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vol.5〈新町・香春神社しめ縄作り〉ー今年の縄もよかね
みんな元気しとるやか?って心配が、毎年この日に晴れるっちゃんね
香春町の代表的な山である香春岳。その麓に佇み、歴史と伝統ある文化を地域と共に歩んできた香春神社は、地元に愛され、長きに渡りその姿を変えることなく現在に至ります。
今日は年に一度のしめ縄作りの日。朝靄の境内に地元の方々が集まり、息つく間もなく早々にしめ縄作りの準備に取りかかります。「毎年十二月第一日曜日は、年納めに翌年のしめ縄を作るんよ。この作業が始まると年の瀬を実感するっちゃんね。」と大森さん。香春神社運営委員会の会長を務め、祭りや式典、境内の清掃など、香春神社に携わるほぼ全ての行事を担うといいます。「伝統を守っていかないけん。全員そんな気持ちで集まってるっちゃん、みんな一生懸命にやりよる。」大森さんの言葉通り、終始作業の手は止まりません。
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このしめ縄が一年間いろんな景色をみてくるんよ
しめ縄を作るための藁はもち米の稲を用います。一般的な稲藁に比べ粘り気が強く、しなやかなため、張りのある力強い縄が出来るといいます。「楽しいですよ。出来上がりを想像しながらしていると作業が捗るし、出来るだけ綺麗な藁を作ろうと思えるんです。」そう話すのは祖父の代から香春神社にしめ縄用の藁を提供している筒井さん。
日当たりが良いという自身の棚田の一角にしめ縄用のもち米を植え、しめ縄作りに備えて大事に育てます。また、刈った稲は二ヵ月もの間、神社の境内で乾燥させながら選別し、藁束を作っていきます。藁束を手作業でほぐし、強く真っ直ぐなものだけを残すと四分の一以下になるといいます。「ほぼ毎日作業をしに来ていますよ。稲刈りから出来上がりまで手作業を意識しています。一本一本、目で見て良いものだけを選びたいですからね。」昨年以上に良いしめ縄を作りたいという思いから、藁の選定はしめ縄作りの前日まで続くそうです。
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作業を終えて、みんなで一杯やるのがまた楽しいんよ
本殿に供えられる大きなしめ縄は、この道四十五年の大ベテラン深野さんが手がけます。両手で体重をかけながら編み終えた綱部分を締めあげ、また次の藁を編んでいく作業の繰り返し、時折ポンポンと綱を叩き「今年の藁はすごくいい」と深野さんが何度も口にすると、そんな台詞が聞こえたのか否か、背中越しで筒井さんは照れ笑いを浮かべます。
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”地元の神社がバシッとなっときゃ 気も引き締まるやろ 神様も喜んでるんちゃないかな”
しめ縄の完成が近付くと、息を合わせ「せーのっ!」の合図で手際よく古いしめ縄を取り外し、取り付けの準備に取りかかりますが、大きなしめ縄を持ち上げるのは重労働。若手の嶋井さんが積極的に力仕事にかって出ます。「若い人が率先してやってくれるきね、助かっとるんよ。」と深野さん。小さい頃から神社によく遊びに来ていたという嶋井さんは、先輩方から可愛がられ、気付けば祭事やしめ縄作りを手伝うようになっていったといいます。
「将来は自分が先輩達の役目を担っていかなきゃいけないって思っているんです。だから自分に出来る事なら率先してやるようにしているんですよ。」こうして地域行事に関わる事が今はとても楽しいという嶋井さん。「何十年、何百年と、この伝統が続くといいですね。」という言葉からは、地元地域がこの先もずっと豊かでありますように、といった願いが込められているように感じます。
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旧中香春小エリア・新町周辺
江戸時代には小倉領内の宿場町として栄えた香春町。香春岳と金辺川に挟まれたこの地域では、歴史的な建造物や史跡が幕末から明治初期の城下町の面影を今に伝えます。
香春町って
春が香る町と書いて「香春町」。福岡県の筑豊地域の北東部に位置し、石灰石の産地として日本の近代化を支えてきました。
町のシンボル「香春岳」をはじめ、山々に囲まれた里山の暮らしは、都心部からのアクセスの良さもあって、登山好きや、歴史好き、手作り暮らし好き、半農半X志望者などさまざまな個性を惹きつけます。
(アクセス:福岡市から約70分、北九州・小倉から約50分)