニアに帰って平和に暮らすというような結末だったように思う。
千と千尋の世界やナルニアと現実世界では時間軸が異なる点が今作によく似ている。しかし、千と千尋の世界やナルニアと現実世界では一方向にしか時間は流れておらずその速度が違うのに対し、今作の異世界と現実世界は複雑に絡まり合っている点が異なる。
千と千尋の世界=神の集まるところ、ナルニア=神の国(天国)、とすれば、塔のなかの世界も「あの世」に近い存在なのではないだろうか。

●塔のなかの世界の構造

入り口を進むと書斎のようなところがあり、青サギが眞人の母をダシにおびき寄せた。書斎の壁から天井にかけて螺旋階段になっている様子は、「猫の恩返し」に出てくる城の構造を彷彿とさせる。そしてその一番上に主らしき人が現れて青サギに案内するように伝える。
書斎の床が沼のように変化して、そこから眞人とキリコは落ちて下の世界に行く。下の世界に行ったら、キリコさんは消えていた。
金色の門扉の向こうにでっかい岩(墓)があり、その近くでペリカンに襲われるところから、冒険が加速していく。

●塔のなかの世界の生き物、人

・青サギ
青サギのフォルムのなかに気持ち悪めのおじさん(本体)が入っている。急所に穴が開くとマッスルフォームに戻れなくなる。穴を開けた人が穴を埋めてあげるとマッスルフォームに戻れる。
最初は眞人を誘き寄せる存在で気味が悪く描かれていたが、次第に眞人と友情を築くようになる。

・ペリカン
眞人を襲ってくる。眞人が青サギの羽毛を持っていたから殺されずに済んだ?火に弱い。わらわらを食べる。下の世界のことを地獄と評価する。下の世界に連れてこられた。だいぶ飢えた。塔の外へ出ると喋ることはなくただのペリカンになる。

・キリコさん(若い姿)
眞人を助けてくれる存在。キリコさん含む婆やズの置物を持っている。この置物は眞人を守ってくれる。おそらく、下の世界に降りた時いなくなったキリコさんは置物キリコさんと同一化した。赤い火の輪っかのようなものでペリカンを蹴散らす。船乗りで、魚を捕まえて、それをわらわらや黒い半透明の人型に与えて生活している。婆やのキリコさんと同一人物と眞人が見抜いたのはなぜだろう。
キリコさんだけが、若い姿のキリコさんと置物キリコさんとして重複して存在している。→おそらく、眞人がいた時間よりずっと前の時間軸でキリコさんもこの世界に迷い込んだ。物語終盤で元いた時間軸に戻ったが、記憶を失い、眞人と一緒にこの世界に戻った時には置物キリコさんとして存在することとなった。唯一2度この世界に来ているため、重複して存在している。

・わらわら
白くて丸くてかわいい。キリコさんが捕らえた魚の内臓をエネルギーにして浮上する。浮上したら人間の世界に行く。=魂?輪廻転生?行く途中でペリカンに食べれるものもいる。可燃性。

・ヒミ
赤い服を着ていて火が大好き。火を操ってわらわらがペリカンに襲われているところを助けたが、わらわらも焼く。インコに眞人が襲われそうになったところを助ける。そこから先、眞人を導く存在となる。夏子を妹と言っているところから、眞人の母であることを匂わせる。婆やから父への発言で、眞人の母が1年行方不明になっている間にこの世界で暮らしていたと推測できる。物語終盤で行方不明から1年経過した現実世界へ戻るが、記憶を失っている。

・インコ
普通のインコよりだいぶデカい。紛れ込んだ青サギにも気づかないので多分頭(か目)はあまりよろしくない。人間を食べるが、赤ちゃんや赤ちゃんを身籠っている人は食べない。この世界でわらわらの次くらいに人口多そう。塔のなかの世界から現実世界に移るとサイズがインコ大になり、喋らなくなる。ペリカンとちがうのは、糞を撒き散らすところ。糞はどういう意味があるんだろう…。

・インコ大王
インコの世界の王様?群れの一部が掲げていた「DUCH」という言葉の意味が、調べてみたけどよくわからん…
ヒミを差し出すことによって、この世界の主?である大叔父さまに謁見できるようで、世界の秩序を守るために奮闘していたっぽい。眞人が夏子の産屋に入ったことはタブーらしく、眞人を捕えようとしていた。インコの中で唯一全身白。

・大叔父さま
ずっと絶妙なバランスの積み木(石)をしている。
現実世界にいた時、維新の際に隕石が飛んできて?出来上がった塔を保管するために外側に建物を作った。夏子曰く、本を読んでいる時に気が触れて行方不明になった。
積み木(石)が崩れると、世界が崩壊する?
眞人を後継者に指名するが、断られる。インコ大王が、悪意のない石の積み石をぐちゃぐちゃにしたので?世界が崩壊して??眞人達に元の世界へ戻るよう指示した。
少し脱線するが、婆やズは物語序盤、夏子を「お嬢様」と呼んでいたが、途中から「奥様」に呼び方を変えている。そのほかに婆やズが眞人母の昔話をすることや、大叔父が眞人母や夏子の母の大叔父にあたることから、屋敷は父方のものではなく母方のものであることは明白。キリコさん(婆や)が言っていたように、屋敷の一族の血をひいているものにしか見えないものがある。経緯は分からないが、大叔父がこの世界の主になってから、血縁の者が主の職を継ぐのを待っていたのは間違いない。
大叔父さまが行方不明になったのも、眞人が塔のなかへ向かったのも、本を読んだ直後なのが興味深い。眞人は、新しい環境に戸惑い、特に新しい家族ができることを受け入れられずにいたが、母からのメッセージを受けて新しい家族を守ることを覚悟して、塔のなかに入っていったのかな。

●積み石の意味

この作品における石はなにかのメタファーであることは間違いないが、それが何かが掴めそうで掴めない。
下の世界に降りてすぐの墓石、触るとバチバチ電気?の走る石の壁、そして積み石。
積み木に見えたが実は木ではなく積み石で、絶妙なバランスで成り立っている。それが崩れると世界が崩壊する(ニュアンス)。
石を積むという言葉で私が思い出したのは、賽の河原での石積み。
賽の河原は三途の川の手前にある河原のことで、そこでは6歳から10歳くらい、親より前に亡くなってしまった子どもが親不孝の罪を償うために石を積む。功徳(良い行い)を積めていない子どもが、石を積むことによって三途の川を渡ることができるというもの。
眞人は、石に悪意がついているか見極める力を持っている子どもで、自分自身の悪意の象徴を体に刻んでいる(=頭の傷)。いや、悪意の象徴を体に刻んでいるからこそ石に悪意がついているか見極められるのかも。
先述した千と千尋の世界やナルニア国との共通点や、ペリカンの「ここは地獄」発言、キリコさんの「死んでる者のほうが多い」発言を思うと、下の世界はあの世に近い存在であると思われる。もし眞人が大叔父さまの願いを聞いて、石を積むことになったら、積み石に、賽の河原での石積みに似た意味合いが生じるかも…。

●塔のなかの世界まとめ

塔の本体(世界)が爆誕したのが維新の時っていうのも何か意味深。そこからしばらくは混沌としていて、外からの働きかけ(=大叔父さまが外に塔を作った際のこと)に対してパワーが噴出して工事に当たった人は命を落としたり怪我を負ったりしたと想像する。
経緯は分からないが、大叔父さまがこの世界の主になり、混沌から秩序のある世界になった。あの世に近い世界ではあるが、すべての命が輪廻する場所であるならば、世界の崩壊や誕生ということ自体が整合性取れないので、「あの世の支店」というのがしっくりくる気がする。
大叔父さまはずっと血縁のある者が後継者となることを望んでいて、待っていた。後継者は男の子が良かったのではないかな…それで青サギを使って眞人を誘き寄せ、眞人の弟を身籠った夏子を拉致した。
観客は眞人の視点寄りで見ているので、夏子が連れ去られたように思うけど、夏子のお腹の中の子どもが目的だと色々整合する。
夏子の産屋が厳重に守られていたことや、そこに入った眞人をインコ大王が捕らえようとしたこと、インコは赤ちゃんを食べないことなどがその裏付けになりそう。
インコ大王が積み石をぐちゃぐちゃにしたので世界が崩壊して、大叔父の後継者計画も頓挫し、塔のなかの世界にいたものはほとんど現実世界に還った。

◎大まとめ

鑑賞後はすごく面白かった!考察していきたい!とワクワクしていたけど、一つずつ思い返すと要素が多すぎて、どんどん理解がとっちらかってきた。
私は夢を見て眠りから醒める直前は「すごく面白い夢を見た!これはものすごいストーリーだ!」と思うのに、よく思い出そうとすると全く脈絡がなくひとつも繋がりがなく、何が面白かったのか分からなくなることが多い。今、とてもその状況に似た感覚がある。
ひとつ確かに思うことは、この作品で本当に駿はラストなのではないかということ。塔のなかの世界はスタジオジブリで、大叔父さまは駿なのではないか、という根拠のない漠然とした感想がある。
もしそうであるとすれば、駿はスタジオジブリの後継者をずっと待っていたし、監督のできる人はほかにもいるのでしょうが、世界が崩壊し住人達が現実世界に羽ばたいていったように、駿なくしてスタジオジブリの存続させるよりも、培った技術を外の世界で遺憾無く発揮してほしいという製作陣へのメッセージに受け取れてしまう。飛躍しすぎているかも。
アニメーション技術は他のスタジオでもどんどん進化しているが、やっぱりジブリはジブリにしか出せない色があると、今作を観て実感したので、できれば私が受け取ったメッセージは間違いであってほしい。

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