輝詠SS詰め合わせ その一

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noteで連載していた輝信様と詠心の恋『笛の音の邂逅』と『旅の終着』の番外編です

ツイッターで公開した140字SSを再掲しています。お題はこちらからいただきました

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艶めかしい吐息が部屋に響く。詠心は酸欠で頭がぼうっとなったまま、輝信からの口吸いを受け入れていた。それは熱く長く深いもので、詠心にとって何よりも幸せな行為である。
――いっそ、そのまま吸い尽くされてしまいたい
この思いに気づかれたのか、輝信はニッと笑った。

『密かな欲望』

「設楽様、あの……そんなに見られると眠れないのですが……」
「気にするな。眠いなら寝ていいぞ」
そう返すと詠心は輝信に背を向けて丸まった。詠心にとって居心地が悪いのは察しているが、それでも強引に泊まらせたのだ。
「ちょっとくらいこっちを向いてくれや」
寝顔くらい見せてほしいのに。

『もっと見せて』(お題メーカーより「欲張りだからもっと知りたい」)


今日の夕餉がいつもと違った。
見た目は似ているが煮物や味噌汁の味が違うのだ。
「輝信様、お味は如何ですか?」
「美味い。だが味がいつもと違うな。誰が作ったんだ?」
「詠心様でございますよ」
輝信は味噌汁を飲み干してから詠心を見た。
「これ、毎日でも作ってくれないか?」

タイトル無し(お題メーカーより「Marry me?」)


まだ憶えているのは知っている。人間、大事だった人を忘れられるものではない。詠心だって同じだ。そして輝信のかつての想い人がどれだけ有名で、どれだけ影響を与えたのかも知っている。それでも、例え一年のうちの一日だって譲らない。もう輝信の視線も心も奪わせない。
―これが嫉妬というものか―

タイトル無し(お題メーカーより「僕を見てくれ」)

輝信は飛び起きた。いつも隣で寝ている筈の詠心の姿が無かったからだ。城中を走り回ってから庭に出てようやく探し求めていた影が見えた。
「設楽様?どうかしましたか?」
輝信は勢いのまま詠心を抱き締める。
「今日は夜風が心地良いですね」
輝信の不安を知らない詠心は呑気な声で言った。

タイトル無し(お題メーカーより「君がどこかに行ってしまいそうで」)



原作は葛城 惶さまの『非天の華』です


原作……葛城 惶さま(@1962nekomata)

イラスト……松本コウさま(@oyakoukoudesu1)