
失敗にどう向き合うか
新卒採用のスタッフや若い方には、とにかく行動してみて「沢山失敗してください」と伝えています。
大事なのは失敗すること自体ではなくて、「失敗にどう向き合ったか」という点。向き合い方次第で、自分なりの判断軸が少しずつ形成されていくはずです。
若い頃の話をするのは恥ずかしいのですが、私がこの会社に入社した当時の配属先は、横浜の訪問入浴の営業所でした。当時は訪問入浴事業の最盛期。今では考えられませんが、ひとつの拠点に訪問入浴の車両が10台以上ありました。
そして、全ての車両がトヨタのハイエースのマニュアル車でした。
入社時に運転免許証の有無を確認されて、「持っています」と一応事実は伝えたものの、実はアメリカ在住の際にオートマ車のみの運転で取得したものでした。
当時の日本には「オートマ車限定」の概念はまだ無く、そんなことも知らないままの入社でした。
生まれて初めてのマニュアル車で、いきなりの路上運転、しかも車両は運転したことないくらいに大きな上にパワーステアリング機能も付いていません。ハンドル操作が重いのです。
誇張でなく、本当に信じられないくらいエンストしまくっていました。
毎朝5時台に出社しては、駐車場でバック前進の練習をするも所詮は付け焼刃。
横浜の南区というのは住宅街の道はとても狭い上に坂道も多く、場所によってはサイドミラーを両側折りたたんで路地をバックで入っていき、ハッチバックから出入りするなんてところもありました。
そんな道に、無謀にも本来はオートマ限定であるマニュアル車路上初心者が果敢に挑戦していきます。
土砂降りの雨の中で、狭い路地で立ち往生してしまい、同乗者の女性2人(看護師さんとヘルパーさん)に下車してもらって車両の前後を見てもらいます。
前進したら前をぶつけ、バックをしたら後ろをぶつけ、ずぶ濡れになった同乗者たちからは当たり前ですが同情の声はかけられるはずもありません。
半クラッチの仕組みもよく分からないまま、最初の数週間はなぜかずっと半クラ状態で運転をしていたため、当たり前ですが摩耗した金属パーツ同士は噛み合わなくなり、ある日信号待ちをしていた時に、ただただ空回りして全く動かなくなりました。
営業所までは残り500メートルくらいの道のり。営業所の隣には偶然にも修理工場があります。
恨めしそうに見つめ返してくる女性陣を車から降ろして、二人に後ろを押してもらいました。
ちょうど人の並ぶバスの停留所の前で、車を押していた一人の看護師さんが派手に転んでバス停で待つ乗客たちに笑われていたのを今でも覚えています。私は笑えませんでした。
拠点に車両が10台あるということは、毎日10組のチームが出来上がるということ。
毎朝その日のメンバー表が書かれているのですが、私と組む女性がスケジューラーに詰め寄る大声が聞こえてきます。
「なんで昨日もあいつと組んだのに、今日もあいつとなのよ!!」
入浴の仕事うんぬんではなく、そこに辿り着くまでの行程で、すでにチームの足を引っ張ってしまう存在である自分。申し訳なさでいっぱいでした。
それでも多くの人たちに厳しく優しく接していただき、鍛え上げられました。
「あいつと組みたくない」という声をひとりでも減らしていきたい、それが原動力だったかもしれません。
お風呂に入られたお客様から言われる「ありがとう」と同じくらい、一緒のチームのメンバーから「今日はあなたと一緒だったから良かった」と声をかけられるようになったのは何物にも代えがたい喜びでした。
一緒に働いていた先輩社員に教えられた言葉が今も念頭にあります。
「今日一日楽だったな」と思ったら、その分他の人たちが大変だったと思いなさい
自分のことよりお客様のこと、仲間のこと。相手本意に考える基本は、全て現場から学びました。
今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。
いいなと思ったら応援しよう!
