『音MAD』はいつ生まれ、いつ普及したのか〜10年前の音MADタグ昔話〜
こんばんはー! 音MAD最終報告
(その前に)
※この記事は音MAD Advent Calendar 2022 12月5日目の参加記事です!
(なんなんすかねこの無駄な引用)
ここ数年で音MADが音MAD界隈外でも話題になったり、CMになっちゃったり、テレビなどメディアでも音MADというワードが出たり、公式が音MADについて言及・公認なんかしちゃったりすることで音MADという単語自体の認知度が高くなりました。
そもそも、個人的には音MADはアングラなものだと思っていたので、こうやって表に出るとなんだかむず痒い気持ちになりますが、著作権等の問題さえクリアしていたら立派な作品になるようで。
まぁそれはそれで話が長くなるので置いといて……。
先日、マシュマロにこんな質問がきてました。
たしかに、音MADの歴史って音MADwikiやニコニコ大百科、フリー百科事典wikipedia(無能)でもあっさりとしか書かれておりません。
それどころか、現在の『音MAD』という言葉の起源についてはどこにも書いてありません。
なので、無駄に(空白の時期もありますが)2008年から14年間も、この界隈に居座り続けている老害らしく、ここは昔話をするべきだろうなーととりあえず思いついたのが『音MADタグ』の普及、そして『音MAD』の起源?に関する話でした。
何度かどこかで喋ったことはありますが、大昔の話なので本当に自分の記憶と合っているのか不安になり、今回ちゃんと調べ直してみようと思いました。
⚠️その前に!⚠️
音MADタグ普及過程記録
↑をご覧ください。
かれをばなさんの記事は音MADスレなどでどのように「音MAD」タグ論争を中心にどのように普及していったかをまとめてあります。
こちらも重要なので是非ご覧ください!
ではまず、こちらの記事でも引用されているボトル/bobineKSさんのツイートを。
2010年1月時点でこれです。これなんです。
ということでこの記事では『音MAD』タグがどのように生まれていったか、またどのように普及していったのかを調査してみようと思います。
なお、勝手に結論付けてますが、あくまで自分の調査の結果なので全てが正しいとは限りません。念のため。
では前置きはこれくらいにして本編スタート!
1.音MADタグはいつ普及したのか?
さて、まず音MADを投稿するときにほぼ必ず「音MAD」タグは付けますよね。ですが、2007年〜2009年頃の音MADを探すとき、音MADタグが付いていなかったり、タグロックされていない動画が結構あります。
私が2008年頃に投稿した音MAD(削除済み)でも素材名、曲名しか付けてませんでした。
何故かと言いますと、音MAD全体の共通タグが無かったからです。
今でも名残りとして『遊戯王:音系MAD』『音声MAD@アイマス』など『〇〇:音系MAD』のようなタグがあります。(今はもうあまり使われてないと思いますが……)
音MADのニコニコ大百科記事でも2020年7月22日に音MADに統一されるまで『音系MAD』という表記でした。音MADwikiも以前は音声MADwiki、音MADスレも音系MAD総合スレッドという表記です。
しかし、
音MAD晒しイベント(第1回:2008/05/31)
週刊音MADランキング♯1(2010/03/23)
月刊音MADランキング#1(2008/06/22)
と、意外とランキングやイベント、スレ、wiki、動画で表記がバラバラでした。
更に
【合作】題名のない音MAD鑑賞会 #15.5(2009/03/20)
【合作】音MADでメドレー「いろはかるた」
(2009/11/11)
『メドレー「音MAD」
(2009/12/12)
と、動画タイトルでは音MAD表記です。
何故でしょうか。
ということで、この件について昔から音MAD界隈にいて、当時の界隈に詳しい三長老に色々訊いてみました。
・ユビュちんちらさん(https://twitter.com/Ub2_chilla)
音MAD晒しイベントを始めた張本人であり、
週刊音ランキング初代編集者、
音MADwikiの初代管理人のユビュパンマンです。
・かれをばなさん(https://twitter.com/kareobana)
音MADタグ普及過程記録を書いた方。
当時、音MADタグ推進派の一人だった方です。
・皿さん(https://twitter.com/saradisk)
音MADといえばこの方。
今現在一番昔から音MAD界隈にいる一人です。
今回の調査に関して、お三方にお話しを聞いたりいろいろご協力していただけました。ありがとうございます!
注意!
色々ごちゃごちゃした記事になります。お気を付けください。
まずは、ユビュさんへのインタビューから。手刀
ユビュさんインタビュー
Q1.「音MAD」と使い出したのはだいたいいつ頃かわかりますか?
ユビュ:当初から音MADと呼んでいた。
Q2.「音MAD」タグに統一しようという放送の流れから 早速、かれをばなさんらが自らの動画に音MADタグを付けてタグロックしていき、 他の音MAD作者や音MAD視聴者も、様々な音MADに属する動画に音MADタグを付けて回るいわゆる『音MADタグ統一普及運動』が行われた(2010年)が、ユビュさんはニコ生での音MADタグについての統一の話は覚えていますか
ユビュ:なんかいろいろあって推進派の人たちが普及させた?
(りーふさん、かれをばなさんら)
タグ普及運動についてはわからない。
2010年に週刊音MADランキングが作られ、そのときに音MADタグが普及したんだと思う。
週刊音MADランキングのため、見た人(視聴者層)がつけていった。
※ちなみにユビュさんは音MADタグ非推進派だったそうです(後述)
Q3.2007年~2009年頃の音MADスレやTwitterの音MAD界隈では普通に「音MAD」と呼んでいましたか?
ユビュ:音MADとしかよんでいなかった。
※週刊音ランスタート(2010年)前は音MADタグ付いてる動画が多くなかった。
※2009年年末には第1回音MAD10選が行われている。
Q4.ユビュさんが音MADという単語を使い始めたきっかけは?
ユビュ:使い始めたきっかけもなにも最初から音MADと言っていた。
初期から音MADと言っていた。きっかけはない。スレがきっかけかも。
ユビュさんによる結論:スレの影響がでかい。
次に、かれをばなさんに訊いてみました。
かれをばなさんインタビュー
Q1.第1回音MAD晒しイベントの時点で既に「音MAD]という呼称が使われていましたが、当時はまだ音系MADや音声MAD、音遊びなどと呼ばれており、音MAD動画を探すにも「素材名」か「曲名」で調べていた状況だったと思います。そこで、覚えてる限りで構いませんので「音MAD」と使い出したのはだいたいいつ頃かわかりますか?
かれをばな:僕が音MAD界隈に少し足を踏み入れたのが2008年の7月とかで、そもそも音MAD以外の呼称で呼んだことはないですね。
音MADスレ自体は、1-8まで音声MAD総合スレッドとなってて
音MADwiki自体は多分これにならって、音声MADwikiにしてると思うけどhttps://w.atwiki.jp/onseimad/
Q2.音MADスレでは初期(2008年)から音MADタグ普及にまつわる議論?がたびたび行われていたと、かれをばなさんの記事から読み取れますし、当時(2009年~2010年頃)のニコ生でもコメントではいらんやろ派と必要派で別れていたようです。(ユビュさんは「いらんやろ」派、りーふさんは推進派)
かれをばなさんは当時から乗り気で推進派のほうだったそうですが、
何故「音MAD」タグ普及を推進したのか、また他にも「音系MAD」「音声MAD」などがある中、何故「音MAD」タグにこだわったのでしょうか?
Q3.かれをばなさんが「音MAD」という単語を使い始めたきっかけはなんでしょうか?
かれをばな:Q2, 3は、音系MAD、音声MAD、音MADの中でなぜ音MADに収斂したのかという問い立てだと思うんですけど、そもそも音MAD以外の単語を使っている時期、界隈があったのかというのがまず疑問としてはありますよね。
かれをばな:ニコニコ大百科なんかは音系MADで項目立てられてて、最近になって音MADに変更されたけど。
キーワード 音系MAD を含むタグの検索結果
音系MADの編集履歴 (初版:2008/05/14)
(※初版から「音系MAD」だったが、初版~第三版まで「音MAD」となっているのはニコニコ大百科の仕様のようで最初から「音系MAD」として書かれている https://dic.nicovideo.jp/rd/a/%E9%9F%B3mad/1044/1047)
かれをばな:音MAD晒しイベント自体は、最初から音MAD晒しイベントと呼んでて、
かれをばな:まぁこれで呼称が方向づいた感はあるけど……。
かれをばな:ただREAPERを広めたとされるこの動画は音系呼びなんですよね。
かれをばな:音MADコミュも当初は「音MAD / 音声MAD」だったっぽい。スレ意識で後者も入れたのかも。
Q4.「音MAD」タグが普及した要因の一つは「週刊音MADランキング」だったこととユビュさんからお聞きしてますが、
かれをばなさんの視点からではいつ頃から(何がきっかけで)タグの普及が始まったか覚えていらっしゃいますか?
かれをばな:2010年1月に音MAD研究コミュでこの音MAD系ジャンルをタグ検索した際、わかりやすいように「音MAD」タグに統一しようか、というような雑談放送
https://live.nicovideo.jp/watch/lv9650234
2010/1/14(木) 2:27放送
かれをばな:これだとは思うんですよね。
このように音MADタグ統一については音MADスレでも度々議論に上がっては固定化されず……といった流れでしたが、ユビュさんの『音MADカテゴリ分けなどについて雑談』(2010/01/14)の放送中での議論をきっかけに普及したと考えられます。
なお、この放送では
・ユビュさんは「いらんやろ」派
・コメントでもいらんやろ派と必要派で二分していた
ということがわかりました。(コメントログはユビュさん提供)
(また、この放送は当時私自身も見ていて、放送中にかれをばなさんが爆速で自作動画に「音MAD」タグロックをしていった記憶があります。自分の動画もそれに次いでタグロックしたはず)
さて、この2010年1月14日の放送中〜後の音MADクラスタのツイート。
と、音MADタグ付けが行われ、当日(2010年1月14日)には既に1000件を超していたようです。
はやい!!
hacoco:2010年1月14日をとりあえずXデーとみるべきですかね。
かれをばな:フィルさんとかもいつか忘れたけど自分の動画にタグつけてくるかみたいなことを書いてた記憶があるんだけど、アカウント変えてるから追えないんですよね。
https://twitter.com/otomad (2010/01/07) (音MADタグの動画を拾うbot)
これは僕が作ってて、
その後のユビュさんが作ったタグ「音MAD」を含む動画を対象としたランキングも、明確に音MADタグを流行らせようという意図はあるわけですよね。
2.じゃあいつから音MADタグができたのだろう?
2010年以前の音MADクラスタの音MADタグ関連のツイートや音MADスレのレスがこちら。
(スレでの言及は多いので抜粋)
現存最古の音MADという単語を使っているツイート
自動販売機の中の人さんの2008年の音MADについての言及
現在ではアカウントを消されてる方(特に元音MAD作者)が多いのでこれ以上掘れないのが残念ですが、断片的には見えてきました。
更にユビュさんの証言では、
ユビュ:自販機さんが最初から「音MAD」と呼んでいた為、皆それに倣い、使っていた。
※ユビュさんの音MADは、2010年には音MADタグロックしている。週刊音ランの影響大。
と、仰ってます。
さて色々引用してみてごちゃごちゃしてきたところで、経緯を簡単にまとめるとこうなります。
(紀元前)
・ニコニコ動画以前の2ちゃんねる等を中心としたMADテープやFLASHの隆盛期。(?〜2006年あたり)
・2004/02/01頃、2ちゃんねるガイドライン板オンドゥルスレに『巫女巫女オンドゥル』出現。
すでにあったMADテープ、MADニュースと同じく「MADネタ」と呼ばれている。
手法としては今の音MADと変わりありませんが、この当時まだ音声MADや音系MADなどという言葉すらありませんでした。
(えむくろさん談)
↓
そこからしばらくして
初期から音MADと呼んでいる人は呼んでいた。
音系MAD・音声MAD呼びの人もいる。
この辺はTwitter以前のmixiなどで使われていたとのこと。
ニコニコ動画サービス開始
(2006年12月〜)
↓
当初、ニコニコ動画では音系MADや音声MAD、音MADなどに共通タグはなかった。
(2006~2008年ごろ)
↓
音MADタグは最初は30件ほどしかなかった。(音MADスレ3>>280より)
(2008/08/11ごろ)
↓
音MAD晒しイベント開催
(2008/05/31~06/01)
↓
月刊音MADランキング開始
上記の音MAD晒しイベントと月刊音MADランキングにより音MADタグが付けられ始めたと思われる。
(2008/06/22)
↓
自販機氏「去年まで音MADなんて名前ついてなかったのになー」
〔2008/12/13〕
↓
江戸氏「音MADタグ見ると結構知ってる作品あるなぁ 次回あげるときは付けようかな」
(2008/12/23)
↓
皿氏の「音MAD」タグロックは2009年から
↓
・音MADタグで検索すると655件出てくる。(音MADスレ>>799より)
(2009/02/09)
↓
くぎゅううう氏「ジャンル曲問わずに見たい作者くらいにしか一般的には需要がないかも」「『音MAD』タグが一番普及している」
(2009/03/15)
↓
『音MADカテゴリ分けなどについて雑談』放送
ホワイトフォンテン氏「音MADタグが1000件いっている」
(2010/01/14)
↓
週刊音MADランキング開始
(2010/03/23)
↓
ここで「音MAD」タグ(+ロック)が完全に普及し、定着したと思われる。
結論:週刊音MADランキングによって普及・定着した
=音MADタグがあるとこのランキングに入りやすい
その後→有象無象が付けだした。
さらにはこんな例も……。
私も当時古い音MADに「音MAD」タグを付けて回った一人でもあります。
さて、ここで皿さんに音MADという単語をいつ頃から使い始めたのかなどを訊いてみます。
皿さんインタビュー
Q1.『音MAD』という言葉をだいたいいつ頃どのようなきっかけで使い始めましたか?
皿:私が音MADという言葉を最初に見たのは盗んでいきましたシリーズのスーパーマリオワールド素材の動画(探しても見つからない)の投稿者が投コメに音MADって書いてあったところからですね。2007年の8月~11月のどこか(記憶があいまい)
(筆者注:恐らく『孔明は大変なマリオを葬っていきました』(2007/10/28)か?
※投稿者コメントには「音声MADです。」と書かれている。これ以前に同じようなスーパーマリオワールド×盗んでいきましたシリーズの動画があった可能性もあるが、今のニコニコでは削除動画を探しづらいので不明)
Q2.皿さんは直接関係ないかもしれませんが、それまで音MADには統一のタグがなく「素材名」や「曲名」など、はたまた「遊戯王:音系MAD」などバラバラな状態でタグ検索する状況で不便だったため、2010年にニコ生でいわゆる『音MADタグ統一運動』が起き、かれをばなさんなど各作者、視聴者がタグを付けて回ったと記憶しておりますが、その出来事について何か覚えていることはありますか?
皿:あんまり記憶ないっすね
2009/02/26投稿
皿:この動画はタグロックして投稿してたと思います
私のタグロックは2009年途中からです。
Q3.最後の質問ですが、ユビュさんの回答では週刊音MADランキングによって普及した(音MADタグが付いているとランクインしやすい)と仰っていましたが、皿さんからの目線ではいつ頃から音MADタグが普及したとお考えでしょうか?
皿:言葉が定着したのは"音MAD晒しイベント"が先かな
ユビュ:コメント見る限り音MADタグつければ楽勝で週刊音MADランキングに入れるってやっぱり言ってるっぽいですね。
ユビュ:週刊ランキングの後に音MADタグつけだしたのは意識低い層
ちなみに……
ははぁ~(平伏)
皿:タグロックやりはじめたのは多分私が最初なのだけど、音MADランキング始まる前は音MADタグで検索して30件くらいだったと思う。
ゆびゅさんの言う通り、タグロックの文化が根付いたのは音MADランキングが出始めた後ですね(音MADランキングのりたさ)
音MADタグの普及については、ここらへんで切り上げましょう。
それでは…………。
3.「音MAD」という単語どこから生まれたのか?
マシュマロにもあった質問です。
「音MAD」という単語はいつ生まれたのでしょうか。調べてみましょう。
ユビュ:スレの影響がでかい。
また、自販機さんが初期から音MADと言っていたので皆使うようになった。
hacoco:初期からいるTOTOの人は独自で「音遊び」って呼んでますね。
かれをばな:「MAD」としてひとくくりにされてたのが分化するために、IOSYS系以外のも色々作られるようになる必要があった、そういう時期を待つ必要があった的な感はある。
ユビュ:音MADスレができたころには音MAD作者は、音MADというジャンルを認識していて自分が音MAD作者だという自覚はあったんですよね。スレに集まってきているんだから。
かれをばな:2007年後期から2008年前期にかけての変化なのかな。
そもそも、素材についてないかもだけど…。それは作者単位でチェックするしかないな。
ユビュ:遊戯王とかは検索避け目的じゃなかったですっけ? なんかあの辺は自治ルールが厳しかったような気がする。
この『音MAD』が普及し、その代わりに『音声MAD』『音系MAD』などの類似単語が徐々に消えていきます。
理由は様々でしょうが、
・呼び方や書き方的に「音MAD」と略したほうが楽だから説
・曲に合わせて声や様々な音素材を弄る技法なので「音声」や「音系」よりかはざっくりと「音」と言ったほうが最適説
・MADや映像MAD、静止画MADとの境界がハッキリし始め、音MAD(曲にのせて音素材を弄るもの)にあたるものも増えてきたのでそれら全部を包括して「音MAD」と統一し、他のMADと分化していった説 など
考えれば考えるほど説は出てきますが、
それよりもいつから『音MAD』と言われるようになっていたか、当時のTwitterや2chのニコニコ関連スレなどを掘り返して見てみましょう。
(墓暴き)
2006~2009年頃ですが、音MAD呼びと音系MAD呼びが混在していたこともTwitterや2ちゃんねるなどからうかがえます。
こちらでは「音系MAD」と記載。
この二つは「音MAD」
2007年12月のランキング工作対策スレのレスでは「音MAD」
2008年2月の予想スレの書き込みでは「音声MAD」
同日の予想スレの書き込みでは「音MAD」と書かれています。
特に名称が定まっていないためか、同スレ内で表記がバラバラになることが多々ありますが、(意味は通じるので)特に誰も気にしていない模様。
2007年のニコニコMAD晒しイベントスレは「音声MAD」でしたが、8月に「音MAD」表記が出てきました。
これらのレスは全て同じ2007年の「ニコニコMAD制作初心者向けスレ60」からの引用です。
同じスレですが、人によって「音MAD」「音声MAD」「音系MAD」とバラバラですが、こちらも誰も気にしていない様子。
(ただ、このスレの後半からだんだん「音MAD」が主流になってきています。理由はただ単に略し始めただけで特に理由はなさそうです)
ちなみに、ニコニコ動画で最古の音MADはこちら。
もちろんですが、音MADタグにはタグロックされてませんし動画説明文にも音MAD関連の言葉はありません。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm662
2007/03/06投稿
また最初期の音MAD講座では、
と、音MAD講座ですが、「音MAD」「音声MAD」「音系MAD」と表記されていません。ここら辺でもまだ呼び方が定まってなかったどころか、音声編集とMAD編集は別モノとして見られていた様子が窺えます。
次に、かれをばなさんも言及していたREAPERを広めたこの音MAD講座では、
と、タイトルでは「音系MAD」
動画内の説明では「MAD」と表記しています。
2007年の6〜8月には「音MAD」という単語がちょくちょく使われて出していますが、それでもまだ定着してないのか、「音MAD」、「音声MAD」、「音系MAD」と呼んでいる人がそれぞれいることがわかります。
そして、2007年の後半11月~12月頃には「音MAD」派が増えてきています。
同じく、「音MAD」タグについても音MADスレにて2008年頃から2011年という長期間(Part1~Part37)、ポツポツと議論がなされましたがこちらについてはかれをばなさんの音MADタグ普及過程記録を参照ください。
また、お三方から聞いてる中で、ユビュさんから「Twitter以前はmixiなどで交流をしており、そこでは普通に音MADと呼んでいた」と証言がありました。
Twitterは早くても2007年頃からなので、それ以前からの人たちの交流の場はmixiなどだったようです。
調べたい! ということで、mixiもちょっと探ってみました。
流石に2006年だとまだMADテープ表記や単にMADと呼ばれているだけの模様。(というかこのコミュニティはMADの原点である、MADテープ愛好家達のコミュなので性質が違う)
そしてmixiにある音MADコミュは「【ニコニコ動画】音声MAD」でした。
コミュができたのは最古の書き込みから恐らく2008年5月のようです。
コミュ内での書き込みでは「レスリングMAD」「遊戯王MAD」「KBCMAD」「キワミMAD」等「素材名+MAD」で呼称していて、更にそれを包括する「音MAD」のような呼称は「音声MAD」「音系MAD」「MAD」のいずれかのようです。
これ以前にもコミュニティがあったかもしれませんが、消えているのかどうかも不明であり、あとは個人の日記や個人間のやりとりなど外部からは見えない仕様も多く、これ以上の調査ができませんでした。無念……。
しかし、様々なことが分かってきました。
4.まとめ 音MADタグ昔話~『音MAD』はいつ生まれ、『音MAD』タグはいつ普及したのか~
まとめ①『音MAD』いつ生まれたのか
ニコニコ動画以前、個人間のやりとり(仲間内でMADテープを作って遊んで聞いて楽しむ)や、ネットの普及でなんやかんやあって2ちゃんねるができました(ここらへんはもっと詳しい記事があるのでそちらに)。その頃はMADテープ、MAD、音系(同人用語)、FLASHなどで分かれていましたが既に今でいう音MADらしいものは存在しています。
ニコニコ動画ができた2006~7年代から2ちゃんねるなどでは『音MAD』と呼ぶ人がいました。しかし、ごく少数。まだ主流ではありませんでした。
また、10年以上前のTwitter以前の音MAD作者達は既にmixi時代から『音MAD』と呼んでいたと言っています。しかし、調べたところ発見できる範囲では音MADの表記は見当たらず。見つかったのは『MAD』『音声MAD』『音系MAD』でした。
ユビュさんの証言では「自販機さんが使っていたから」皆それに倣って使い出した……とのことです。
「曲に合わせて素材の音を弄るものでもあるから今まで言われているMAD(MADテープやFLASHなどの系譜)とは違う」
あとは、ほぼ同じ音楽ジャンルではある「Nerdcoreなどと同じ扱いにするのはちょっと……」という配慮された?事情や、初期は主に既存曲を使ったものを指すのでちょっと違うものという事もあり、『MAD』→『音声MADor音系MAD』→『音MAD』に変化していったなどの推測ができます。
よくあるだんだんと単語を省略していく感じですね。
つまり、ニコニコ動画の発展とともにジャンルの分化と合わせて、『音系MAD』『音声MAD』などと呼んでいたものが自然と統合され、簡略化した結果『音MAD』になった説が最有力ということに(しておきましょう)。
(なんかもろもろの経緯とか事情をぶっ飛ばして普通に音MADと呼んでいたっぽい感じもありますが……)
これが現在の調査・聞き込みによる結果となります。
なお今後新事実が出てくる場合があり得ますので、2022年12月5日付の調査結果としておきます。
「実は当時……」や「こんなの見つけた」など更なる情報提供していただける方がいらっしゃる場合はぜひ私のDMまたはマシュマロにご連絡ください!
まとめ②『音MAD』タグはいつ普及したのか
これについては割と明白となりました。
音MADのカテゴリ分けなどについて雑談
https://live.nicovideo.jp/watch/lv9650234
音MAD研究コミュニティ
2010/1/14(木)
この2010年1月14日のニコニコ生放送での議論を機に「音MAD」タグ統一運動が起き、「音MAD」タグの固定・普及していきました。
それ以前から呼称としては『音MAD』と使われていましたが、タグとしてはまだ根付いてなかった状態であり、スレなどでは散々議論に上がっていましたが、2ちゃんねるという掲示板の性質上、誰かが決めるということがあんまりなされないため、このような放送の場で人が集まった時に一気に決まりました。
そして週刊音MADランキングが開始 (2010年03月23日)。
このランキングは「音MAD」タグがついている動画が対象な為、これによって完全に普及・定着したと考えられます。
つまり、議論を起こしたニコ生でのタグ統一運動から、
わずか2か月と10日ほどで『音MAD」タグが半義務化、
普及・定着したということなんだよ!!!
いやはやとんでもない情報の超スピード。さすがインターネット……。恐ろしや……。
(この格言引用いる?)
5.さいごに
あとがきのようなもの
とんでもなく長くなってしまいましたが、今では皆が音MAD、音MADと普通に呼んでいますが、このような色々な経緯があったのですね。これがもし、別の名前で定着していたとしたら……どうなっていたんでしょうか。別世界線の人、教えてください。
そして「音MAD」と同じようにネットの言葉どころか言葉自体も出典がはっきりしない限り、出元がわからなくなるもの。これは全世界の全言語の言葉共通に起きていることです。
たかがネットの文化や書き込みでさえも出典が不明のものが多々あります。デジタルタトゥーなどと言われていましたが、大元のプロパイダが終了すると魚拓をとっていない限り、もう写経して保存している人のものでしか見ることができないのです(拓也の怪文書のように)。まるで、仏教経典や古典物語のようだぁ……。
一生残るようなものは石に書かれたものか、大事に保存されていた紙、誰かが写経し続けていったものなどのみです。だいたい300年前くらいから160年前くらいの江戸時代の大衆の読み物である瓦版(現在の新聞)でさえ、今現存しているのは少ないのです。ネットの文章や動画というようなデータは一生残るとは限りません。
今回の調査でわかったことですが、やはり言葉の発生というものや、文化の定着というものはいつもあやふやなところから始まるものだとまた一つ確信させていただきました。
そして、言葉は今でもどんどん変化・省略されていくという事がハッキリわかりました。
なお今回、なんと9月頃から取材などでご協力していただいたユビュちんちらさん、かれをばなさん、皿さん、そして勝手に引用させていただいたTwitter及びニコニコ動画などの投稿者の皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました!
一応、これからも調査は続けていくつもりではありますが、もっといろいろな古参だからこそできる音MADの歴史や変なことも研究もしたいし、どちらかというと失われた謎の素材を探索したい……ってところも本音だったりするのでゆっくりちまちまやっていこうかと……。まぁ私は普段は変な音MADを作ったり、ニコ生で苦行したり、たまに解説役やってたり、AIで遊んでるろくでもない趣味人であり、音MAD研究者でも音MAD歴史家でも文化史研究者でもないんで、そこらへんはちゃんと調べられる研究者達に託します。
言葉と文化は大切に。
いつかは消えてしまうかもしれない音MADも大切に。生きようね!
とかなんか偉そうなこと言ってますよこいつ。後でボコられそう。
※この記事は音MAD Advent Calendar 2022参加記事です。明日(12月6日)もお楽しみに!
※追記・修正を大幅に致しました。ご指摘、ご協力いただき感謝感謝です!(12/15〜12/20)
終
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