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意志の力
先日のコラムでは「前向きでいよう」とする意志について触れましたが、今回はその最たるお手本となる有名なエピソードについて。
京セラを創業して間もない頃の稲盛和夫氏が、「経営の神様」である松下幸之助氏の「ダム式経営」の講演を聞いたときのエピソ-ドです。
「ダム式経営」というのは、川にダムを作って水を貯めるように、企業も余裕のある経営をしようという有名な理論です。
講演が終り、聴講していた経営者の中の一人が質問をします。
「おっしゃるとおりですが、なかなかそれができない。どうすればダムができるのでしょうか。」
これに対して松下さんは、「まず大切なのは、ダム式経営をやろうと思うことですな」と答えます。
会場からは、「なんだ、そんなことか」と失笑が起こります。
しかし、その中で稲盛さんは大変な衝撃を受けます。
「そのとき、私は本当にガツンと感じたのです。何か簡単な方法を教えてくれという生半可な考えでは、経営はできない。実現できるかできないかでなく、まず『そうでありたい、自分は経営をこうしよう』という強い願望をもつことが大切なのだ、そのことを松下さんは言っておられるのだ。と」
そう感じたとき、非常に感動したということです。
稲盛さんの素直に感じ入るアンテナも優れていますし、その上で「そうしよう」と思う力もやはり大切です。
素直に受け止められない人は、失笑するだけでおそらく行動するに至らないばかりか、せっかくの講演を聴いた時間さえも無駄にしてしまうことでしょう。
なぜこのエピソードを取り上げたのかと言いますと、先日の会議である所長が、「スタッフにもっと向き合いたい」という話をしたからです。
その想い自体はとても素晴らしいことなのですが、実際に状況はそうなっているかというと、もう何年も同じようなことを言っているだけで、いつまでたってもスタッフと同じようにお客様のところに訪問ばかりしていて所長としての責務を果たしていません。
スタッフよりも現場稼働をしているから、当然スタッフに向き合う時間もとれていないですし、その上で所長業務をしようとするために長時間労働の問題もなかなか解消できない状態を続けています。
口では「こうしたい」と会議の場では言っているものの、本当に「そうしよう」とは思っていないということなのです。
意志が無いから、覚悟をもって決意していないから、いつまで経っても同じ状況をだらだらと続けているのです。
今ある環境は、自らの意志でそうしているだけです。
まずは、「ああ、そうだな」と信じることと、「よし、こうしよう」と決意すること。
この二つが「意志の力」の源であり、現実を変えるための原動力になるのだと思います。
今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。
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