梨さんの依談『無縁』について考えてみた
財団職員の自殺と、遺された意味深な資料の羅列。
そして昭和時代の陰鬱な村……の雰囲気を味わえる作品。好き。
これぞ民俗ホラー!という空気感がとても良いです😊
今回は、こちらの考察をしていきたいと思います。
ネタバレしてます。
個人的な妄想も多分に入っています。
未読の方は、財団職員になったつもりでまずは謎を読み解いてみてはいかが……?
◆大まかなあらすじ
◎残された資料
彼の死後に残ったものはこちら↓
読者は、資料の断片を読み解き、自殺した財団職員の追体験をする……という構成。
財団職員は調査の過程で、何かに耐えきれなくなり自死を選んだわけで。
これを読み解こうとする我々も、恐ろしい目に遭うのか……?とドキドキすることができます🤗
◆考察
◎本当に何もない?
以下は自殺した財団職員の遺したメッセージの一部の抜粋。
→こうは言ってるが「何かある」からこそ、機器を破壊してるようにも取れる。
本当に「何もない」なら、彼の死後に他の財団職員がデータを見たとしても何ら問題ないんじゃないの?
さらに、遺されたメッセージの最後の言葉↑と、ソースに隠されていた画像(『きょうはわたしもはれすがた』)から、少女の怪異が出現してることが予想されます。
つまり、本当は異常現象は無い、ただの事件だったのに、この研究員が繋がりを見つけようといっぱい考えたことで「火のないところに煙を立てて」しまった。怪異を生み出してしまった、のが事の真相なのではないかしら?
◎何が原因だったのか?
まあ、自殺した研究員が想像を膨らませすぎたのが原因なんでしょうが……
それに至った要素を大まかに書き出してみますね。
おそらく、これらの要素が財団職員の脳内で絡み合って、怪異を作り上げてしまったと思われます。
資料の内容と照らし合わせて、もう少し細かく考察していきますね。
◈異様(コトサマ)という異形
・長崎県平戸に伝わる、異様(コトサマ)とは、"蛙に似た顔と胎児の胴体や手足を持つ半人半獣の化け物である"とされ「家の外で、ただ泣いているだけの人畜無害な存在である」といわれている。
・警官が事件現場で目撃したコトサマらしき異形は、この伝承と対比するかのように「家の中で、にっこり笑っていた」のが印象的ですね。
・では、警官が目撃したのはコトサマだったのか?
それは、おそらく否。
正体は、千夏と紅葉の間に居たはずの、本来の次女の水子霊でしょう。
・メタ的な話になってしまいますが、この作品のディスカッション欄で「無脳症の胎児」について言及されています。
「無脳症」で画像検索すると、グロ耐性無い方にはショッキングな画像が出てきます。
端的に言うと、確かに“蛙に似た顔“でした。
・なので、この家には「無脳症で亡くなった本来の次女」が存在し、その水子霊がコトサマのように家に居着いていたのではないかと推測されます。
→後妻の日記にあった「夜にいつも聞こえる声」とはコトサマのように「泣いている」水子霊の声だったのかも……
◈後妻と子供たちの関係性
・後妻が書いたであろう日記の資料がありますね。
そこには「千夏と、千夏に似ている紅葉をみることが限界だ。耐えられない」と書かれています。
凶行に至る直前に書かれたのかな……
・千夏の年齢は思春期だろうから、もしかしたら反抗的だったのかも。しかも前妻の子。
そんな長女に似ている我が子も可愛く感じない。
生まれたばかりだと、夜泣きやら何やら思い通りにいかないことでストレスは溜まったでしょう。
→資料の中に、子を憎む子守唄の歌詞や、継子殺しの昔話が入っていたのは示唆的ですね。
・後妻があえて、娘たちの頭を潰して殺していたことを考えると、もしかしたら知的障害か何かがあった可能性もある?
◈一家への手紙
・再婚、次女の誕生と目出度いイベントで幸せないっぱいな家庭のはずなのに……だんだんと不幸に傾いていくのがやるせないですね。
・さて、資料の中に一家の父親に宛てた手紙が3通ありました。
なんとなくだけど、この書き手の女性はこの一家の父親に懸想してるのかなーって感じたのよね……
・1通目。
一家の父親の“再婚後“に手紙書いてるのに、前の奥さんのことを未だに「オクサマ」と言ってて、ちょっと違和感。
直接、お悔やみに来るのは難しくても今回のように手紙を出せるのなら、普通は亡くなった直後に手紙送るような……
再婚したのは、前の奥さん亡くなって1年くらい経ってからなんだよねぇ?
そんなに間をあけて、今更手紙を送ってくる意図は?
・2通目。
他の家の人から、赤ちゃんが生まれたと聞いて手紙送ってきてるよね。
もしかして「いきぐち」って“生きてる人の霊を呼び出す“意味の「生口」のことか?
わざわざ口寄せしたの?生きてる人の?😐
もし、とても仲の良い付き合いなら、それこそ父親側から連絡しそうなもの。
この書き手、一方的に親しげにしている……?ストーカー的な?
「おへんじまつています」というのも不自然な気がする。
だって仲が良ければ父親から……以下略。
・3通目。
明らかに呪詛を送っているので、よほど恨み節なのか?
“書き手からの一方的な好意“説が正しければ、2通目のあとに返事が来なかったとか、無視されたとか……他の女のものになるくらいなら呪い殺す勢いか。
父親の死因は呪いだったのか、どうなのか……
・“一家の父親へ“の手紙が「1-1」「1-2」「1-3」とナンバリングされているから「1-○」だとする。
一方、“後妻へ“の手紙(脅迫文)が「4-56」とナンバリングされているから「4-○」だと考えられる。
残ってる資料の時点で56通目の脅迫文だろうから、ヤバさが伝わってきますね。
これ、もしかして同じ書き手だったりするのでは……?😨
◎近所で浮いていた後妻
・近所の女性の口ぶりから、後妻はあまり良くは思われてなさそうでしたね。
取り繕っていたけど「曳き者」ってたぶん悪口だよね。
都会から来て、村に馴染まない女は気に食わなかったのかな〜
→島原の子守唄にも小金持ちになって帰ってきた女を妬むような歌詞あるしな……
◈凶行に至った理由は?
・旦那は半年前に病死し、残されたのは継子とそれに似た我が子。
言うことを聞かない娘たちを憎く感じ、殺すに至ったか。
・近隣住民からの冷たい目や、脅迫めいたの手紙からのストレス。
後妻がコミュニティで孤立していたのは確実。
・長女の栄養状態が悪そうだったのは、虐待の線もあるが、大黒柱が死に、食うに困っていた可能性も。
色んな点で、もう生きていくのが辛いと考え、無理心中をはかろうとした?
◎隠し画像の少女について
・ソースコードに隠されている画像。
七五三みたいに目出度い感じの綺麗な着物を着て、嬉しそうにしている禍々しい少女。
目が……目が……(●▽●)
・財団職員の彼の想像力によって、ただの水子霊が、コトサマ(仮)に定義づけられちゃったのかな……
死んだ姉妹の身体の一部を取り込んで、欠損のない身体に作り変わったのかな……とか色々考えちゃう。
・個人的にこのコトサマ(仮)の名前は「弥生」とか合いそうだな〜、と思ってる。
「ひなまつり」だし。
たぶん三姉妹で「夏」「秋」「春」にちなんでいそうだよね。
・あと、そういえば他の画像名も、「ひなまつり」の歌詞になってて面白い。
いや、「ふたりならんですましがお」は悪意に満ちてると思ったけどね……
並んでるの、被害者の顔写真欄じゃん……😓
・あと、「無題.jpg」の画像、また壁にガムテで貼ってあるパターンだと思って注視してなかったんですけど、よく見たら四隅が欠けてるんですね……
え、呪詛ってこと?😰
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財団は、自殺した彼が“無から有を、何か作り上げてしまった“ことに気づいていたのかどうなのか……
気づいていたとしたら、“彼女“の存在は認識しないほうが良さげだから、知らんぷりしたのかな〜
大きな影響もなさそうだったし。
単に、職員の彼がおかしくなって自殺しただけだと思われていたとしても、それはそれで自殺した彼の思惑通りで良いのかな。
自殺した彼は、コトサマ(仮)の“父親“役にでも任命されちゃったのかな〜、と妄想したところで、この記事を終えたいと思います🎎