hacomono セミナーレポート
【総合型×専門型から紐解く パーソナルトレーナーの「在り方」と「可能性」】
多様化するパーソナルトレーニング
より幅広い方が利用しやすい環境に
1:1でしっかりと顧客と向き合うパーソナルトレーニング(以下、PT)。一人ひとりの顧客に合わせた指導を行うことで成果が出やすい一方、参加者にとっては比較的高額な価格帯がネックとなっていました。
そこで生まれたのが、セミパーソナル。トレーナーにとってはグループレッスンより一人ひとりへ目が行き届きやすく、参加者にとっては価格が抑えられるとして、トレーナー1人が2〜3名を指導するという形式が生まれました。そこから現在ではさらに価格帯やサービス内容が多様化し、よりPTが身近になるとともに、トレーナーの活躍の場が大きく広がっています。
メガロスでは、業務委託ではなく社内でトレーナーを育成しており、日ごろから慣れ親しんだスタッフがトレーナーとしても活動することで、より魅力を伝えやすくなると考えています。一方で、そこには総合クラブならではの次のような事情も含んでいます。
それは、会員様の入会目的。「健康になりたいから」という漠然としたものであったり、明確であっても「ダイエットのため」「関節痛を治したい」など幅広い内容が寄せられます。そのなかで、総合クラブに「PTを受けたいから」という理由で入会される方はほぼいません。
そのような方が追加費用を払ってでも「PTを受けてみたい」という気持ちになるような行動変容を起こすにはトレーナーとの信頼関係が重要であり、そのためには日ごろから関係を深めておくことが大切と考え、社内で育成に力を入れているようです。
しかし、それだけではPTに興味はもっていただけても、継続はなかなか難しい。目的が多種多様である分、トレーナーにはスキルだけでなく高い提案力が求められます。繪村氏もその点について「一人ひとりの方に対して“何が”“どうして”必要なのか、それをすることで“どんな素晴らしい未来が待っているのか”をきちんと提案できる、多くの引き出しをもったトレーナーの育成が必要」と、難しさを語っていました。
選ばれる施設になるために
コミュニケーション力の需要が高まる
明確な目的をもって入会される方が多い専門業態では先のような難しさはないものの、総合業態とはまた異なる悩みを抱えています。この10年で施設数が大きく増え、“ボディメイク”“健康増進”など、専門性で差別化を図らなければ選ばれることが難しい時代となっているのです。
鈴木氏は、このような時代のトレーナーについて、次のように強調します。
「スキルはもちろん重要だが、職人気質が強すぎてコミュニケーションが苦手ということでは結果的にお客様にご満足いただくことは難しい。これからは高いコミュニケーション力をもっていることが重要であり、施設としてその教育に力を入れられるかも、成長できるか否かの分かれ目になると思う」
PTがより身近になった今、満足できなければお客様は気軽に店舗を変えてしまうでしょう。
実は、筆者も継続して同じトレーナーさんのPTサービスを受けています。とても飽きやすい性格ですが、続けられているのはやはりトレーナーさんの提案力と実際に効果を感じているから。最初のカウンセリングで「飽きやすい」と伝えているためか、様々なツールを使い、多種多様なメニューを提案してくれるほか、身体の問題点とその原因、改善案をわかりやすく説明してくれます。もちろん、趣味の話など他愛のない会話も楽しく、コミュニケーション力もばっちり。この辺りが継続できている理由なのだと改めて感じました。
ちなみに、筆者のトレーナーさんは、自宅でできるメニューも作成もしてくれます(こちらも定期的に新しいものを提案してくれる)。「短くないとちょっとやる気が…」と伝えたところ、わずか5分程度ながらもしっかりと運動した気になれるものにしてくれました。
結果、食事制限などせずに体重は4kg減。身体が引き締まってきたことが嬉しく、かつてはほぼ運動していなかったところから、今ではレッスンを定期的に受けなければ不安になるほどです。先ほどの話でいうところの、まさに行動変容が起こされた結果といえるでしょう。
1人でも多くのトレーナーが活躍できるように
経営側は働きやすさとスキルアップを目指せる環境づくりを
さて、総合クラブ、専門業態におけるPTのこれからについては、トレーナーの働き方が多様化しつつあるなかで両者ともに、よりトレーナーが働きやすく、活躍できる環境整備に取り組んでいきたいと語っていました。
例えば総合クラブの場合、目的が幅広い方が集まる分、対応には難しさがありますが、繪村氏はその点がメリットであると考え、「多種多様な方に対応することで、スキルの向上につながるはず」と述べていました。
続いて鈴木氏は、それぞれのトレーナーがたくさんの会員様に選ばれる存在となるよう取り組んでいると語りました。同社では教育担当者がそれぞれの実際のセッションをチェックし、よかった点や改善点を小まめにフィードバックしているそうで、このことは既述したコミュニケーション力の向上にもつながるはずです。
自分が考えている強み・弱みと周りから見たそれは意外と違っているもの。さらにいえば、対応するお客様によっても、また時間を経ても変わるものだと思いますから、定期的に第三者がチェックしてフィードバックするというフローも有効ではないでしょうか。
特定の人物だけでなく、皆が人気トレーナーとなれば、お客様にとっても選択肢が広がることになりますし、施設の活性化にもつながるでしょう。
いまや施設が多様化したことで、トレーナーも理想とするライフスタイルや目的によって働き方を選択できる時代となりました。様々な経験を積むことを目的にフリーランスとして活動してもよいと思いますし、独立を目指して理想とする経営者のもと、1つの施設でじっくりと取り組んでもいいでしょう。この点において鈴木氏は「自分が目指す方向性ときちんと合っている施設を選ぶことが大切」とアドバイスを送ってくれました。
なお、最後に課題として挙がったのは「女性トレーナーの少なさ」。両者ともに、獲得の難しさを述べていました。育成方法についても、男性と女性では適した方法が異なるため、その部分を突き詰め、ロールモデルをつくることにも力を入れていきたいと言います。
かつてよりもトレーナーの活躍の場が広がっている現在。まだまだ男性が多いトレーナー業界ですが、性別に関係なく働きやすい環境整備を目指している施設も増えています。ぜひ女性トレーナーを目指す方が増え、それとともにロールモデルとなるような方がたくさん生まれてくれたらと思います。
そのことが、結果的にトレーナーが輝くだけでなく、人々の運動・健康への意識を高めることにつながっていくことでしょう。
※セミナーの本編終了後には希望者のみに残っていただき、10分ほどの「アフタートーク」が行われました。よりリラックスした雰囲気のなか、本編では語れなかった内容などが紹介され、盛り上がりました。