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『行方不明展』の展示物や世界観の感想

『行方不明展』、大盛況で会期を終えましたね。
65000人も来場者来たとか……
すごーい😲
SNSで話題になってライト層も来たから、こんなにすごい人数なのね。


さて今回は、会場を回ってみて印象深かったもの、個人的に色々感じたことなどを記録としてここに残しておきます。

この展示は、見る人ごとに違った感じ方ができるアート的な側面が強いものだと思ってます。
なので、ここに記す内容も一個人の受け取り方だと御留意ください😌





◎展示会のざっくりした概要

この展示会は公式からはっきり提示されている通りフィクションです。

「行方不明」という言葉を単なる「=失踪」として使うのではなく、「=社会的文脈からの解放」として捉える思考実験

数々の展示品から「行方不明」という現象の輪郭をなぞり、

「もし本当に行方不明になって異世界に行けたとしたら?」

本人や、そのまわりの人たち、世界はどのようなことになるのかを描いている作品だと受け取りました。


◎各エリアの感想

◈【身元不明】---「ひと」の行方不明

→「行方不明になった人」の背景、家族や知人との関係性などに思いを馳せるエリア。

ーーー

・行方不明になった人は、何かしらの生きづらさを抱えていたんだろうな……というのが何となく伝わってきました。
具体的にそれが何なのかはわからないけれど。

・残された側も色んな人がいました。
家族、友人、知人……
行方不明になった人を探そうとする人、連絡を取ろうとする人、送り出そうと応援する人、逃げ出すのも無理はないと思わせる人。

とても心配してるね……
取り急ぎ用意したような
「使えなかったらごめんなさい 
元気で」というメモとお金。
気遣いを感じる……
こんな親だから逃げ出したんでしょうね……という貼り紙。


・そして薄っすらと、”行方不明になった人物についての記憶や記録が消えている” ような描写がチラホラ散見されて、不穏さを掻き立てます。

不気味で、一見ふざけてるかのような貼り紙。
でもこれが、この人の思い出せる精一杯の表現だとしたら痛々しすぎる。
似顔絵を描こうとしても
うまく形に出来ない、もどかしさの
ようなものを感じる。

行方不明になった人への愛情の反動というか、切実さが胸に迫る……つらい……


◈【所在不明】---「場所」の行方不明

→行方不明になった人が辿り着いたかもしれない ”異世界” を感じさせるエリア。

ーーー

・「飽きた」とか「こっくりさん」とか「異世界エレベーター」とか。
昔のオカルトの香りがして懐かしい。

・私にも、”夢の中で見る実在しない町” があるから、これは共感できたな〜。面白いよね。

「異界駅」

でもこの展示会の文脈だと、 ただの夢ではなく、”前にいた異世界の記憶の残骸みたいなもの” の可能性があるのか……?

・異様なポスター。

「存在しない景色」に関する貼り紙

本人が忘れているだけで、以前に別世界の、その景色の場所に居たのかもしれない……
こっちの世界が、異世界転移後の世界ってことも有り得るっぽい。

・あと、存在感がすごかったのはこの土の山。

でかっ……!

この展示の傍にあった映像は、
山中の廃墟にフラフープが吊るされており、その向こうに異世界が見える……という内容。↓

そんでもって、そのフラフープが会場にあったんですよね……
異世界エレベーターの展示の天井に。ひっそりと。
いっぱいお客さんが画面を眺めてる真上にあるんですよ〜😣
嫌すぎ……!

吊るすのに使っていた紐らしき物も
床に丸められてました……→

・このエリアの展示からは、異世界への入口の片鱗が読み取れました。



◈【出所不明】---「もの」の行方不明

→「行方不明」になった人が残していった物品から、当人の思いなどを感じ取るエリア。

ーーー

・香水、確かに嗅いだことのある匂いだった。

甘くて優しい感じの……

”これが発見された家の小さい子どもがすごく気に入ってた” と解説にあった。
他の家族には忘れられちゃったけど、昔に優しくしてくれた誰かの匂いだったのかもね……

・回送電車からの拾得物として発見されたスマホの中身。
「鬼門を開く方法」を実行する少年たちの映像。
儀式の工程を読み上げる声の幼さが不気味だった。

映像の最後に電車に乗ったあの子の切実そうな祈る仕草。

ただの遊びではなく、異世界に行きたいと思うような何かがあったのだろうかと、背景を想像して胸が締め付けられた。

儀式が失敗してても、成功してても健やかであれ。

・異世界に行く機会を逸して後悔してる人たちもいた。

チャンスを逃すと、次の機会は
ほぼ訪れないらしい。

・このエリアでは「異世界に行く方法が確かに存在する」と確信してる人がいること、「この世界から行方不明になってしまうと、その人に関する記憶も痕跡も消えてしまう」ことがよりはっきりと描かれている。



◈【真偽不明】---「記憶」の行方不明

→「行方不明」になった人物が、どのような末路を辿ることになるのかが分かるエリア。

ーーー

この作品世界においての「行方不明」をふんわり説明すると……

・”「行方不明」になって、どこか別の世界に行きたい” と強く願う者は、条件が整えば、ごくまれに異世界へ行くことができる。

・そして行方不明になったのちは、その人物に関する記憶や痕跡が段々と消えていき、最終的には誰からも忘れ去られてしまう。
元の世界では、最初からいなかったことになる。

・行方不明になった本人も、以前の世界でのことはすっかり忘れてしまう。
(無意識下で、うっすらと郷愁を感じたりする程度は残る)

ーーー
・行方不明になれた人たちは、元の世界でのしがらみから解放され、つまりは人生のリセットができたわけですよね。

でも、それに伴って自分の記憶もリセットされちゃってるから、なんだか空虚な人物像になってしまったように感じたな。

「ある男性の手記」

・「記憶」って、良くも悪くも「自分」というものを形づくる大事なピースなわけで。
これがまっさらになってるから、本当に何も無い。

しがらみもないけど、生き甲斐もなくなったような……?
記憶が無いから「新しい世界に行ったらどう過ごしたい」とか想像してた内容すら覚えてないんだろうな……



◎特別配信映像【正体不明】

〈物語の導入部〉

『行方不明展』の会場で出会った2人の男性。
若い男は中年の男に対し、まるで2人が旧知の仲……それも同級生であるかのように話しかける。
中年の男に心当たりはない。
しかし、若い男の話を聞き流しながら、展示を観て回るうちに……

ふせったーでも書きましたけど、こっちにも感想載せときます。

こちらは9/16(月・祝)まで配信してますので、興味のある方はぜひ!


※ネタバレしてます。ご注意。


ーーー

・台詞のひとつひとつを味わいながら鑑賞。

若い男……カシマ
中年の男……ツナカ

の2人の独白というか、掛け合いを通して『行方不明展』とは何だったのか、を垣間見る感じ。

この展示会で描いた世界観を、ドラマでうまく説明してるなぁ、と思いました。


・展示を見た人ならわかってくれると思うんですけど、ちょうど会話内容にリンクするような展示が映るのが良い演出でしたね。

ウサギとペットボトル、立て看板のあたりは「異世界に行くチャンスを逃して後悔してる」内容。

使い込まれた枕は ”執着の象徴” 的な物品でしたし、ツナカに会いたい一心で、色々と ”行方不明に関するもの” 集めてたカシマを表してそう。

ツナカが再び異世界に消えてしまったと思われるシーンでは、”「backrooms」的な空間に迷い込んで元に戻って来る映像” の展示の真ん前だし。

・”トイレから異世界に行った” という話しのくだりも、違うビルの話だとわかるけど、福島ビルのトイレをイメージしちゃうよね。

・あとは、「カシマは別世界線の梨さん」をイメージしてたりするのかな?とか思った。
幼少期にインターネットを与えられてなかった世界線で。

2人の会話の断片から予想するに、「受験勉強」のある「中学生」って中3……15歳。

そこからツナカは9年の行方不明。

15+9=24

つまりカシマは現在24歳。
梨さんも2000年生まれだと公言してらっしゃるので、24歳でしょ。

・ツナカが異世界でもうまくいってなかっただろうと指摘されたシーン。

今までパリッとしたイメージだったツナカが髪ボサで急にヨレヨレになってて怖かった。

・ツナカが、カシマと時の流れが違ったのって、もしかして行った異世界がひとつだけじゃなかったのかな。

最初に行った先でうまくいかなくて、異世界で再び「行方不明」になってたのかも。

・私はカシマの最後は異世界に行ったパターンだと思いました。
恐怖だけじゃなくて、高揚してる感じに見えたから。
今度こそ、チャンスをモノにしたんじゃないかと。

ツナカの憔悴っぷりを見てもなお、異世界に憧れる気持ちは変わらなかったんでしょうね……

・最後に一般客が展示室にいるシーン。

「行方不明」にまつわる品を集めたせいで「異世界」に近づいた場所。
作中のルールによると、もうカシマが ”行ってしまった” から、ここからは行けなくなったんでしょうけど。

そこで何も知らない人たちが平然と観覧してるのが薄ら寒く感じました。
ふとしたはずみで、誰もが別世界に行けてしまうかもしれないんだよ……と。


◎全体の感想

・タイトルから想像してたものとは違った内容の展示会で、とても興味深かったです。
色々考えさせられるというか……

・私は今のところ幸いにして ”行方不明になりたい” とは思ってないので、もし「異世界に行ってしまったら……」と考えたら怖いですね。
まあ、半日くらい「ひとりきりになって自由にしたい!」とか思うときはあるけど😅

逆に、異世界に憧れる人も勿論いるでしょうし、感じ方は人それぞれ。
人によって受け取り方が違う、面白い展示だと思いました。

・梨さんが小説『6』で ”救いがない死後の世界” を描くことで「次の人生に逃げても、つらいのは一緒なんだからこの人生で出来るとこまで頑張ろう」って思わせてくれたのと通ずるものがあるな……って思った。


・異世界へ逃げたとして、そこでうまくいく保証は何もない。
また元の世界と同じようなことに……むしろマイナスになる可能性だってある。

・でも、時には逃げることも必要な場合はあると思ってる。
命は投げ出さない方向でね。
この「正体不明」の中でも言ってたけど「死んだらそこで全部終わり」だから……

世の中、色んな人がいるわけで。みんながみんな、全てが万事うまくいく人生であるはずがない。
どうにかこうにか生きながら、自分なりの幸せだとか喜びだとかを見いだせたらいいな……と思いました!おわり!

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