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キャリコンことば辞典その14:「確証バイアス」と「否定バイアス」正当化?それとも危機回避?

日常生活の中で切っても切れないのが「バイアス」です。
その中でも、「確証バイアス」と「否定バイアス」は、どちらも逃れるのは難しい。

どちらも認知バイアスの一種ですが、私たちは、どうしても「バイアス」を100%排除することが難しいのも事実です。

この記事では、キャリアコンサルタントの視点から「確証バイアス」と「否定バイアス」の違いと効用について考察します。

「確証バイアス」と「否定バイアス」の違いって?

「確証バイアス」と「否定バイアス」は、どちらも認知バイアスの一種になりますが、その作用機序と結果が異なります。

確証バイアスと否定バイアスの違い

・「確証バイアス」は自分に都合いい情報に目がいくこと

「確証バイアス」は、自分が持っている既存の信念や仮説を裏付ける情報を優先的に探し、解釈し、記憶する傾向のこと。
自分が信じたいことを裏付ける情報を探したこと、誰もが一度はあるのではないでしょうか?

作用機序としては、
①自分の信念に合致する情報に注意を払い、重視。
②自分の信念に反する情報を無視したり、軽視したり、否定する。
③曖昧な情報を自分の信念に合うように解釈する。
その結果、自分の信念がより強固になり、客観的な判断が歪められてしまいます。

例えば…
・特定の政治家の支持者が、その政治家の良いニュースばかりを探して信じる。
・ある健康食品を信じている人が、その効果を裏付ける情報ばかりを集める。
・コロナ禍の頃に出てきた陰謀論を盲信していた人の行動
などでしょうか。

・「否定バイアス」はネガティブな情報に目がいきがち

「否定バイアス」は、ネガティブな情報や出来事を、ポジティブな情報や出来事よりも強く認識し、記憶する傾向のこと。
これも、誰もが日常的に経験したことがあるはずです。

作用順序としては、
①危険や脅威など、ネガティブな情報に注意を払いやすい。
②ネガティブな出来事を、ポジティブな出来事よりも記憶に残りやすい。
③ネガティブな情報を、ポジティブな情報よりも重視する。
その結果、リスク回避や危機管理に役立つ一方で、過剰な不安や悲観的な思考につながる可能性もあります。

例えば…
・飛行機事故のニュースを見て、飛行機に乗るのが怖くなる。
・悪いニュースばかりを見て、世の中は危険だと感じたり、悲観する。
などでしょうか。

「確証バイアス」と「否定バイアス」はキャリアコンサルティングでどのように影響?

キャリアコンサルティングにおいて、「確証バイアス」と「否定バイアス」は、クライエントとキャリアコンサルタントの両方に影響を与える可能性があります。
それぞれのバイアスがどのように作用するか、具体的な例を交えて説明します。

・クライエントへの影響

「確証バイアス」は、クライエントが特定の職種や企業に対して強い先入観を持っている場合、その考えを裏付ける情報ばかりを集め、客観的な判断を妨げる可能性があります。
例えば…
・「自分は営業職に向いている」と思い込んでいるクライエントが、営業職の成功事例ばかりを探し、向いていない可能性を示す情報を無視する。

また、過去の成功体験や失敗体験にとらわれ、新しい可能性に目を向けられなくなることが考えられます。
例えば…
・:以前の職場での成功体験から、同じ業界・職種に固執し、新しいキャリアの可能性を検討しない。

「否定バイアス」は、相談者が自己評価を低く見積もっている場合、自分の能力や可能性を否定する情報ばかりを集め、挑戦を避ける可能性があります。
例えば…
・「自分には〇〇のスキルがない」と思い込んでいる相談者が、スキル不足を証明する情報ばかりを探し、スキルアップの機会を逃す。

また、過去の失敗体験にとらわれ、新しい挑戦を恐れることがあります。
例えば…
・以前の転職での失敗体験から、転職活動自体を避け、現状維持を選択する。

・キャリアコンサルタントへの影響

「確証バイアス」は、キャリアコンサルタントが特定のキャリアパスを推奨する場合、その考えを裏付ける情報ばかりを集め、相談者の多様な可能性を見落とす可能性があります。

例えば、相談者の発言に対して、自身の先入観や過去の経験から得た情報を優先して解釈してしまうなどが挙げられます。

「否定バイアス」は、キャリアコンサルタントが相談者の能力や可能性を低く見積もっている場合、否定的な情報ばかりを集め、適切な支援を提供できない可能性があります。
例えば、相談者の弱点ばかりに注目し、強みを見落としてしまうことなどでしょうか。

クライエントもキャリアコンサルタントも人間。特にキャリアコンサルタントは客観的視点を

キャリアコンサルティングでは、相談者とキャリアコンサルタントが協力して、バイアスによる影響を最小限に抑え、客観的な視点からキャリアプランを検討することが重要です。
どちらも人間である以上、バイアスからは逃れられません。
少なからず、何らかの思い込みや先入観を持っているでしょう。

いくらキャリアコンサルタントが養成講座で「クライアントをあるがままに受け入れましょう」と教えられ、実践しようと心がけていても、無意識のうちにバイアスがかかることは珍しくありません。

それでも、私はキャリアコンサルタントとしていつも客観的視点を持ちつつ、クライエントに共感できるよう少しだけ自分の余力を残して対応している気がします。
性格や気質にもよるので、これが正しいのかは分かりませんが…。
それでも、今日も全力でクライエントに向き合えるよう自己を整え、しっかりと話を聴くように心がける毎日です。

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