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梨さんの依談『順縁』について考えてみた

梨さんのSCP記事は難しいな〜、と思いつつ。

依談の『順縁』について、考察してみました。
色々考えてはみたものの、スッキリした結論は出てません。
疑問点、思いついたことを垂れ流したうえで、最後の方は個人的な妄想を語ります。

ネタバレしてますので、お気をつけください。


◆大まかな流れ

・舞台は山口県豊浦郡。
山奥に住む、とある家族が不審死を遂げた曰くのある家の話。

これをベースとして、
① 肝試しに行った大学生3人組
② ①の話を聞かされ、途中で引き返した女子大学生
の話に派生する。

・この地域の風習や、怪談元の家族に関連しそうなあれやこれやの情報が、合間にはさまれる。

◆風習、言い伝えについて


・以下は、山口県豊浦郡に伝わる風習とされてる様子。

【ふたぎどき(塞ぎ時)】

この地方では、幽霊などが出るとされる時間帯には、なにかがそれを見ないようにと人間の目を塞ぐため「暗くなり」、それを「夜」と呼んでいる

そんな時に耳まで塞いでしまうと、完全に、幽霊の領分に入ってしまうとされ、夜には耳を塞ぐことが、忌避されている。

【順縁の願掛け】

・幼稚園〜小学校入学あたりの子供がやる願掛け。
・親子で二人一組となり、親が子供の両耳を両手で塞ぎ、子供には聞こえていない状態で、えんぎのいいこと、を言う。
・そして、耳を塞がれた子供が親の言ってることを当てられれば、親の言った内容が成就するという願掛け。

・現在は形骸化しており、事前に紙に言う内容を書いておいて、それを子供に見せておき、答えさせる。
・順縁の儀式は昼間の明るいうちに行うものとされている。

→順縁の願掛けを夜に行うことは、「ふたぎどき」に耳を塞ぐことになってしまうため、禁忌とされる。


・「ミミフタギ」については、全国的に似たような風習はある様子。

色んな地域で伝わる【ミミフタギ】

・同じムラ、同じ地域に住むものが死んだときに餅や団子を作り、それをミミフタギモチ、ミミフタギダンゴなどと称し、その団子を用いて自身の耳を塞ぐ。

・死者の穢れや忌をはらい落とすために行われる呪法の一種として捉えられる。

・ミミフタギに際して唱えられる呪言としては「ええこと聞け、悪いこと聞くな」というものが広く伝わっているが、これは耳を塞ぐことによって「悪いこと」、すなわち死の報せや穢れを耳に入れないようにするまじないであると考えられる。

→葬儀開始の合図として寺の鐘が十回鳴らされる(集会鐘)ときに、近隣の家々の人が耳を塞ぐという慣行も、ミミフタギの類型として考えられる。

【集会鐘(しゅえしょう)】
法要の始まる一時間前に大きな集会鐘が、ゆっくりと十回打ち鳴らされる。
大きな集会鐘は、余韻を残しながら大きく長く響く。


・冒頭の「鐘の音」(ファイル名:しゅうごうえ)がこの「集会鐘」ではないか?
死の報せである「鐘の音」=「悪いこと」であり不吉。
・ソースを見ると、この付近に「さようなら」という言葉が隠されている
3人組の肝試し話の中で、女性の口から「寺の鐘の音」が聞こえたことを考えると、これは女性から読者へのメッセージ?

う〜ん、一番最初に呪いを配置して聞かせる構成……!😖


豊浦郡に伝わる【ミミフタギ】

・通夜において、仏前の布団に寝かされた死者の耳が塞がれる
餅を死者の耳に詰める際には「ええこと聞け、悪いこと聞くな」の呪文が唱えられるが、これは今から彼岸へ旅立つ死者にとっては生者の悲嘆や未練とは「悪いこと」であるためだと説明されている。

・また、ミミフタギに使う餅米は、通常の米などを育てる畑とは離れたところで、特別に設えられた田畑で育てられている。


・日本の他の地域でも伝わる「ミミフタギ」では、「悪いこと」を聞かないようにする意義が強く、死者に連れて行かれないように自分の耳を守る印象

それに反して、豊浦郡の「ミミフタギ」は、死者にとっての「悪いこと」を聞かせないようにして、死者の未練を断ち切り、早く追い出そうとしてる印象

◆お話を区切ってみる

◎曰くの家の話

・父、母、娘の3人家族(年齢不明)
・他の地域からやって来て、小さな田圃付きの平屋の家を借りた。
・田圃は当時すでに荒れ果てており、農業の心得もなかった家族はそのまま放置していた。

・最初の不幸は、娘から。
耳から茶色の膿と小さな虫が出てくるようになり、家で養生していたが看病の甲斐なく死去。

・次は、母親が元田圃で口いっぱいに土を頬張って倒れていた。(おそらく、窒息死。)状況から、自殺だと結論づけられた。

・最後に残った父親は、なんの痕跡も残さず姿を消してしまった。

近隣住民は”おそろしい家”だといって、取り壊しもせず放置。

・他の情報と照らし合わせると、おそらくこの家は「ミミフタギ」のための田圃を管理する人間が使っていた家だったのだろう。

死の穢れに関係する餅米を育てる田圃ということで ”通常の田畑とは離された立地にされ、忌避されていた” というから、被差別民など集落で立場の弱い人間が住まわされていた可能性が高いのでは?

・「ミミフタギモチ」の風習も現代では廃れてきており、一家が越してきた当時ですら田圃が雑草だらけだったことも考えると、だいぶ前から風習は蔑ろにされていた?


◎3人組の肝試し

・10年くらい前に、当時大学生だった3人組が、曰くの家を特定し向かうことにした。

・悪路のため、途中で車を停め、曰くの家に向かうことになったが、運転手は肝試しに乗り気ではなかったため車内で待機。
残りの2人で家までの細道を歩いた。

・荒れた古民家を散策していた2人は、仏間で不可思議な体験をする。
仏間に入ったときだけ、自分の声以外の音が全て聞こえなくなる現象。
気味が悪くなり、すぐさま退避する。

・車で待機していた運転手は、一見寝入っているように見えたが、喉に土を詰まらせて窒息しかけていた。
なんとか回復したものの、運転手は恐怖体験を語りだす。

・イヤホンで音楽を聞きながら、2人の帰りを待っている時。
急に20代後半くらいの笑顔の女性が、窓の外に現れた。
その女性が何か喋り始めた瞬間、聞いていた音楽は途切れ、代わりに寺の鐘のような音が響き始める。

・その女性の声は、鐘の音で掻き消されて聞こえないはずなのに、頭の中に言葉が入ってきたという。
”車を停めているこの場所は、かつて田圃だったと。”

・運転手が田圃のことに気づいて、女性は喋るのを止め、同時に鐘の音も止んだ。
女性がすごく嬉しそうに「きいてくれたよねえ」と言った声を聞いてから意識が飛んでしまったようだった。

・この話が怪談話として伝わってることから、その3人組にすぐさま何か悪いことは起きていないだろうと思われる。


・仏間で自分の声以外が聞こえなくなったのは、見えない誰かに耳を塞がれてたんでしょうね……
つまり、仏間の空間は目も耳も塞がれた”あの世の領域”だった。

・一方、車に残った運転手ですが。
彼はイヤホンで音楽を聴いていたため、すでに耳が塞がっていた
知らずに”あの世の領域”に入りこんでいたから、幽霊の姿を見たり、声を聞いたりしたんでしょう。

・女性の口から聞こえた「鐘の音」=死を報せる「悪いこと」。
これを「きいてしまった」から、死にかけた、と思われる。

→耳を塞ぎながら「悪いこと」を聞くと、連れて行かれてしまうということ?🤔

◎引き返した大学生たちの話

・サークルの夏キャンプで、肝試しに向かう車の中。
上記の”大学生3人組の怪談話”を「今から向かう場所の話だ」と道案内役の先輩から聞かされた参加メンバー。

・肝試しの雰囲気を味わうだけのイベントだと思っていたのに、本物の心霊スポットに行こうとしてることが発覚し、みんな固まってしまう。

・運転手が空気を和ませようと話しかけるも、その先輩は「いや、あの子に比べたら全然だよ」と、いつもの調子で笑っており、逆に異様。

”この話題も、肝試しに行くことも駄目だ”と感じた女子学生は、咄嗟に「気分が悪い」と嘘を付き、意図を汲んだ他メンバーの口添えもあって、キャンプ場まで戻ることに成功した。

・道案内役の先輩が、肝試しか取り止めになっても特に食い下がりもせず、いつも通りの様子だったのが、逆に不気味だったものの。
女子学生は疲れもあってすぐにテントで寝入ってしまった。

・翌朝、すっきりと目覚めた女子学生は、他のみんなが寝静まる中、トイレに向かった。
個室から出ようとしたとき、ドアの向こうから声をかけられた。
昨夜の車中で隣に座っていた同期の女の子だった。

・彼女が言うには”昨日の先輩の怪談話の最中、怖くて耳を塞いでいたら、知らない男性の声が聞こえた”のだという。
耳を塞いでいるのに、ずっと聞こえてくる声に恐怖した彼女は、「気分が悪い」と言った女子学生も自分と同様なんだと、その時は安心したそうなのだが…… 

・個室内で固まる女子学生をよそに、彼女は「嘘ついてたんだよね」と責め立て、個室のドアを何度も殴りつける。

夜中に誰かが来て、ずっと話を聞かされたこと”や”昨夜のUターンする車窓から知らない中年男性を見たこと”をまくしたてる。

・恐怖で意識を手放した女子学生が次に目覚めたとき、他のメンバーも起床し始めていて、先程の彼女は普通の様子だったという。

・キャンプからの帰り道、乗せてもらった車の中から見えたのは、1台だけ大学への道から逸れるバイク。
あの道案内役だった先輩が乗るバイクが向かう先は、怪談話の家への道だった。

自分以外の誰も、それに反応しないことに焦り、車中のメンバーに「あの道、家が違う」と声をかけるものの……
「どっちがちがうかも分かんないのにねえ」と笑われて終わってしまった。

女子学生は、それがきっかけでサークルを辞めたという。

・道案内役の先輩は、どこでこの話を仕入れてきたんだろうねぇ?

先輩が「あの子」から話を聞かされるようになったきっかけは、肝試しに行ったときに耳を塞いでしまった、とか?
それとも同期の女の子のように、誰かに怪談話を聞かされ耳を塞いだとか?

・最後の「どっちが違うかもわからない」ってどういう意味だろう……?


◎お坊さんの法話

・「あかりちゃん」の通夜に呼ばれたお坊さんの法話だと思われる。

……が、女子学生の体験談を読んだあとだと”同期の女の子が耳を塞いでるときに聞こえた男性の話し声”の内容にも感じられる。

「なんていうのかな、お葬式の時にお坊さんがお経よんだあとにするみたいな、今日は誰々が亡くなってどうこうみたいな言葉をね延々と聞かされるんだよ」

(本文より)

・「阿弥陀様」「極楽浄土」「親鸞聖人」「念仏」という単語から、おそらく浄土真宗の葬式。

・坊さん(仮)は、ふたつの『順縁』『逆縁』の話をする。

①死ぬ順番での
『順縁』……年老いた順にこの世を離れて、若いものがその供養をすること。
『逆縁』……子が先立つこと。

②仏教への向き合い方での
『順縁』……仏様の教えに素直に従って、順当に仏道へ入ること。
『逆縁』……仏法から外れた行いをして、仏道に背いてしまうこと。

・親鸞聖人の「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」という言葉が出てくるけど……

→あの家族は業縁に突き動かされて、仏道に背く行為をしたということ……?

・ソースを見ると、この話の後にはさまれる画像の名前が『がっぷく』となっている。

【合幅(がっぷく)】=総法名軸

法名軸(ほうみょうじく)とは
主に浄土真宗系で使用される仏具。
位牌のかわりに仏壇に掛けられる掛け軸のこと。

法名軸の中でも、先祖代々の法名を記せるようにしたものを合幅(がっぷく)といい、総法名軸として使用される。

ガムテで壁に無造作に貼り付けられたアレが仏具の代わりなの……?😰

・また、浄土真宗について調べた内容によると……
浄土真宗で位牌を用いないのは、ほかの宗派と死の捉え方が違うため。

人は死後、仏門に入り浄土を目指して修行するといわれるが、浄土真宗では亡くなったあとすぐに「阿弥陀如来」の力によって極楽浄土へ行けると考えられている。

よって、故人は現世にとどまることなく成仏し、魂の依り代になる位牌は必要ないとの考え方をする。

→でも、あかりちゃんは成仏できてないっぽいよね……?どうして?


「順縁であっても逆縁であっても、必ず見守って下さる方はいると、私は思うのですね。どんな縁に結ばれたとしても、手を伸べてくれる方はいるものです」

「あかりちゃんもきっとその手を取って、現世との縁を断ち切ることが出来たのだと、私は信じております」


画像『がっぷく』には耳を塞がれた女性が写ってるわけですが……
(本文の最後にソースコードで隠されてる画像『あかり.bin』と同一の女性に見えるので、あかりちゃんなのか……?)

この女性の耳を塞いでる手の持ち主が、坊さん(仮)が言うところの「手を伸べてくれる方」なのかな?
すると「その手を取って」という文も意味深に見えちゃうな……

「いま、あかりちゃんには聞こえていないかもしれませんが、仏様はきっと聞いていらっしゃるはずですので」

→これは、あかりちゃんの耳には餅が詰められてるから「聞こえていない」んでしょ?
坊さん(仮)が言ってた「ふたぎこんでしまう時分」って「ふたぎ時」で、つまりは夜のことだよね?
生者は耳を塞ぐことを避ける時分だもんね。


◎「耳なし芳一」の話

・有名な怪談だけど、これ山口県のお話だったんだ〜。知らなかった。
この怪談でも「目と耳」というワードが重要なのよね。

・このパートで大事そうなのは
「抜け落ちた情報を間違った情報で埋め合わせるのは、それだけ簡単だっていうこと」の部分かな。

→このお話は、実際と違う情報で埋め合わされてる可能性。

・あとはここも多分関係ありそう……

「例えば、彼の耳を持って行った武士の怨霊が実は人間だったとしても、彼はそれを知る由もないですよね。だって視覚情報がないから。みんなで示し合わせてひと芝居打って、人間が怨霊のふりをして耳を削いだりしても、少なくとも本人に気づかれることはない」

(本文より)

→「ひと芝居」について、これはいくつか推測できるけど……
①何も知らない新参者の一家を、みんなが忌避する土地に住まわせた集落の人間たち
②「順縁の願掛け」で耳を塞がれてる子供に、紙に書いたものとは違う内容を言って、儀式を失敗させた……とか。


◎誓願の文

・これ、誰が書いたんだろう……
灯(あかり)ちゃん、華さん、芳(かおり)さんは例の家族の娘、母親、父親の名前なんだろうけど。
家族以外の第三者視点っぽく感じる文章よね。

・Twitterで見かけた”一家の名前が三具足を表してる説”。
それっぽいですよね。
梨さんのことだから、意味のある名付けだと思うんですよ。

【三具足(みつぐそく)】
三具足とは、仏教で故人を供養していくために必要な「香炉(こうろ)」「燭台(しょくだい)」「花立(はなたて)」をセットにして指す言葉です。
なお、「仏壇をしまう」という場合は三具足も一緒に処分するのが一般的です。

・灯ちゃん→燭台のろうそくの
”耳の炎症で発熱し、耳垂れを起こす”様子が、”ろうそくに火がついて蝋を溶かす”様子にかかっている。
・華さん→花立の花。
花だから土に植わろうとした?
・芳さん→香炉の線香。
足跡もなく姿を消した様子は、まるで「煙のよう」である。
「芳」の読みが「かおり」なので「香」と音が繋がる。


・なんとなくだけど、この家の場所に何かしらありそう……
大学生3人組が肝試しに行った時、廃屋の仏間が異空間みたいな、特別な領域になってたのは、土地由来だとか?

そもそも、豊浦郡だけミミフタギの内容に他地域との差が出てるのは、あの家の仏間に理由があるのでは?

・ミミフタギの儀式が形骸化して、もう田圃が使われてないことを考えると、集落ではこの風習をやめようとしていたっぽいよね。

例えば、特別な仏間の『仏壇じまい』をしようとして、あの家族3人を三具足として差し出した……とか?

◆疑問点

◎大学生のもとに現れた存在は何か?

・怪談話をした先輩の「あの子に比べたら全然だよ」というセリフの「あの子」とは誰を指すのか?

→年下の人物に対する物言いに感じるので、おそらく「あかりちゃん」?

・女子学生の同期の子の話から読み取れることを考えてみる。

「だってあんたのとこには全然来てなくてあんたずっとぐうぐう寝てたんだもんね、寝れるわけないじゃん夜なのに、あいつずっときてたのに、先輩もそりゃあ詳しく喋れるはずだよねあんだけずっと聞かされてたら

(本文より)

→つまり、現れた何者かによって、先輩の話した怪談話と同じものを夜の間、延々と聞かされていたということ。

「男の人が立ってたんだよ、中年ぐらいの知らないおじさんでさ、その人、その人も、両手をだらって下げて両手が耳塞いでにやにや笑いながらっち見てたんだよあたしを」

(本文より)

→山の麓で見かけた男性は、たぶん『あかり.bin』のような見た目だったんでしょうね。
”おじさん”で該当するのは、おそらく芳さん。
「その人も」と言ってるので、同期の女の子のところへ夜中に怪談話聞かせにやって来たのは同様に”耳を塞がれ両手をだらっと下げた”別の人な感じする。
先輩と同じく、あかりちゃんが来た?

・肝試しの途中で帰ったことを、道案内役の先輩が意に介してないのは何故?
怪談話を聞かせる   or   耳を塞がせることが目的だった?

・「いくら洗っても取れなくなって」いたのは、ドアに叩きつけた手についた泥?
→あかりちゃんのように、土をほくりかえしたのかな?

◎「どっちがちがうかもわからない」の意味は?

・あと、少し違和感があったのがここ。

「絶対に先輩の家は、というか今も人が生活しているような人家ってあの道の先には無いんですよ。それくらいひとけのない山道を進むんですよあの家に行くときには。」

(本文より)


・これは”昔は住んでる人いた”けど、今はその集落に人が居ないことを説明してる?
一家に家を貸した昔には、さすがに同じ山に人が住んでたと思うんだよね。

・女子学生は山の麓までしか行ってないはずだけど、「人家がない」と言ってるのは山への道中の様子をさしてるのか?それともその後に家まで行ったことがあるかのようにも聞こえる。

・「どっちがちがうかも分かんないのにねえ」って、もしかして女子学生が乗せてもらった車も、帰り道とは「ちがった」行き先に向かったとか
一笑に付された会話の後、車に同乗したみんなで曰くの家へ行って、道中で誰かがまたあの怪談話をしたとしたら……

「もう聞きたくもない」よねぇ。


◆ギミックの凶悪さ

読者への呪いが大盤振る舞い👍

・梨さんの投稿の「イヤホン推奨」の言葉を信じた人は、大変な目に遭いましたね😇

しかも、ホラー好きなら雰囲気のある”夜”に、暗〜い部屋で読んだりするじゃない……?

想定される状況と作品の内容のマッチ具合が完璧だよね!
逃れようがないくらい呪われに行ってる。

・最初からイヤホン着けてたら、最初の音声を何も知らずに聞いちゃって、あとから大学生3人組の運転手くんの追体験になると気づいてひんやりできるんだよね?

・途中の動画は「耳を塞いでください」と念を押されたうえで。
視聴すると、映像と音声が全く違う内容なんだよね。
映像→寺の鐘
音声→(たぶん般若心経の)お経

これも運転手くんと同じく”見ているものが出すはずの音と聞こえてる音が違う”って現象の追体験かな。

しかもイヤホンで「耳を塞いで」るときに聞こえた音なので、この「お経」も「悪いこと」に該当する音声なのでは……?😇

・あと、最後にソースコードに隠されていた『あかり.bin』という画像の意味を考えてみたんだが……

これまでは「何者か」が人間の目を塞いで「真っ暗」にして、幽霊を見えないようにしてくれていたのに、
わざわざ「あかり」を灯して、幽霊を視認できるようにしたって意味かな……?

とか思いついた。怖い。

・「目で見えないものとか耳で聞こえないことを無理に知ろうとするのは、文字通り聞き分けのない行いなんですよ。」という文章は、ソースコードまで探る読者に対する言葉?😅

◆推測と妄想


色々考察してはみたものの。
結局、どういう背景なのかがわからないので、あとは推測と妄想でカバーしてストーリーを捏ね上げます。
一個人の解釈だとご留意くださいね。

本当、妄想を断定して、さらに妄想で塗り固めてますからね!!



この話で怪異の原因となりそうな要素を整理してみる。

①一家の事情

・誓願のあたりで華さんが、あかりちゃんを嫌ってるようなことが書かれていたけど、理由はあるんだろうか?

「せい願」
華さんがおねがいとしだすのはそのあとです、
じぶんのむすめがかわいいく、
無かったから、

じゅんえんにならないでくださいと言って、そいでいました
じゅんえんにならないでください

(本文より)

・このへんを妄想で膨らませてみると……
あかりちゃんは華さんの実娘ではない、とか?
前の奥さんの子供だから可愛く思えない、とかよくある話だよね。

・さらに邪推するなら、芳さんと華さんの不倫の末に元奥さんが死ぬなりして、世間体が悪くなり前の地域に住みにくくなって山奥へ逃げてきたとか……
→だとしたら、このへんの出来事が「仏道に背く」ことに該当しそう。

どのくらい昔の話なのかはわからないけど、「農業の心得がない」でも暮らせる地域から越してきたってことだから、たぶん農村部出身ではないでしょ。

②家の仏間が霊道説

・まあ「霊道」とは書きましたけど、それに類するような場所なんじゃないかと思いました。
便宜上「霊道」と呼んで話を進めます。

豊浦郡だけ、ミミフタギの作法が他と違うのは、この「霊道」のせい。
「夜に耳を塞ぐ」と霊道に放り込まれたと同義で、生者は連れて行かれてしまうのだろう。

・ミミフタギに使う米を育ててるから、その田圃を忌避するってのも建前で、周辺住民は”あの場所自体”を避けていたのではないか?

③一家が消えるきっかけは?

・自宅が”死に近い場所”とはいえ、しばらくは普通に暮らせていた様子。
何かきっかけがあって、「霊道」から幽霊が来てしまったのだと推測。

・たぶん「夜に順縁の願掛けをした」のが原因じゃないかな〜、と思ってる。
しかも娘が可愛くないから、禁忌とされている夜に。

例えば、母親が娘の耳を塞いで「えんぎのいいこと」を言うフリをして「えんぎの悪いこと」を言ったとする。
娘が嫌いだから。

そしたら、本来なら耳を塞がれていて何も聞こえないはずのあかりちゃんの耳に、”何かが聞こえてしまった”。
「夜に耳を塞いだ」から幽霊の囁く「悪いこと」が聞こえてしまった。

それが奇しくも母親が言った「えんぎの悪いこと」と合致してしまえば順縁の願掛けは成立したと言えなくはないか?
負の方向にだけど。

「順縁にならないでください」って言っちゃったのかな……「親より先に死ぬ」の意味の方で。

・あかりちゃんが耳に土を詰めるようになったのは、死者の声を聞きたくない必死の抵抗だったのでは?
ミミフタギモチなら防げると思って、かつてそれ用の米が育てられていた田圃の土を詰めていた……とか。

④逆縁の死者に手を伸べる

・まず、幽霊に引っ張られたのは、あかりちゃん。
私は、実の母親に連れて行かれたんじゃないかと思ってる。
母親の幽霊の手を取り、あちらの世界へ。

父親より先に死ぬことになり、これが彼女の「逆縁」となる。

・次に連れて行かれたのは華さん。
私、『あかり.bin』の画像の女性って華さんなんじゃないかと思ってて。

というのも、あの画像で耳を塞いでる腕が大小一本ずつあるように見えるんですよね……これが、死んだあかりちゃんと、その母親の腕だとしたら……?
画像の女性は成人女性の体つきをしているし、辻褄合うと思うんですよね。

旦那の浮気相手を自分のところへ連れて来るか〜?とも思うんですけど、もう死後の彼女たちは”仏道に背いた人たちに手を伸べる”役目でも持ってるのかな〜、って。

・最後に父親である芳さんですね。
彼は浮気の末に奥さんを死に追いやった、とすれば充分な逆縁なのでは?

「せいがん」
芳さんがふたげなかったのはそのあとです、
ごくらくと、じごくどっちもいけなかったのもそのあとです
かおりと、はなとあかり、をください

(本文より)

死者の耳を塞いで、未練を持たせずに送り出すことに失敗したのを「ふたげなかった」と言ってるのかな?

「おねがい」

かおりさんが、
みかけれたらすぐ、
しってないようにして
わたしに、ゆってください

(本文より)

この「おねがい」は、連れて行こうとする彼女たちから逃げ出した芳さんを探してる文章なのかな。
芳さんは”仏道に背いた逆縁”だから、死んだとしても順縁の人たちが行き着く場所には行けず彷徨っていそう。

でも、同期の女の子が「耳を塞がれた」芳さんらしき人を見てるから、結局は捕まったんだろうな……

・「ごくらくと、じごくどっちもいけなかった」って、怪談話を広めようと出没する現在のことを指している?

⑤怪談話を語り続ける理由

・「出自すら曖昧な話だっていう触れ込みなのに、そこまでディテールがやたら細かく伝わってる」のは、当の本人が幽霊となって語っているから……なんですかね。

・この怪談話を聞いてる最中に、耳を塞いじゃった人のところに彼らは現れるっぽいな。
(イヤホン着けてこの作品を読んだ我々のところにも……?😨)
そんで耳塞いでる生者に「悪いこと」を聞かせて、死後の世界に連れて行こうとする。

・「死者と生者の価値観は違う」という点を踏まえると、あかりちゃんたちは良かれと思って生者を引っ張ってるのかもしれないですね。

悪意というより、善意であの世へ連れて行こうとしてるけど、生者にとっては怖いし迷惑!みたいな。


❇❇❇❇❇

という感じで考察してみました。
もっと、他の人の考察も読み漁りたい……けど少ない……🥲

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