統合失調症の私が伝えたい5つの事Vol24

33 統合失調症の経過

統合失調症の経過は、「前駆期」「急性期」「休息期」「回復期」の4つに大きく分けられる。
 

前駆期よくみられる症状としては、不眠、食欲不振、不安や焦り、緊張、抑うつ気分、意欲や集中力の低下などがある。これらの症状は、鬱病や不安障害とも重なるために。統合失調症かを見極めるのは難しい。しかし、この段階で精神科を受診することはとても大切だ。症状を防いだり、早期発見・治療につながったりするからだ。私自身の最初の診断名も、抑うつ状態ではなくて、統合失調症だったのかもしれない。
 前駆期を経て、急性期へ移行すると、幻覚や幻聴、妄想や興奮などといった「陽性症状」が強く表れることがある。
 

幻覚には、「幻視」、「幻聴」、「幻嗅」、「幻味」、「幻触」などがあるが、統合失調によくみられるのは、「幻聴」である。私も、金色の光が見える「幻視」と、言葉ではないが、音が聞こえる「幻聴」を経験した。
また、妄想には、「被害妄想」、「誇大妄想」、「微小妄想」、「身体妄想」などがある。私は、誰かの話す事が自分の事を話されているような、「被害妄想」と、これらの日本の英語教育を何とかしなくては、というような「誇大妄想」を経験した。

急性期の強い陽性症状は1~2か月ほど続き、休息期へと移行する。
 急性期の激しいが症状が落ち着いてくると、無気力、抑うつ、倦怠感などの「陰性症状」が現われてくる。休息期の始まりである。休息期には、気力も体力も消耗した状態になり、脳の活動性も低くなる。この時期の患者は、薬物療法の影響もあり、一日中ボーっとしていたり、眠ってばかりいたりすることが多いが、十分な休息をとる必要がある。

回復期は、少しずつ安定感を取り戻していく時期である。リハビリテーションや、社会技能訓練、デイケアなどに参加して社会復帰を目指すのがよい。認知機能障害が現れやすいので、治療の継続は重要である。適切な治療を受けることで、およそ半数が、発症前の状態まで回復するとされている


34 統合失調症の治療

では、統合失調症の治療はどういったものなのだろうか?何が大切なのだろうか?
 

最も大切なことは、自己判断せずに、精神科を早期に受診することである。そしてその際、医師とのコュニケーションはとても大切である。医師や、治療方針や薬などに対して不信感があると、治療をスムーズに進めることができない。不明な点や不安に思うことがあれば 納得がいくまで、何度でも医師に確認することが大切だ。
 

統合失調症の基本の治療は、通院での外来治療が中心となっている。その治療は、薬物療法と、リハビリを組み合わせて行われる。
 

薬物治療の中心となるのは,「抗精神薬」と呼ばれる薬である。それは、脳内物質のバランスを調整することで、幻覚や妄想、興奮などといった急性期の激しい症状を鎮静化する働きがある。また、安定的な日常生活を維持するためには、急性期の症状が治まった後も継続して服用することが、とても重要である。
 

また、統合失調症には、リハビリも有効である。社会性や生活機能を取り戻す、「社会生活技能訓練(SST)」や、ゆがめられた思考パターンを修正する「認知行動療法」などのさまざまな療法や訓練方法がある。
 

統合失調症の治療というと、幻覚や妄想などの激しい症状ばかりに目が行きがちだ。でも、症状を消し去ることだけが治療ではない。病気によって生じている様々な障害を乗り越えて、QOLを向上させ、一人の人間としての全体的な回復を目指すことが、治療の本質と言える。


35 統合失調症の患者を持つ家族は、どうすればいいのか?

統合失調症の回復には、薬物療法と、リハビリ、それに本人の養生も大切だが、家族の協力と理解が欠かせない。
 

統合失調症と診断されると、多くの家族は、強い衝撃を受ける。「そんなはずはない」と否定をしたり、「育て方が悪かったのだ」と自分や配偶者を責めたりすることもある。
 

なぜそのようなことが起こるのだろうか?それは、多くの人が、統合失調症について、正しい知識を持ち合わせていないからではないだろうか?統合失調症は、怖い病気、人格が崩壊してしまう、一生病院から出られない・・・そんな誤解や偏見が、得体の知れない恐怖を引き起こしていると考えられる。
 

だが、統合失調症は、約100人に一人が発症している、身近な病気である。決して、人格が崩壊してしまう病気などではない。完治は難しいといわれているが、病気とうまく付き合って、社会復帰している患者はたくさんいるのだ。
 

まるで腫れ物にでも触るように、患者に接するのは、患者本人にとっても、家族にとっても良いことではない。
 

病院によっては、家族向けの教室を定期的にやっているところもある。病気を正しく理解し、受け入れることができれば、家族が自分を責めることも、患者本人の将来を悲観することもなくなるはずだ。

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