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社長日記 2023年8月15日「映画『バービー』の公開をめぐる炎上騒動で思い出した20年前の記憶」

今日の日記は、弊社社長・千吉良がお届けします。


こんにちは。
ハガツサの千吉良です。

まだまだ残暑の厳しい日が続いていますが、皆さんはどうお過ごしでしょうか? 夏休みが明けた最初の土日でなんだかぐったり、もしくはもう夏休みが終わってしまう……!という悲壮感を抱えている人も多いかもしれません。

ハガツサではメンバーそれぞれが8〜9月の間で平日5日間、好きなタイミングで夏休みを取得することになっています。そのため、今週まで休みのメンバーもいれば、9月に入ってから夏休みというメンバーもいて、まだまだ夏気分は続きます(ふふふ)。

さて、皆さんはこの夏、いわゆる「夏休み映画」として公開された作品をご覧になりましたか?

私は『君たちはどう生きるか』と『ミッション:インポッシブル デッドレコニング PART ONE』を観てきました。ただ、いちばん公開を楽しみにしていた映画は、実は別の作品。大好きなマーゴット・ロビーが主演の『バービー』です。

原爆の象徴的なイメージとも言える「キノコ雲」とバービーの後ろ姿がコラージュされたミームによって、公開前から物議を醸してしまった同作……個人的にはバービーが築き上げてきた女性の社会進出への希望と、世界中の女の子たちに提示し続けてきた可能性に対する功績は大きなものだと思っていて、なんだか別の文脈で話題になってしまっていることについては、とても残念に思っています。

今回の騒動の発端は、アメリカでは「原爆の父」と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーを描いた歴史映画『オッペンハイマー』が、『バービー』と同時公開されたことに遡ります。

さまざまなファンアートが創作されていく中( #Barbenheimer でコラボ画像などを創作するムーブメントが起きました)で先のコラージュがバズり、そこに『バービー』の公式SNSアカウントが「忘れられない夏になりそう!」と便乗するコメントを残したことによって、世界中からバッシングを受けることになったのです。

怒りの矛先をどこに向けるべきか


ここで、本記事のタイトルに戻ります。

この『バービー』騒動を受けて、私は20年前のことを思い出していました。まだ、私が大学生だった頃のことです。

フランスに留学していた私は、クラスメイトの半分がアメリカ人、残りをスペイン人、韓国人、中国人、コロンビア人、ベトナム人が数名ずつ、という留学生用の授業を受けていました。毎回先生が用意した歴史の写真を見てディスカッションをする授業で、ある日、議題となったのが「キノコ雲」の写真だったのです。

「この写真がなんの写真だかわかりますか?」

先生の質問に対し、私を含めアジア人は全員「一目瞭然」。スペイン人の友人とコロンビア人の友人も「戦争関連」の写真であることは理解していました。

驚いたのは、10人近くいたアメリカ人の友人たちのうち、その写真がなんの写真かわかったのはたった1人だけ。残りはまったく想像もつかなかったというのです。

当時同じクラスにいたアメリカ人の友人たちは19〜22歳くらいだったと思うので、みんな大学生。なんの写真かわかったと申し訳なさそうに話してくれたアメリカ人の女の子は、「たまたま」興味を持ってとった大学の歴史の授業で習っていたそうで、そもそもアメリカの教育課程において、「絶対に勉強するもの」ではないと言っていました。

あれから20年も経っているので、その後のアメリカの教育カリキュラムがどうなっているのかはわかりません。ただその時は、第二次世界大戦について学ぶ際には「必ず」「世界中の誰もが」教えられるものだと思っていた原爆の悲劇を、当事者であるアメリカでは子どもたちに伝えない判断をした、という事実に衝撃を受けたのです。

「え、まじで?」と驚いて口を開けていた私を横目に、中国人の友人やコロンビア人の友人が次々と「信じられない!!」と怒っていましたが、一方で、「これって、彼女たちが嫌な思いをしないといけない話なんだっけ?」と頭の中で自問していました。

「知らなかったこと」に対して、そして責められて「過去の自分の国がしたこと」に対して、アメリカ人の友人たちが次々と謝罪の言葉を口にする。「え、でもあなたたちがやったことではないよね? 私も知ってるけど体験はしていないから、私たちが怒ったり謝ったりすることではないよね?」という話をしたことを覚えています。

少し話がそれますが、当時、ちょうどジョージ・W・ブッシュがアメリカ大統領に選ばれたタイミングで、アメリカ人のクラスメイトたちと街に飲みに出かけると、酔った現地の人たちから「お前らのせいで! ブッシュなんかを大統領にしやがって!」としょっちゅう絡まれました。

彼女たちはブッシュに投票したわけでもなかったし、それをいち大学生にぶつけるのもどうなんだろう? と思ってたびたび嫌な気分になったものです。

戦争は繰り返すべきではないし、そのために受け継がなければならない「知識」や「歴史」、「思い」はあると思います。そういう「教養」が、さまざまな立場の人、国、社会に対して「優しさ」を持つことにつながると、私は信じています。

一方で、時に大きなものへの怒りを、その中にある小さなもの、人にぶつけるのはやはり違うとも思う。そこには無知に対して生まれる「呆れ」「悲しみ」「怒り」もあるかもしれません。だけど、必ずしも「お前たちが悪い」「あいつらが悪い」という知識をずっと「自分事」として次の世代に引き継いでいくのも気が引ける部分があります。

お互いに悲しい過去はあれど、私(日本人)とアメリカ人の友人たち、そして韓国や中国の友人たちは、「今」でつながっていて、お互いが好きだし、手を取り合っていい未来を見ていくほうがいい。

少なくとも私たちは当時、誰かが失恋した時には一緒に泣いて、お互いの国の料理を披露しては盛り上がって、よく知らない音楽で一緒に踊って笑い合っていました。

『バービー』の炎上を受けてさまざまな意見が飛び交いましたが、作品自体の評価ではない、ほかの部分を切り取ってみんなが怒っているのはやっぱり悲しい。

だからやっぱり、早く映画を観て、すっごくよかった!と、私も声を大にして言いたいなと思います。




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