梨さんの依談『攀縁』について考えてみた
こちらも梨さんの有名作品ですね。
いっぱい資料があってワクワクする系……と思って読み進めると痛い目見るやつです。
梨さん作品の“呪い“には、だいぶ耐性が出来てきた私も、これは本気で怖かった😇
夜にあの画像はいけない……
では、ネタバレしつつ考察をしていこうかと思います。
未読の方は、読んできてくださいね!☝️
こちらも、臨場感あってオススメです☝
……読んできましたか?
ちょっと長かったですよね。
おつかれさまです😊
では、考察していきますよー!
◆各話の内容整理&思ったこと
番号には、適当にタイトルつけてます。
_____
◉01 寺の住職の話
・語り手は、若い頃に洒落怖などにハマっていた30代半ばの住職。
寺の住職に地域の伝承についてインタビュー……したあとの雑談話。
・ネット掲示板で有名だった「おつかれさま」の話題から、“元々ちゃんとある魔除けの手順“を教えてくれることになった。
・御仏前に供えたお菓子などには仏様の力が宿ると言われるが、この「元々ちゃんとある魔除け」では、その力を利用するらしい。
・住職が「仏力を自分の中に取り込むんですね。」とは言ってるものの、よくよく考えると怪しさ満載な話。
まず、“寺の住職“なのに、神道っぽい呪文を教えてる時点で「あれ?」ってなるし。
コップの底の方に不浄な霊が溜まるというのは何故?
コップの中身は仏力の入った水なのでは?
なぜ不浄なものが混入してるの?
・「唱えるっていうのは口にするでも良し、どうしても難しい場合は頭の中で思い浮かべるだけでも大丈夫なんですよ。」ってセリフも……
→一見、楽チンな方法に感じるけど、口に出さずとも読むだけで効果が出ちゃうということだよね。
読者も、頭の中で呪文を読み上げてしまうことになってますよね……?😓
あと“特別な呪文“も、住職本人は口には出さず、紙に書いているところが嫌らしいですね。
唱えるとより危険なのかな〜
・この住職のやってることが、まさに「おつかれさま」なんよね……
正しいお祓い方法の顔をして、呪いの方法を教えてるんだから恐ろしい……
何なら、ネットの「おつかれさま」を補強したような内容では?😬
・あの呪文は漢字つけると、こんな感じかな……
【乞ひ祈む(こいのむ)】
神仏に願い祈る。祈願する。
【祝ひ(ほがい)】
祝福。祝賀。
◉02 百物語について
・私立大の准教授が語り手。
伝承とか怪異とか怪談を研究している人。
この准教授は「怪談とは降霊の儀式」であり、怪異を歓迎する儀式として、怪談百物語が始まったと考えている。
→このtale『攀縁』という“怪談“を読んでいる我々も、想像の喚起をさせられているんですね……
◉03 スラバカについて
・或る一家に二人続いて人死にが出た場合、三人目が続くのを防ぐための対処法。
熊本県阿蘇郡黒川村では人形を作って葬式をする。
宮地町では、スラバカという誰も入らない墓を設ける。
(嘘や虚言を指してソラゴトというため、恐らくはソラ墓の転訛)
◉04 実話怪談「夜道の葉書」
……という話。
これ、実話怪談の体をした、読者に宛てられた呪いの葉書な気がするんだよ……
宛名面に何も書いてないのは、受取主を物語の中の人物だけに限定しないためじゃないの?
◉05 呪いのメモとTwitterアカウント
・文化人類学を研究する大学院生が語り手。
同じゼミの一学年下の後輩が見せてきた“とある呪文“について。
呪文を見せながら誰かに説明してる風の口調。
・後輩の鞄に、これが書かれたメモ紙が知らないうちに入っていたのだという。
01の住職が教えてくれた呪文の後半ですね……
院生は、はじめは祝詞かと思ったが、これが呪いの言葉であると気づく。
・ネットや文献を調べてみたが、該当する呪文は見つからず。
しかし、Twitterで1件だけヒットした。
そのアカウントに飛んでみるも、異様な過去ツイートを見ることになり戸惑ったようだ。
❇藤川中子の8月19日の投稿以降に、アカウントを発見したことになる。
◉06 大学での藤川の様子について
・藤川中子の同期の女学生が話者。
2年前から、福岡県の大学の地理研で一緒であり、同じ熊本県出身ということで、仲良くしていた様子。
・最近の藤川は、家のことで色々あるからと、顔を出してもすぐに帰ってしまったり、あまり研究室にも来なくなっていたという。
准教授にも心配されていた。
・藤川は民俗学寄りな調査をしており、地元地域の年中行事とか、儀礼に纏わる話をよくしていた。
・最近は「攀縁」と書かれた封筒を持ってきていた。
◉07 藤川 中子による研究発表
・2020年7月16日 地理学研究室にて行われた研究発表の録音書き起こしか。
宮地町で行われる、百物語に似た「語りの場」の話。
・その行事は葬送儀礼に大別されるもので、行事に固有名詞を付けることは忌避されている。
(人の死などに関する言葉は忌言葉として名辞や呼称を避ける、という文化による。)
よって、この行事は単に「アツマリ」「オハナシ」などと呼称されている。
・意味合いとしては「現世の人間の代わりに、あの世から色んな話し相手を呼んできて、ご先祖様が退屈しないようにしよう」というもの。
この行事は「怪談を語る」ことで「その怪談に登場する怪異を一時的に呼び出す」一種の降霊術として捉えられていた。
・呼び出した怪異を帰すために、参加者たちは“怪談を文字に起こし、文書という媒体を依代にして怪異を移した後に、それを仏のみもとに献上した“。
紙の文書に移された怪異を「攀縁」という封筒に入れ、それを神仏の力によって、先祖の御霊と一緒に天に帰したのだという。
・一度封をした「攀縁」の封筒をもう一度開けることは、固く禁じられており、アツマリの翌日、お寺にそれを持って行って、適切なかたちで供養をしてもらうらしい。
→藤川が貰ってきた“実際に使われたという空の封筒“は、供養済みのものなのか……?
供養してから、わざわざ封を開けて中身を出す?
普通は封をしたままお焚き上げとかしそうだよねぇ。
使用中のものを開けてるっぽくない……?😨
◉08 藤川中子のTwitterアカウント①
・2020年8月12日から27日までのツイートの抜粋と内容の考察文。
・「友達に言われてアカウントを作った」とあり、「友達=梓」だと推測される。
◉09 墓地で食べる団子について
・いわゆる葬送で食べる、野辺送り団子について語っている。
(話者は地方の学者っぽい語り口)
普通はケガレを厭って、食べ残した団子は墓場に捨てるらしいが……
話者が話を聞かせている相手は「家で食べた」らしい。
→団子を食べたのは、おそらく藤川中子か。
ケガレに慣らすために、余った団子をわざと与えられていた?
Twitterで、おやつに“団子“を良く食べていたような記述もあったしな……
◉10 まがっちゃったねオジサン
・mixiコミュニティ「熊本県民集まれ~」より。
「まがっちゃったね」オジサンに出会った話。
・書き手は学生で、阿蘇の南に住んでいる。
宮地町も阿蘇市の南と言って良いかと。
・mixiの流行っていた当時のログか。
書き込んだ人物が藤川でないとしても、彼女と同様な境遇の女の子が阿蘇市に存在するという話ですかね……嫌だね……
◉11 藤川中子のTwitterアカウント②
・08を書いた人物への返信メールか。
協力して藤川について調べている?
「藤川」というTwitterアカウントが「藤川中子」のものだと推測して話を進めている。
また、彼女の出身地が宮地町だとも知っている。
儀式に詳しいところをみると、この話者は呪いの呪文に気付いた院生の人か?
❇8月27日の投稿の後〜30日の藤川の外出前までのやり取り。
・08の人物とは違った着眼点で話を進める。
「藤川さんの祖母が出した料理やお酒が、一種の規則に則った杯事の儀式道具の一部であった可能性があります。」
◉12 「エニシツギ」について
・11のメールに添付された資料。
宮地町において嘗て行われていたという祭祀「エニシツギ」を紹介。
神前契約の中でも更に特徴的な例として、その祭祀形態を特別に「憑依契約」と名付けて論考。
→依巫に選ばれるのに性別や年齢など、特別な条件は特になく、誰でもなれる。
・降ろした神をそのまま依巫に憑依させ続けるというエニシツギの都合上、神籬と依巫は或る程度繋がっていなければならず、「依巫が手に持つことが出来、かつ両者が一体化しやすい神籬」として、依巫と同じ姿を形作ることの出来る(依巫の姿を映し出す)手鏡を用いたと推察されている。
→手鏡=スマホ。
スマホ画面の反射が鏡に見立てられている。
現代人はたいていスマホを肌身離さず持ち歩いている。
また、誰かとメールなり、やりとりをしていればずっと手に持っているはず。
そういえば、藤川はちょくちょくTwitterに書き込んでいましたね……
・この資料の最後にある「悪霊ごと依巫を処分して、残った村人たちは宴会する」って内容〜
胸糞悪いね……😒
◉13 御神楽の「薦枕」
これは、御神楽の「薦枕」の歌詞か?
・「豊岡姫」って出てくるから、神様への贄なんですかね。
豊岡姫は、伊勢神宮の外宮の主神だとか。
◉14 宮地尋常小学校の集合写真
・1年生の集合写真で、女児2人だけ顔が破られている。
・「七つまでは神のうち」という考えにより、まだ6歳の小学校1年生は積極的に依巫に選ばれちゃってたのかな。
このくらい昔なら口減らし要員でもあったのかも……
◉15 「攀縁」という単語
仏教用語としての「攀縁」という言葉についての説明。
→このtaleについて深く考察しようとしてる読者の状態もつまり……😇
◉16 藤川中子のTwitterアカウント③
・これまで藤川中子のTwitterを注視していた2人のうちのどちらかが、もう一方の人へ送ったメールか。
(院生の人かな?)
・2020年8月30日の深夜。
このメール送信の1時間程前に、藤川中子が家の外に出ており、彼女の身に何か良くないことが起きた可能性について言及。
◉17 新聞のお悔やみ欄
・藤川中子さん(21)が8月30日午後4時頃に山中で発見される。
・喪主は母親の斎(いつき)さん。
◉18 撤回のメール
・16のメールは、自分の勘違いだったから、藤川のアカウントを確認する必要は無い、前のメールも破棄してほしい旨が書かれている。
……が、本当に伝えたいのはコッチ↓
◉19 注意喚起のメール
・18の続きのメールか。
→儀式の中身では「攀縁」と名付けを行ってるのに、儀式自体に名付けることを忌避しているという矛盾について言っている?
・「罠にかけられた」と言ってるが誰に……?
・「あなたもこれ以上あれに関わったり、いろいろ想像したりしない方がいいです。」
→何度も想像すること(=想像の喚起)で憑依されやすくなっている……ということか。
◉20 留守電メッセージ
・おそらく、外に出てしまった藤川中子が自宅の留守電に吹き込んだメッセージ。
・Twitterでも気にしていた「外からの声」がうるさかったため、確認しようと家屋から出たみたい。
そこで決定的な何かが起こり、祖母も母も「べざしさん」も、みんなが嘘をついていたことに気づく。
→漢字を当てると、たぶん「障ってきた」……霊障的な意味合いか。
依巫として悪霊が憑依しやすい状態を、意図的に作られていたもんねぇ。
・留守電中、やたらとウフウフ笑っていたけど、所々で出てきた女の霊と混ざってしまった……?
◉最後 読者への「おつかれさま」
・「かけえ こお」×3は、鶏鳴三声(けいめいさんせい)ですよね。
12で説明してたくだり。↓
・「あの葉書は何だと思いますか〜」からの質問で、怪談のことを“想像させ“て周囲の霊が“憑依“しやすい状況を作り、鶏鳴三声で呼び込んで降霊完了。
うまくできてますよ……😇
これ、「おお」って応えるの“読者“じゃないもんね。
鏡(=スマホ)に映ってる“読者の姿をした悪霊“だもんね?
◆ネーミングについて
◎藤川中子と母親
・例えば、鈴の鋳造とか。
中身が空洞の金属製品を作る時に使うものです。
中子は砂で出来てるので、金属を鋳型に流し込んで固めたあと、振動で中子を壊して排出し、空洞のある鋳造物が出来上がるという寸法。
・中子(なかご)は最終的に“壊される“ために作られたものなんですね。
最終的に“悪霊ごと処分される“運命の依巫と通ずるものがあるな……
・あと、もうひとつ。
「斎宮」の忌詞として、仏様を中子(なかご)と呼んでいたようです。
現代では神道も仏教も、ちゃんぽんで良いとこ取りな感じですけど。
昔は神道と仏教はきちんと別物として扱っていたので、神に仕える斎宮が、仏教の用語を話すのは憚られたみたいですね。
よって仏教関連の言葉は忌詞で話していたそうな。
・あと「斎宮」で連想するのが、藤川の母親である「斎さん」。
たぶん、彼女は儀式の「斎員」としての役割を持つ名前なんだろうな……
・母親は神に仕える「斎」という名前で、娘は仏を表す「中子」って名前なのね……
◎画像のファイル名も「忌詞」
今作に散りばめられていた画像のファイル名も、たぶん忌詞で統一されてるっぽい。
◈葉書→ファイル名「そめがみ」
=「お経」の忌詞
「お経」を黄色や紺色に染めた紙に書いたところから由来。
◈集合写真→ファイル名「いとひき」
=「月経」の忌詞
「月経」は血が出るためケガレとされていた。
仏様に頼ったり、藤川をうまく誘導してみせたりと、「糸引き」の他の意味合いも含んでるかもね……
◈黒いスクショ→ファイル名「あかあせ」=「血」の忌詞
「 血」はケガレとして扱われたため。
◈おくやみ欄→ファイル名「いねつむ」
=「寝る」の忌詞
・正月の忌み詞で「稲積む」。
「寝る」ことをめでたくいったもの。
「寝る」には病気で寝込む意味もあるため、古語の「寝ね(いね)」と目出度い「稲」をかけ、 「積む」も喜びが積み重なるに通じるため目出度い言葉として使った。
・あとは、初日の出とともにやってくるといわれる年神様を、「寝ないで待つ」俗習から、「寝る」という言葉を忌避した……という記述も見つけたのよね。
「寝ないで待つ」ってのが、通夜の寝ずの番で「語りの場」が作られたことを思い出すな……
◈女の顔→ファイル名「はんえん」
=作中の宮地町にての禁忌語彙。
通常、「攀縁」は忌詞ではない。
◆考察&妄想
✜本作の呪われ要素
梨さん、すごい全力で呪いに来てるんよね……!!🍐
・まずは、tale中の短い怪談話をいくつも読むことで「怪談語り」の追体験をさせられている点。
・そして、このtaleのタイトルが『攀縁』。
中身は20個の怪談話の集まり。
つまり、この作品自体が【封をされた「攀縁」】であるということ。
この作品を読み始めた時点で、“「攀縁」の封を開けてしまった“ことになるので、読者は知らずに禁忌を破っている仕組み。
しかも「此岸と彼岸を繋ぐ境目である鏡」に見立てたスマホなんぞ持って読んでたら……周りに良くないものが「寄ってきちゃう」よね👻
この意味を考えると、「怪談」を縁にして、生者に攀じ登ってきてるのかな……
✜「エニシツギ」の意味
・改めて考えてみる。
12の「エニシツギ」の手順↓の、「呼び寄せられた全ての悪霊が憑依する」ってやつの準備が、藤川が研究発表で語っていた「アツマリ」の儀式なのでは?
・「攀縁」の封筒に周囲の悪霊を集めるために、初盆の家で怪談語りの行事をして、それを「エニシツギ」で依巫に全部降ろしてまとめて処分という流れ。
「アツマリ」では、“手鏡“を中心にして車座になり、酒盛りを始め怪談を語る……このときの“手鏡“がたぶん神籬。
・集めた悪霊は、仏様に何とかしてもらう丸投げシステムだから、「仏様」の忌詞と同じ名前の「中子」のところに集めて何とかしてもらう算段なんじゃない?
・あと「エニシツギ」ってどういう字を当てられるのか考えてみた。
「エニシ=縁」として。
「接ぐ」なら、バラバラの怪談を「攀縁」にひとつにまとめる意味でとれそうだし。
「注ぐ」なら、依巫という器にに悪霊を注ぎ込むイメージにも繋がる。
でも、たぶんこれかな〜
ここまでさんざん、忌詞出てきましたもん。
「エニシツギ」とは、つまり悪霊との「縁切り」!
✜Twitterの裏側を妄想
・「梓 ゆみ」が鍵アカなので、何が起こっていたのかは、話しぶりから想像するしか手はないんだけど。
藤川が実家に帰ったときに「エニシツギ」が行われていたと仮定して、色々こじつけてみます。
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○「藤川」と「梓」の関係
・まず、ふたりは実際に会うこともある友人関係だと推測される。
また、熊本に帰省する前、藤川は「梓」に、実家にまつわる悩み事を相談してた様子。
・梓との連絡を取るためなら、メールでも良さそうなものだけど……
どういう口実でTwitterアカウントを作らせたのかはわからないけど、不特定多数への公開を目的としている?
→これが、Twitterで繋がってる「藤川」と「梓」の関係っぽいような……
「梓」が鍵アカで、“藤川にしか見えない“ってのも意味ありげ。
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①修祓
・諸儀礼に先立ち、斎員が祓詞を奏上すること。
これは斎員らに悪霊の類が憑依することを防ぐためのものであり、そのために依巫は修祓の同席を禁じられている。
→8月14日の母親の行動が「修祓」か?藤川のいる部屋から出ていき、何か呟いていたのが祓詞?
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②降神
・依巫に手鏡を持たせ、斎員は周囲の霊を呼び寄せる。
基本的には鶏鳴三声を行い鏡に映った依巫が「おお」と応答すれば降神は成功となる。
→「手鏡=スマホ」として。
現代人がそうであるように、藤川は家の中でも持ち歩いていたに違いない。
本人に気付かれないように、母親が鶏鳴三声を行えば、スマホに映った藤川の姿をした霊が反応するはず。
→霊が集まり始めたから、声が聞こえるようになったか?
あとは考えられるのは、近くで「アツマリ」の怪談話をしてる可能性もある?
・藤川家、祖父と父親が全く出てこないけど、亡くなってるのかしらね。
だとしたら「或る一家に二人続いて人死にが出た場合」に該当してる可能性もある?
藤川が留守電で「スラバカに行く」と言ってたのは藤川家にスラバカがあるということか。
他人の家の墓に行くのはおかしい感じするからなぁ。
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③ 献饌
・「ミッカダゴ」という、粳米で作った団子(=野辺送り団子のこと)を事前に三つ用意しておき、そのうちの二つを依巫が食べる。
この時も依巫は手鏡を持ったままである。
→この時、一緒に墓場に行った母親が“粳米で作った団子“を持って行ってたなら、それは「野辺送り団子」と同等になるのでは?
→そんで、墓場から持ち帰った団子を、ごちそうと一緒に並べておいて藤川に食べさせた……と。
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④ 祝詞奏上
・斎員が祝詞を奏上する。
この地にのみ伝わっているものであるという。
→これは藤川には知られずに行われているはず。
関連ありそうなのは、おばあちゃんの部屋で見つけた葉書に書かれていた“よくわからない漢字ばかりの文章“。
これが、この地に伝わる祝詞なのではないか?
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⑤ 交盃
・依巫に酒の入った盃を渡す。
このとき、依巫は三回に分けて盃に入った酒を飲まなければならないのだが、この際に三口目は絶対に飲み込まず、手鏡に向かって吐き出す。
→藤川が直接、三口目を吐き出して捨てたわけではないけど、このへんは誤差の範囲なのかな。
資料のところに「伝承される媒体や地区により内容には細かな異同が見受けられた」とあるし。
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⑥ 憑依
・依巫の身体に、呼び寄せられた全ての悪霊が憑依し、以降は依巫との意思疎通などは不可能になるという。
→夜中になると悪霊が活発化するのか、あるいは「アツマリ」の声なのか……
・そのあと21時過ぎのツイート。
→おそらく「エニシツギ」の山場は越えたから嬉しそうなのかな。
ここからあとは、藤川の体調が悪くなって寝込むばかりだから、悪霊をその身に溜めていく段階だと思われる。
・あと8月19日の「われにまがれと〜」の書き込みは生きてる人間か、幽霊の仕業かはわからないけど、藤川に悪霊を呼び込むための駄目押しになってるよね。
だってあれ呪文を「思い浮かべるだけ」でも効果あるって、住職が言ってたじゃん……😵
頭の中で読んじゃうよ。
誰かしらの悪意なのは確か。
✜「梓 ゆみ」=同期の女学生?
※ここからは特に妄想多めで考察していきます。
・『梓弓』とは、古くから“霊を招くために使われた巫具“であるらしいので、「梓 ゆみ」という名前も“霊を招く“意味合いを持っていそう。
・動画に女の顔が写っていることに気づいたあとの、藤川と梓の異様なやり取りを見るに、梓も裏切っていたのか?
・Twitterで梓に「またいつかご飯でも食べに行こっか」と言ってるのが、
地元に帰る直前の発言だから、これから会えるかもしれない地元の友人というよりかは、たぶん大学の友人だよね?
となると「地理研で同期の女学生=梓」てはないか?
・そしてさらに「地理研で同期の女学生=梓=院生のゼミの後輩」ではないかと仮定してみる。
同期の女学生は、藤川と同じ熊本県出身。
また、院生の後輩は研究のために熊本県の神社などに聞き込みをしていた。
同期の子がフィールドワークについて「事前知識も人脈もわりかしある近場で済ませるって人も多いんですよ」ってセリフから、後輩の地元も熊本県の可能性が高い。
それと、院生のこのセリフが少し引っかかって……
→「その研究室」って言い方、後輩は余所の研究室所属って感じしません?
院生と後輩は、ゼミは同じだけど、研究室は違うんじゃないかな……
大学の仕組みは詳しくないんで、ネットで調べた知識しかないんだけど、状況としてはあり得る……?
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※この後は「地理研で同期の女学生=梓=院生のゼミの後輩」と断定したうえで考察していきます。
_____
・01で住職にインタビューしてた人物について。
Twitterで藤川のアカウントに「われにまがれと〜」と投稿されていたときの反応が、呪文そのものを知らなそうに見える点を考えると。
01で住職にインタビューしてたのは藤川ではない人物……
“20代で民俗学の調査のために訪れた、住職と顔見知りの地元の子。“
これが熊本県出身の同期の子ならば。
彼女と藤川の地元は近い……何なら同じ町の可能性もあるのではないか。
・夜道の葉書の怪談や、mixiでの体験談。
どちらも熊本県の話。
あれらが、宮地町の周辺での出来事だとすれば……
“藤川の体験談“というには弱いエピソードだからこそ、藤川の他にも似たような境遇の女性がいるということを示しているようにも思える。
・また、尋常小学校の集合写真で、同じ学年で2人、依巫にされた可能性のある女児がいますよね。
これは、1年に1人の依巫じゃ足りないことを指しているのでは?
彼女も藤川と同じ“依巫“として選ばれた人物なのかも。
・後輩は「院生の人と研究している領域が近い」と説明されていたので、「九州における、民間の呪術信仰について」研究していたと推測される。
だとすれば、この同期の女学生は「われにまがれと〜」の呪文の意味、実は気づいていたのでは?
メモに覚えがないと言ってたのは、院生の人を「攀縁」に巻き込むための口実。
・同期の子は、自分が調査の中で得た情報と、藤川が調べてきた伝承などを照らし合わせて、自分と藤川が依巫であることに気づいてしまった。
そして、その運命から自分だけは逃れようとして、他人に依巫の役割を擦り付けようとしたのでは?
……というストーリーが思いついたんですけど、どうですかね。
✜ストーリーの流れを妄想してみる
・本文に「文書という媒体を依代にして怪異を移した」とあるので、このtale『攀縁』の文書も怪異の依代として機能しているはず。
・作中で「攀縁」の封筒に入れられるのは、「自分の見聞きしたり体験したりした不思議な話」であることを考えると。tale『攀縁』に入ってる話も、「アツマリ」の参加者たちの見聞きした話や体験談である、ということになるはず。
・ではtale『攀縁』に話を提供した「アツマリ」の“参加者“とは一体誰なのか?
私が予想するに、主な参加者は……
05、06での「院生」と「藤川の同期」へのインタビューが、彼女らが所属する大学の人物にするような受け答えに感じなかったので、おそらく学外の登場人物がいると思うんですよね。
ある程度、こういう伝承に詳しい人物……02の准教授は、大学に潜伏している財団職員だったりする?
02は、前に院生と雑談して、顔見知りになったときの会話だったりしない?
・そして、この“参加者“たちは、自分たちのところに来た怪異を、taleの文章に移して、それを読者に乗っけて自分たちは助かろうとしてるわけだと、私は解釈しました。
このまま続けます。
……という感じ。
✜残った疑問点などなど
うまく噛み砕けなかった事柄と思いついたことの羅列。蛇足です。
____
◈藤川が悩んでいたことは何だったのか?
・帰省前に、おそらく梓に相談していて、実家の母親に聞いた内容なんだろうけど……
団子のことかな〜
インタビューしてる中で、自分がわざとケガレに触れさせられてるって気づいたのかも。
・そんでもって、本人によって意図的に消されたツイートの内容も何だったんだろうね。
藤川への“ケガレに関する何か“を更に見つけてしまった感じかな。
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◈Twitterの白黒写真は何?
・藤川の主観で「歪んでるのが強くなってるような気がする」画像が、アレなわけですよね?
見た感じ、前掛けをした幼児の写真だけど……
「歪んでる」と強いていうならお腹のあたり?膨らんでる?
う〜ん、よくわからない……
・あとはパッと見て連想したのは、前掛けつけたお地蔵様なんだけど。
「お地蔵様=地蔵菩薩」で“親より先に亡くなり、賽の河原をさまよう子供たちを救う役割を持つ“っていうのも、関連しそう?
_____
◈「梓 ゆみ」のアカウントの意味
・梓と藤川は地元も近くて、梓は藤川の家族とはグルだったんじゃないかと思ってます。
藤川に知られぬよう「エニシツギ」の儀式を完遂するために、スマホ(=神籬の手鏡)を頻繁に触るように仕向ける役割だったのかな〜、とか。
・梓のアカウントであと気になるのは、
ツイートの最後の方(女の顔が写ってる画像)のあたりで言い争い?みたいな雰囲気になってたところです。
梓に向かって言ってるというよりかは、動画に映った女の顔に悪態をついてるようにも感じました。
・無理やりこじつけるなら、「エニシツギ」の神籬って「手鏡=スマホ」だったじゃないですか。
だから怪異はスマホに宿ってるわけで、Twitter上で会話できたのかな……とか考えてみたり。
・梓のアカウントで、怪異は何を言ってたんですかね。
私は「まがっちゃったね!」って煽ってるのかな〜、って想像してた☺️
あとは段々近づいて声が大きくなってきて「うるさい」の後に、最後に目の前に女が来ての「みるな」だったのかな……
_____
◈ソースコードの隠し文字
・「かけえ こお」の前に隠し文「おめでとう」がある。
「かけえ こお」された時点で、次の依巫としてターゲットにされている読者へのメッセージか。
・藤川宛に、目出度いはずの「年賀状」で攀縁の葉書が来たことも考えると、依巫に選ばれることは「おめでたい」こととして認識されてる……?
それとも忌詞みたいに、わざと「おめでたい」風を装っている?
・そもそも鶏鳴三声も「魔を祓う」意味合いを持つはずなのに、悪霊を呼び寄せる時に使うというのが腑に落ちないのよね……
「エニシツギ」についての資料でも、降ろすものが「神」だったり「悪霊」だったりと、バラバラに書かれていて、なんか違和感がある。
御霊信仰的に「悪さをする霊」を神といって祀ってるのか、あるいは「かつて神と呼ばれた悪さをするもの」を悪霊といって祓おうとしてるのか……
_____
◈本当に“帰ってる“のか?
・最後に嫌な想像を語って終わりにしたいと思います。
Twitterアカウントの隠しメッセージとして、IDの文字をキーボードにて、ひらがなで拾うと……
と、出てくるわけですが。
「みんなみんなあいつのなか」の「あいつ」って誰?
・ところで、藤川の「エニシツギ」は成功したんですかね?
母親が外に出るのを必死に止めていたから、たぶん本来の流れならば家の中で完了させるものだったのでは?
なのに、藤川は外に出てしまった。
・01での住職のこの言葉が頭をよぎるんですよ……
藤川は依巫として“怪異を取り込む“はずが、逆に“怪異に取り込まれてしまった“のでは?
家の外に強大な怪異である「あいつ」が待ち構えていたのでは?
・そもそも、今までの「エニシツギ」で本当に怪異たちは仏様のもとに帰ってるんですかね……
昔からずーっとずーっと、あの地に溜め込まれて強大な怪異に育ってたりしてない?
だって、現世に住んでる私たちにはその姿は見えないんでしょ?
厄介払いできたと宴会してる後ろで、取り返しのつかない存在が居座ってたとしたら、嫌ですね……
🐔🐔🐔
はい!
長々とお付き合いいただき、ありがとうございました☺️
みんなでまがっちゃいましょうね〜