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外国人実習生受け入れの実情
まだまだコロナとの共生は続いていますが、以前よりも下火になってきたこともあり、街には人が再び集まり始めて、活気も戻り始めています。
活気が戻るということは商売を再開するところも増えるということで、超高齢社会の日本においては当然人材不足が発生します。
私たちのいる介護業界というのは、保険制度に基づいて事業運営をしているからこそ、どんな時でも利用されるサービスですし、国の定めた報酬額は確実に入ってきますから、ある意味不況には強い傾向があります。
ただ、その反面、他の産業の調子が上向きになった時に、人材がそちらに流れ始めたとたんにスタッフの確保が厳しくなっていきます。
2023年7月現在のヘルパーの有効求人倍率は過去最高の15.53倍。16社でひとりの人材を奪い合っている状態ということですよね。
ちなみに全職業の有効求人倍率は1.3倍くらいですから、介護業界における採用難の深刻さが分かるかと思います。
そういう状況ですから、当然介護の業界でも外国人を採用しようという流れになってはおりますが、海外からの「技能実習生」の受け入れというのは現実には「言葉の壁」や「資格の壁」以前に「制度の壁」があって、いざ働いていただくとなっても就業できるサービスが施設系に限定されてしまっているというのが実際です。
今後は訪問系のサービスも認可していくという方向で協議はされているようですが、まだ在宅へ訪問してケアをするサービスは認められていません。
そして、もちろん言葉の壁もあります。
あらかじめ日本語能力試験を受けていただいていますが、送り出す機関によって同じ技能実習生でも試験結果のレベルに違いがあったりします。
当社の場合は、制度の始まった4年前からまずはミャンマーからの技能実習生の受け入れを一部地域で始めました。
こちらの場合は、日本語能力が「N3」というレベルであったため、日常会話などにおいてはほぼ支障のない形で勤務についていただくことができました。
また、お国柄として国民の8割以上が仏教徒ということもあってか、敬老精神を持たれた方が多いという印象を受けており、日本における介護の仕事への親和性が高いと感じていますし、お客様や同僚からの評判もとてもいいです。
また独自のネットワークから、更に多くの仲間を募ってくださり、口コミを通して新たな人材も加わってくださっているというのもありがたいです。
その翌年から、今度はベトナムからの技能実習生を受け入れましたが、こちらは日本語能力が「N4」というレベルで、本来は日常会話に支障がないと言われていたのですが、いざお会いしてみると個人によっての差も結構ありましたが、片言のやり取り以外はなかなか厳しいというのが現実でした。
記録などで日本語を書くのは厳しいだろうからと、音声入力システムなども投資していたのですが、話される日本語自体が怪しい状態でしたので、機器を導入する意味はなかったというのを覚えています。
ただ、若くして国に旦那さんや我が子を置いて来日されるくらいの覚悟を決めていらっしゃる方がほとんどでしたし、こちらもお国柄的にはミャンマー同様に国民の9割近くが仏教徒ということもあって敬老精神をもっての介護という意味では親和性が高く、スタッフさんたちの人柄も申し分なかったです。
こうして海外からの技能実習生を受け入れて現場業務を覚えていただくわけですが、デメリットもいくつかあります。
それは、彼女たちに問題があるというものではなくて、制度の問題です。
まずは人員配置基準の問題。
人が不足しているから入職していただくわけですが、日本人とは違って「就労開始から半年間は人員配置基準の算入対象とならない」というルールがあるため、仕事を覚えていただけたとしても基準上の人不足の解消にはならず、いわば有償のボランティアスタッフがいるという状況になります。
その上で、月々の「支援業務委託費」というものが登録支援機関への支払いとして人数分発生します。
また、当社だけではないかと思いますが、実情として待遇面では日本人の従業員よりも優遇されているといっていいのではないでしょうか。
家賃も会社が負担していますし、母国との連絡は今はスマホでの無料のテレビ電話が主流ですからWi-Fiの設置は必須ですのでこれも会社として用意します。
家電セットも会社購入ですし、私が担当していた地方都市だと車社会でしたから、少しでも暮らしが便利になるようにと自転車も人数分購入しました。
これだけ受け皿を用意しても、本来の技能実習の目的というのは、「日本で学んだ技術を母国に持ち帰ること」が目的であるため在留期間は3年に制限されています。
今は、特定技能制度というものを活用して技能実習生から「特定技能」に切り替えれば、最長で5年間の在留期間をプラスすることが可能とはなりましたが、転職も可能となるため、実習期間の3年間でいかに今いる環境を好きになってもらえるか、そのための向き合い方が重要になってきます。
今は、特定技能人材となった元実習生たちに介護福祉士の資格を取得していただくことで、「介護ビザ」取得によるこの業界での長期就業が可能になる道筋をつけていきたいと考えています。
働く人が長く勤められるように快適な環境を整えていくというのは、誰に対しても同様に用意していかないとですね。
今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。
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