統合失調症の私が伝えたいことVol49

63 レストランでの仕事

しばらくは家事と、デイケアに通う以外は何もしなかったのだが、しばらくすると、また働きたくなってきた。今度はハローワークには行かなかった。家の近くのイタリア料理のレストランの貼り紙で、パートの仕事を見つけた。ホールの仕事だった。

面接でオーナーに、
「心の病気はないか?」
と訊かれた。
「ありません」
と、私は病気を隠した。そして採用されて、レストランで働くことになった。
 

レストランでの仕事は、朝10時から午後3時までの仕事だった。
「5時間の仕事ならいいんじゃないですか。家からも近いみたいだし」
と、前川さんも応援してくれた。
 

開店準備や、ホールの仕事、レジの仕事をほぼ一人でこなさなければならなかった。ランチタイムのピーク時は、とても忙しかった。I pod を使ってオーダーを取るのは、とても大変だった。レジも苦手だった。忙しくなると、何からやっていいかわからなかった。パニックになってしまうのだ。

最初は楽しく働けたのだが、だんだんと、心に負担がかかってきたというか、また少しずつ調子を崩してきた。失敗をすると、オーナーと店長にすごく怒られる。余計に委縮してしまい、ミスをしてしまう。初めの頃にはできていたことが、できなくなっていった。
(ミスをしてはいけない!)
と思うと、余計にミスをしてしまうという悪循環の繰り返しだった。
 

そんなある日、私はオーナーに、ホールの隅へと呼び出された。
「暮島、お前、病気があるねんやろう!なんで嘘つくねん!」
オーナーは大声で怒鳴った。お客さんがびっくりして私たちを見た。
「子供の時に、お母さんから、嘘をついたらアカンって教えてもらったやろう!」
オーナーは、また大声で言った。聞いているのが辛かった。
「辞めさせてください」
そういうのが精いっぱいだった。
「おう。やめろ」
「もう帰ってもいいですか?」
私は聞いた。
「おう。帰れ、帰れ!給料は振り込んでおいたるさかいに!」
そんなオーナーの言葉を背に、私は逃げるように、アパートに帰った。辛かったし、悔しかった。好きで病気になったのではないのに・・・涙がこぼれた。
 

私は、前川さんに電話した。
「辛かったでしょう。ゆっくり休んでください。暮島さんに合う仕事がきっとありますよ」
前川さんは慰めてくれた。少しほっとした。

前川さんとの電話を切った後、生活保護のケースワーカーの橋本さんから電話がかかってきた。私はオーナーとのやり取りを話した。橋本さんは、
「それは嘘ではありません。言わなかったことと、嘘とは違います。」
と言ってくれた。
「ちょうど家庭訪問の時期なので、来週中にも暮島さんのお宅に伺います。その時に今後の事を話しましょう」
と言ってくれた。少し気分が落ち着いた。


64 チャレンジワーク

次の週に橋本さんが、アパートに来てくれた。
「こんなプログラムがあるのですよ」
そう言って、橋本さんは一枚のチラシを見せてくれた。「チャレンジワーク」とそこには書かれてあった。

「京都市の社会福祉協議会がやっている、障害をオープンで、就労体験をしていただくプログラムです。仕事内容や、職場も選んでいただけます。働く時間も週1時間から6時間までで選んでいただけます。このプログラムに参加されるのはどうですか?」
と橋本さんが言ってくれた。社会福祉協議会から研修費として、週1時間から3時間までなら、時給500円。週4時間から6時間なら、時給600円が出るという。研修費は少しの金額だったが、障害オープンで働けるというところに魅力を感じた。イタリア料理店で、病気を隠して働くことに懲りていたのだ。

「やりたいです。どうすればいいですか?」
私は、聞いた。
「まず、主治医の先生に許可をもらって下さい。それから、区役所で保健師さんと面談をして、社会福祉協議会の担当の方と面談をしていただきます。それから、暮島さんのご希望をお聞きして申し込んでいただいて、施設の見学に行っていただきます。利用して頂くまでには少し時間がかかりますよ。大丈夫ですか?」
「はい!大丈夫です。ありがとうございます。」
なんだか、少しだが、希望の光が見えた気がした。


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