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話が通じない恋人と別れて、一人旅をした話。③
今更かもしれないが、彼を否定するつもりはない。
人は、それぞれ違った人生を歩み、違った価値観を持っているものだ。
彼は、「お金」が問題の根底にあったかのように思っているかもしれない(実際本人がそう言っていた)が、私は別に、必ずしもそうではないように思う。
正確には、そうであって、そうではない。
人間関係は、そう単純なものではない。
問題は、そのすべてであって、そのいずれでもない。
何かが違ったら、この結末を迎えなかったかと言われたら、そういう訳でもない。
きっと、この組み合わせじゃ、どうあってもダメだったんだと思う。
でも、それを知ることは、決して悪い事じゃない。
そうやって、人は、探して、見つけて、試して、やっぱり違うかもしれないと知って。その度に、傷ついて、傷つけて、自分の不甲斐なさを呪って、それでも前に向いて生きていく。
それらを繰り返して、自分が本当に居るべき場所、自分がこの世に生まれてきた意味を、見出していく。
こういう話を、彼ともできればよかったんだろうだけど、別れ話のときでさえ、やっぱり絶望的に会話が噛み合わなくて、結局話はできなかった。
一人旅をしたのは、自分が行きたかったからでも、彼に「じゃあ一人で行けば?」と言われた当てつけからでもなく、もしかしたら、この文章を書いて、本来彼と打つはずだった二人の物語に、本当の意味での終止符を打ちたかったからかもしれない。
彼は、あまり文章を読む人ではないから、きっとこれも読んではいないと思うけれど、もし読んでいたら、自分の頭の中だけで考えて結論を出さずに、誰かに相談してみてほしい。
私達が共に居る時間は終わったけれど、その時間のすべてが悪かったわけでも、無駄だったわけでもない。
私達が、お互いに未熟だったのも、きっと本当のこと。
でも、同じくらい、楽しかったこともたくさんあったし、貴方に尊敬できる面があったのも、本当のこと。
だから、ありがとう。
最期まで一緒に居られなくてごめんね。
貴方のこの先の人生に、幸ありますように。