大海原に出ても尚
一緒に泳いだ海が、あまりにも心地良すぎて、
次の航海が不安になる。
環境も、温度も、乗組員も、全部。
でも、私達ならきっと、大丈夫だよね。
もうすぐ、専門学校に入学する。
全く勉強したことのない分野で、たった1人。
ここ7年間は内部進学ばかりしてきたので、
完全な初対面から始まる新生活は、不安ばかり。
どうしよう。友達が出来なかったら。
どうしよう。大阪に馴染めなかったら。
どうしよう。落ちこぼれ生徒になったりしたら。
「明日からの社会人、めっちゃ不安やわぁ」
「私の勤務地福島になってんけど。どうしよ」
もうすぐ社会人の友達が、次々に不安を溢す。
そういえば、この4年も同じこと言い合ったっけ。
華の大学生への不安を抱えきれなかった私達は、
多すぎる課題とタスクに消費された私達は、
将来への漠然とした不安を抱えた私達は、
不安そうな顔を見合わせては、食卓を囲んで、
重たすぎる不安をいつも半分こしたよね。
不安なのは私だけじゃないって、そう思えたのは
美味しいご飯を、みんなと一緒に食べれたから。
だから、この不安もさ。
これからも、ずっとずっと半分こしていこうよ。
少し距離があるけれど、すぐに会えないけれど、
この4年で、世界は案外小さいって学んだもんね。
海の広さなんて、大海原なんて、私達にはただの
水たまりなんだから。
この航海がどうか心地よい旅になりますように。
隣の水たまりを泳ぐ君の幸せを願って。