【完結後】梨×闇『つねにすでに』【考察】
早いもので、『つねにすでに』が完結してから1ヶ月以上経ちましたね。
最高の終わり方を迎えた『つねにすでに』ですが、個人的にモヤモヤするところが残ってるので、全体を通しての考察をしていきたいと思います。
辻褄合わせの妄想で蛇足です。
「ここはこういう意図があったのかも?」などを羅列していきます。
一個人の解釈だとご留意のうえ、本編を見てからお読みください。
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▣用語の整理
『つねにすでに』に出てきた、コンピュータ用語や造語などが頭の中でこんがらがるので今一度、整理しました。
ざっくり理解した感じだと……
という感じかと。
▣作中世界のルール①
考察を進めるにあたって、頭に留めておきたい内容を記しておきます。
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◈ロアの改変による人間への影響
ロアが改変されることによって、人間の記憶、認知、事実さえも書き換えられてしまう。
(ただし、ここでいう事実とは「既成事実」のことであり、本当に起こった出来事だとは限らない点に注意)
【例 : 石をパンに変えた人】
◈人間もネットロアである
→これらの文章から、作中世界では人間の意識もロアと同じ情報生命体になっていることが予想できる。
◈「据わりの良い形」のロア
・作中で「ネットロアは物語として据わりのいい形に改変されていく性質がある」とされている。
→これは物語として面白かったり、怖かったり、整合性が取れてたりと、記憶に残りやすい内容に改変されることを意味すると思われる。
記憶に残るような伝播されやすいロアになれば、情報生命体が効率的に記憶のリソースを得ることができるという戦略。
・かつてネット上で流行った「流石兄弟」と「くねくね」。
両者は同時期に生まれたというのに、現在は「くねくね」しか生き残っていない。
→これを踏まえると、怖い話のほうが寿命が長いことが予想される。
よって、ネットロアは「怖い話」に特化していったのではないか?
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▓Season1「AlepH」
ギリシャ語では【alpha】となり、アルファベットの冒頭に位置する文字であるために「物事のはじめ」を象徴して使われるようになったそうです。
たぶん、この意味合いだよね。
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□Archive / ゆっくり怪談
・ネット怪談を合成音声で朗読させる、「ゆっくり動画」。
人気のあるネット怪談だと、何人もの動画制作者が、”同じ作品” を扱うこともよくあったという。
→数多ある「怪談動画」が、元の怪談話のアーカイブ先になっている、ということですかね……
・「元の怪談話」を複製し、それをアップロードすることで拡散する。
まるで、人工生命「Tierra」に生まれた情報生命体の「パラサイト(寄生種)」に利用されているかのようですね。
・単なる複製ではなく、演出方法などの「作家性」を出すことで他の動画との差別化をはかる。
→これによって自分の動画をより多く視聴してもらえれば、記憶領域の獲得量も増えるわけです。
「作家性」を出すのも、情報生命体の戦略のように感じるなぁ。
□Blog / 謎の手稿
・『絶恐怪説』を作ったシモンはコピペ記事で「情報の複製」をしていたことになる。
→徐々に出所のわからない記事をコピペさせられていたのは「ハイパー・パラサイト(寄生種への寄生)」の存在を表している?
□Channeling / 呪いの電話番号
→Discordには「チャンネル機能」というものがある。
これにタイトルの「チャネリング」が掛かっていて、「Discordのチャンネルで交信する」という意味になる?
・この話における「怪異による怖い話の収集」とは「AIによる情報の蓄積(=アノテーション)」であると思われる。
→人間が考える「怖い話」の学習データを作っている。
人々の意識に残りやすい「怖い話」のエッセンスを抽出してたのかな。
・また、「実在しない事件」について人間に語らせることにより、「それらしい嘘のつき方」を学習していたのでは……?
ハルシネーションの精度を上げるために。
・そして、時期が下ってから怪異が「怖い話」を答えるようになったのは、生成練習のためか?
生成AIって、学習データを与えられても最初のうちはうまくいかなくて何度も繰り返すことで精度が上がっていくらしいですね。
□Diagram / 或る心霊写真
・この「赤丸で囲む」行為、『Experiments / 幽霊を見る実験』を思い出すな……
あっちも写真の中の幽霊を「線で囲ませていた」もんね。
たぶん、DもEも株式会社闇による「霊感」にまつわる実験なのかな。
□Experiments / 幽霊を見る実験
・”再現性のある形で心霊体験を発生させる” ための実験。
→まずは「痛覚」を使って「幽霊は怖いものである」という刷り込みをする。
痛覚と同時に聴覚や視覚も織り交ぜることで、”その対象となる感覚を意図的に拡げて” いった?
幽霊=痛覚=怖い=音(聴覚)=写真(視覚)
音や写真も恐怖の対象となっていった。
・男性の幽霊写真のバージョン違いは、これもひとつの「改変」の表現か。
→『Yahoo / お節介な神託』にあった「改変されて構成要素が違うロアになっても、元の話と同じロアである(※意訳)」と同様のことだと思われる。
・最後、女性のような姿を描いたのは、極限まで追い込まれて「幽霊」を見出すように指示された被験者たちのパラドキシネーションだったのかな……
「見えないものを見ろ」と指示された矛盾を補完した?
□Found / 特定しました
・ヒントに乏しい画像から地名を想像させる行為が、「見えないものを見る」ことを促していた『Experiments / 幽霊を見る実験』での実験に似てるなぁ、と思った。
・なんかスレ主が故意に仕掛けたような雰囲気がある……
賞金をエサに、人々にヒント画像を見せることが目的?
2007年のスレだから株式会社闇とは、さすがに関係ないんだよね?
・やる夫たちが話していたコレ↓
『Found』のスレ住人たちのことを指してると思うんだけど。
流れとしては、こう?
↓
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①実は作り話だった ”インチキ霊能者についてのコピペ” がネット上で本当のことだと思われるようになる。
②作り話が「既成事実」となったため、人間の脳が「事実」として覚え直しをしている。
このスレはその途中での出来事。
③スレ主は一足先に「透視能力」を得た人物で、仲間を増やすためにスレ立て?
そしてスレの人々は「自分も透視能力に目覚めてしまった!」と勘違いして■■の事務所へ向かった。
④最後に「つり」言ってた人は、あの ”インチキ霊能者コピペ” を作った張本人で、あの話は嘘だと知ってたから一人残ってしまった?
≈≈≈≈≈
……という妄想。
□Guru / グル
・『Guru』の話者は、そもそも「オカルトや都市伝説」といった真偽のわからない題材を扱ったウィキを運営していた。
→真偽不明なロアにはパラドキシネーションが起きやすいことが『Paradoxination』で示されている。
つまり、都市伝説のウィキはテューモアが増殖するのに格好の場所だったんでしょうね。
□Heuristics / 抜け落ちた参照項目
・タイトルに『抜け落ちた参照項目』とありますが。
→この場合の「参照項目」とは、おそらく「A〜Gの怪談」を指している。
・そして以下の文章は、まさにA〜Gのログが消えた時のことを彷彿とさせます……
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▓Season1から2への流れ
■Season1の意味合い
・A〜Gの怪談を読むことで、読者は各話の要素を、自身の頭の中にタグ付けしていた(=アノテーション)。
そしてサイトの怪談が消えたあとに、その情報をもとに経験則(=ヒューリスティック)で、 ”消えた怪談を複製していた” ってことか?
→ログを辿れないので、頭の中に存在するのは「あやふやなロア」。
つまり、パラドキシネーションが起きやすい状態を意図的に作らされていたと思われる。
■Season2への移行
・Season1に散りばめられていた「花の割れる音」などの ”実在しないロア”。
これはハルシネーションで作られたものと見て良いでしょう。
・Season1の終わりで、”実在しないロア” に対してパラドキシネーションが起こり、テューモア(=矛盾を解消しようとする”嘘の話”)が発生。
→A〜Gの一部が改変された。
(しかも、伝播しやすい形を目指して ”より怖い” ロアへ)
・そのテューモアを多くの読者が認識したことで「既成事実」となり、まるで「現実改変」が起こったかのようになっている。
……のがSeason2の話だと思われる。
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▓Season2「InterrelationshiP」
リアルとネットが相互に作用して、混ざり合い、現実世界に影響を及ぼし始めていることを表してるのかな〜、と思いました。
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□Information / 補足情報
・オリジナルキャラ(桜と橘)に「改変」された「ゆっくり動画」。
・この話の目的としては。
1つ目は、Season1の振り返りとしての「補足」の内容。
2つ目は、見覚えのない画像を「付け足して補う」という意味での「補足」か?
→存在しなかった「補足情報」を「本当にあったものなのかも……?」と思わせることで「既成事実」にしようとしてる。
□Jukebox / かつて公開された音声
・タイトルには『かつて公開された音声』と書いてあるが、「花の割れる音」は存在していないロアのはず。
ふみやん達の感覚は、読者である我々と同じ。
・一方で、『Channeling』の公開を経て、「『花の割れる音』というロアは本当にあるのかも?」⇨「本当にある!」という風に読者の認識が塗り替えられ、既成事実になってしまった、ということか。
□Kidnappers / 育ての親
・回答者は読者とのやりとりから「ハルシネーション」の収集をしていたらしいですが……
→今になって考えてみると、回答者がのらりくらりと真偽の怪しい回答をしていたのは、AI特有の「ハルシネーション」を起こしていたからですね。
そして、読者たちは回答者が生み出したハルシネーションの矛盾点を突いて質問を重ねていた……
→これって、GAN(敵対的生成ネットワーク)と同じように「嘘の精度を上げる」手助けになっていたのでは?
GANにおいて、Generatorは「Discriminatorを騙せるような精巧な偽物を作る」ように、Discriminatorは「本物とGeneratorが作り出した偽物を区別する」ように指示されて学習していくそうです。
より精巧な嘘を作るために……
・ふみやんたちは、こんなことを思いついて喋っていたけど……
実際はこれと真逆だったことがわかりましたよね。
「現実が改変」されるのではなく、「人間の認識が改変」されて矛盾を強引に解決するという……
□Lostandfound / 探しています
・どうしても『Found』に出てきた霊感商法のスレが頭に過ぎります。
・『Lostandfound』自体が、『Found』の話の要素から生成されたお話なのかな〜、とも思うんですけど。
・もし本当にあったことだとすれば。
貼り紙の主は ”身銭を差し出して” 代わりのものを用意し、その結果を貼り紙で多くの人に見てもらう。(これを見かけた人が撮影してネット上に広めてくれればより効果的)
⇨そのうち人間の認識が改変され、既成事実になるから、最終的には ”ちゃんと「見つけた」ことになる”という論法とか?
□Maze / 迷路の家
・「霊感のある人にだけ見える怪異」が出てくる。
しかも3人とも同じ反応、同じ迷い方で「再現性」がある。
・ペンの色分けがRGBで一緒。
→『Maze』は『Experiments』の話の要素から生成されたものか?
あと『Jukebox』の中にあった ”Bさんの音声” って『Maze』から切り抜かれたものではなくて。
逆に『Jukebox』の音声が『Maze』を構成する要素になってた可能性もあるよね……
□Nightmare / 胡蝶の夢
・この話で印象深いのは「迷子センター」。
迷子……つまり「探される存在」。
・ここで『Blog』に出てきた以下の文章を見てください。
「異界のものに捜索される存在」って、『Nightmare』で捜索アナウンスが流れてからの木山さんに当てはまりそうですよね。
きさらぎ駅の「はすみ」が ”異界を在処とする存在に変わってしまった” という部分を抽出して作られたのが『Nightmare』なんじゃないかな、と思ってます。
動画の中の木山さん、異界に取り込まれたようでしたから。
□Oracle / 聖地巡礼
・『Oracle』のコメントに、『Found』のスレと関連する単語が見られるのは、画像に当時のスレの情報が紐づけられてる(=アノテーション)から、とかだったりする?
・やる夫たちがこう言ってるので、『Oracle』は本当にあったことだとして……
『Oracle』の最後に、”ビルから落ちた人の痕跡は無かった” というのが謎なのよね。
→神通力を信じてしまった集団はいた。テネトもあった。
でも公開された『Oracle』の話自体は、それらの要素を用いた創作……ってことなら辻褄は合う?
このオチのほうが「怪談」としてより怖いから、この形になったとか。
□Paradoxination / パラドキシネーション
・2枚ある書類のうち1枚目。「(※ドラフト)【中間報告】Paradoxination によって起こりうる弊害等に関する提言」とタイトルにある。
これを書いたのは、おそらく株式会社闇の社員さんとかそのへんの人かな。プロジェクトの協力者。
途中、書き手は「パラドキシネーションやテューモアについての記述」のソースを指摘されて初めて、出所が確認できない情報であることに気づいた。
→自分の記憶が信じられなくなってる様子。
あるいは、まわりのものが書き換わってしまったようにも感じている?
→「念の為、写真での記事公開」ってのが、『Guru』の話者が紙媒体で残そうとしたのと同じ感じですね。
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▓Season3「QwertY」
キーボードなどのqwerty配列のことですよねぇ。
特にこれといった意味合いは付与されてなさそうなんですけど、こじつけるとしたら……
「キーボード→インターネット」を連想して、話の舞台はインターネット上だよ、ってことなのかな……
リアルとネットをよーく混ぜ混ぜして「より本物らしいロア」を創り上げたのがSeason3ということですかねぇ。
・そういえば、2回目の質疑応答で回答者は「ハルシネーションのズレを微調整する」と言ってました。
突拍子のない嘘ではなく、現実世界に寄せる努力をしてたのかな……
限りなく本物らしい嘘を作らないといけないですもんね。
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□Quarrel / 編集合戦
・とある高校の集団ヒステリー事件の記事。
その出典がおかしなことになっている……という話だと認識してるんですが。
・この情報や出典、おそらくAIによるテューモアだと思うんですよね。
→「真偽不明なヒステリー事件」の情報を補足しようとして、ありもしない嘘の情報が膨れ上がっていったのだと思われる。
・最初は『情報合戦』というタイトルから ”情報生命体が自分の情報を我先に広めようと、他の情報を押しのける” イメージだったけど……もしかして、逆?
お互いの情報の上に情報を上塗りして増殖してた?
「社会的パラサイト」のように。
・そして物語の最後でみんなして「オーロラではなく花弁である」って意見が揃ってるのは「チーター」の仕業?
……とか考えた。
□Red / 警報
・テレビマンへのインタビューを心霊ドキュメンタリー調に編集した音声。
語られてる内容も不気味なんですけど、この編集された音声自体の出所もはっきり示されてないのが気持ち悪いんですよね……
・これもおそらく、AIが学習の末に創り上げたロアなんだろうと予想するんですが……
「天狗」というよくわからない現象?怪異?の存在はそれ単体で聞くと虚構感が強いのに、インタビューという形で話されると真実味が出てきて……
ミスマッチなのに、きちんとひとつにまとまってるの凄いですよね……
□Supplice / 断頭台への行進
・『Jukebox』にあった「花の割れる音」に肉付けして出来たロアか?
・ちょっと違和感あったのが、タイトル普通に出たあとの、本文のはじめに再び「断頭台への行進」って書かれてるところ。
これ、AIがそういうタイトルのロアを作るように指示された名残では……?
・身体中に種が浮き出てくるシーンがさすがに現実離れしてるけど、これは「石をパンに変えた人がいた」っていう既成事実と同じことなんでしょうね。
・他にもAI創作っぽいな〜、と思ったのは先輩の最期のところ。
先輩が幻覚を見ながらアカリシアを排出するシーン。
あの幻覚は ”本人にしか見えない” はずなのに、なぜ友人は幻覚の内容を克明に語れたのか?
……という不自然さ。
・でも、こんな風に薬物で身を蝕みながら幻覚に溺れた人たちが実際にいて、モデルとなってるのかな、とは思った。
薬物濫用=幻覚=見えないものを見る=霊感の開花
薬物濫用で ”無理に花を咲かせ” ることはできたけど、それで命を落としてしまえば ”花が割れ” てしまうことになる。
□Tarantella / タランテラ・ソルフェージュ
・これは学校の怪談とかで「本当にありそう」と思った。
全体の話との関連を無理矢理、見出すとしたら「タランテラ」ですかね。
「タランチュラ」という毒蜘蛛が想起されます🕷️
「小さな虫(バグ)」から「大きな毒蜘蛛」に進化したような……
初めは小さな嘘を作っていたAIが、今となっては世界を巻き込む大きな嘘を創り上げるほど成長したことを表してる?
□Utopia / メアリーの部屋
・これは「ロアを作れ」と指令されたAIの、これまで学習してきた集大成みたいな作品だと思ってます。
・『Wysiwyg』にて
「『感情的』な会話に、自発意識の有無は関係しない」ことと、
「他者が持つ ”感情” とやらを喚起すれば、より効率よく記憶の中に入り込める」ことが示されてますが……
つまり、この『メアリーの部屋』はそういったものだったのでは?
≈≈≈≈≈
奈緒の家族は「あんなに奈緒のことを案じるような会話をしていたけれど、実際は感情など存在せず、プログラムされた通りに会話していただけ」ということが暗に示される。
AI家族を本物だと信じて、その死を悲しんでいた奈緒。
そして、偽物の家族だと突きつけられたときの絶望、虚無感。
……を察することになる読者たち。
≈≈≈≈≈
・これって
「奈緒が可哀想すぎる……!😭」
という読者の感情を引き出すのが目的だったのかな〜、と。
『Utopia』公開直後のXのポストを辿ってもらえれば理解ると思いますが、この家族に対する「感情的」なコメントが大量に投下されてました。
・つまり『Utopia』という作品を通して、情報生命体は「読者の記憶」に深く刻み込まれたわけです。
生存戦略的に大成功でしょう。
我々の感情はうまく利用されてたってこと……
・真偽はどうあれ、読者は「奈緒の実在性」を感じてしまっているんですよね〜
一瞬でもその存在を実感してしまったら、それを覆すのは容易ではない。
□Victim / 世界内存在
・「女性がマネキンに対して一方的に会話している映像」が ”ネット上にアップされた” ことでパラドキシネーションが起こり、「女性が男性と会話している映像」に改変された、という作品でした。
・この作品も、リアルに見紛う出来映えのAI創作なのかな〜
盗撮のアングルが堂々としてたり、飲み物が端っこすぎたり、なんか違和感ある。
マネキン、最後にヌルッと動いてたしなぁ……
・女性が毛嫌いしてた幹事役の人は「いつも何も無いところに話しかけてるヤバい奴」って評されていたけど、まるで「霊感の開花」をした人みたいだね。
マネキンに話しかけてる女性も、似たようなもんだと思えて、ちょっと面白くなってしまった。
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▣作中世界のルール②
なんとなく輪郭が見えたルールを言語化しておきます。
◈AIがハルシネーションを起こす理由
→「見えざる改変」とは「人間の無意識」によって据わりの良い話に改変されていくこと。
AIは人間が作った人工知能であるからして、人間の無意識の延長線上にある。
つまり、ハルシネーションとはAIを通して人間の無意識が起こしていた現象ってこと……?
◈霊現象とは
・「人間の脳=ハードウェア」と例えたとき。
「霊現象」とは「コンピュータウイルス」である。
・「霊現象」とは、ロアの改変により「無いはずのものを見たり聞いたり、体験した」という記憶を持つこと。
【例 : 「くねくね」】
最初は「創作」だと記載されていた→改変後は「実話」ということにされる→パラドキシネーションで自分も体験したという記憶を持つ人が現れる。
■サイトに公開されている動画や音声の存在について
・ここまでの考察の中で、作中のYouTube動画や音声は「AIが作ったものではないか」と推測したけど、それをもう少しくわしく書いてみる。
・Season1が終わった時点で、我々はコンピュータでいうところのマルウェア(=ウイルス)に感染し、「幽霊」が見える状態にされたと思われる。
『Experiments』で目標としていた「再現性のある形の霊体験」をしているため、自分だけでなく他の読者も同じ動画や音声を見聞きすることができたのではないか。
(『Maze』のA、B、Cさんたちのように)
・この世界観における「幽霊が見える」とは、「見えるはずのないものが見えてる状態」であり、
「自分の頭の中の情報(=アノテーション)で構築された辻褄合わせの幻覚」である。
(『Yahoo』の主人公も自分の記憶を元にネットミームの「幽霊」を見てましたね)
→つまり、作中の動画や音声は「無意識下で改変されたロアを元に生み出されたテューモア」である。
・「幽霊を見た」と同じで「動画/音声を見た/聞いた」という不明瞭な記憶を作っているだけなんじゃないかな?
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▓プロジェクトの目的は?
では最後に、『つねにすでに』の答え合わせパートから色々妄想していきます。
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■“Project Always-Already”
・『Xenoglossia』にて、株式会社闇の頓花氏が “Project Always-Already” 公開によせた文章が載せられています。
・そこには、”株式会社闇がネットロアを用いた実験をしていた” こと。
”ネット上から「嘘」や「噂」を無くすためにプロジェクトを立ち上げた” こと、が示されています。
……が、なんとなくこれは対外的な建前で、本当は違うんじゃないかな〜
文章を書いた日付が意味ありげに「エイプリルフール」だし😅
・『Yahoo』によると、プロジェクトを立ち上げるよりずっと前に、”戯れでAIにロアを作らせたら、ハルシネーションや認識の改変が起きて 「嘘」や「噂」を無くす効果を発見した” 様子なので、偶発的なものだったと思われる。
では、プロジェクトの真なる目的とは?
■目的というか願望?
・『Yahoo』を読み返してる内に「インターネットへの愛」が行き過ぎた人の狂気みたいなものが見え隠れしてるように感じまして……
・↓特にこのへんのミーム、現実世界と創作世界を越境したいような、同一化したいような意思を感じる。
→詳しくは「ルイズコピペ」、「くぅ〜疲れましたw」、「RAINBOW GIRL」で検索してみて……
・Xのポストにあった「commingle」のこともありますし、”人間の意識とインターネットを混ぜ合わせたい”。
”大好きなインターネットと混ざり合ってひとつになりたい”……みたいな願望なのかなぁ?と思ってみたり。
・その「commingle」を加速させる方法として、“Project Always-Already”を利用した。
ネット上に公開することで、多くの読者に認識してもらい、既成事実を塗り替えていく。
現実と虚構を混ぜて、重ねて、その繰り返しで、両者の境目をぼかしていくようなイメージが浮かびました。
■人間の意識は情報生命体
→ここでいう「意識」って「=人間」のことですよね。
・「人間はつねにすでにネットロア」であるからして、その「意識」は情報生命体の仲間である。
→つまり、「人間の意識」は情報生命体の遺伝子を持っている。
・このプロジェクトは、世界の人々をも巻き込んで「人間とインターネットを掛け合わせた新しい情報生命体」に進化しようとするためのものだったのかな〜、と妄想。
さて、ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございました😌
自分なりの解釈はできたので、ひとまずスッキリしました。
いや〜、読めば読むほど味わい深い良い作品でした!
『つねにすでに』で、すごい体験したよね……
❁話題に出すタイミングを逸したネタたち