BON COFFEEをオープンしました
はじめに
2023年6月10日、HACKが管理運営する新川モールに「BON COFFEE」なるキオスクをオープンしました。管理運営を始めてから、ずっとあったらいいなと思っていた機能の一つです。
屋外空間でゆっくりするためにコーヒーが必要
新川モールには、浜松市が整備したベンチがいくつかありますが、直線的で規則正しく並んだベンチは、機能的ですが太陽や雨にあたる位置にあることや空間の重心をつくることが難しいため、2022年度に静岡文化芸術大学の学生たちとオリジナルの移動式テーブル・ベンチを制作しました。そして屋外空間であっても人が集まる場所には、Wi-Fiは必須であるため、HACKにてWi-Fi環境を整備しました。
ここまで昨年度で整えたので、残るは美味しいコーヒーが揃えばさらに居心地のよい空間を作れると考えたわけです。
公共空間に人気(ひとけ)をもたらす
単にコーヒーを提供するのであれば、キッチンカーを呼べばよいのかもしれませんが、私としては、新川モールの管理の質を向上させるために必要な機能ととらえているため、自営でキオスクをつくり営業することとしました。その理由としては、人の存在感があることで温かみを出すこと、人の目があることできめ細かな管理が可能となることです。
加えて、駅前の公共空間にあることから、このキオスクは毎日開いていることが大事であると考えました。週末のイベントとの細かな調整も不可欠です。そのため外部のキッチンカーではなく自営を選択しました。
スタッフの人となりが超大事
となると、キオスクで実際コーヒーやお菓子を提供するスタッフがとても大事になります。明るい人柄で思わず立ち寄りたくなるような、新川モールの顔になってくれるような人がいないと、このプロジェクトは成功しないと思い、デザインや設計よりも先に、私たちの考えに共感して一緒に進んでくれる店長をまず先に探しました。採用ページを作ったり知り合い伝手に聞いたりする中で、tsuideni coffeeというコーヒー屋台をしている藤森さんがjoinしてくれるという幸運な出会いがありました。いつか自分のコーヒー屋を立ち上げたいという藤森さんにBON COFFEE店長として経験を積んでもらうことで、互いに良いサイクルを回していけたらと思い店長をお任せすることになりました。
その他スタッフもありがたいことに非常に個性的で素晴らしい面々が集まりました。元保育士、イラストやテキストが得意、ラテアート修行中などなど、、彼らの能力ややりたいことを全面にバックアップし実現できるキオスクにしていきます。BON COFFEEが新川モールという公共空間にあること、その場を使うことができるという特性をうまく利用して店の特色を作っていくべきと考えています。
コーヒーのセレクトはローカルファーストで
自分がコーヒー好きということもあり、提供するコーヒーにはこだわりたいと思いました。焙煎所ではないので、自然とほかの焙煎所から仕入れて淹れる形になるのですが、ここでアメリカやオーストラリアへ旅行した際に、レストランやカフェでのワインリストの一番上に「LOCAL」と紹介されていることを思い出しました。日本だと泡、白、赤、、、のような区分けが一般的ですが、ローカル枠を一番上に持ってくることで旅行者の自分としてはそれを頼みたいと思ったし、地元の人からしても地元を知る良い機会になるのではないかと。
それを参考に、BON COFFEEでは、常に一番トップに私たちがおすすめしたいローカル、浜松やその周辺地域の焙煎所の豆を紹介し、その豆と異なる方向性(風味、焙煎度)の豆を浜松以外の地域から仕入れることにしました。
そして、豆は仕入れた分が売切れたらまた別の焙煎所の豆を紹介することで、コーヒーのセレクトショップのような立ち位置を目指すことにしました。
自転車で牽引する小屋
新川モールは橋の上であり、イベントスペースでもあるため建築物はもちろん重量物の固定もできません。私たちはその制約を逆手にとってすべてタイヤがついて動くようなデザインのものを配置しています。
BON COFFEEも例に漏れずタイヤがついた小屋を想定するところから始まったのですが、重量が500kgを超えるであろうことは確実で、これを簡単に移動させるためにはどうしたらよいかという課題にぶつかりました。
藁にもすがる思いでヤマハ発動機の吹田さんに相談したところ、面白そうだから一緒にかんがえてみましょう、と言ってくださりヤマハ発動機のみなさんとの協働がはじまりました。
小屋を押す力をアシストするモーターをタイヤに取り付けようというアイデアからはじまり、最終的にはアシスト自転車PASを魔改造して、小屋が牽引できるようにしようとなりました。
小屋を支えるフレームの製造先や設計、共同調査とすることで資金負担もくださるなど、ヤマハ発動機のみなさんの協力なしには完成できませんでした。この場を借りて御礼申し上げます。
小屋のデザイン
小屋のデザインは松本憲くんにお願いしました。彼の頭の中にあるかわいさやギミックがBON COFFEEとして新川モールに立ち現れたら、面白いアクセントになるだろうと考えたからです。
六角形の平面にすることや、上に人が乗れるようにし盆踊りができるようにすることは憲君が考えてくれました。BON COFFEEの名前の由来はここから来ています(!)。
部材をプレカットで手配してくれた信吾さん、施工してくれた憲君とキンさんヨウヘイ君ありがとうございます。
ロゴとグラフィック
自転車で牽引する六角形の動く小屋、屋号はBON COFFEEという大まかなデザインが決まった時点で、ロゴはchidoripenさんに依頼しました。ゆるくかわいらしいイラストの雰囲気がイメージに合っていたのと、どこかで浜松にゆかりのある人にお願いしたいと思っていたところです。
イメージどおりかわいらしいロゴとイラスト、小屋の外壁のデザインを仕上げてくれました。特に小屋の外壁は制作と並行して憲君と細かな調整をしながら形にしてくれました。
憲君ちどりちゃんありがとう。
盆踊りのステージに
制作も新川モールで半月ほどかけてライブで制作しました。近所の小学生がたびたび来て「何作ってるの?」と楽しみにしてくれていたのが印象的でした。梅雨の合間をくぐり抜け、なんとか6/10にオープニングイベントを迎えることができました。
イベントではフード、ブックストア、音楽ライブ、大道芸、そして盆踊りとかなり雑多に盛り込みましたが、大した告知もしてないのにかかわらず多くの人が楽しんでくださいました。盆踊りにもばっちり櫓として使えることが証明されました。半ば思い付きで盆踊りができるコーヒースタンドをつくりましたが、来場された地元のかたが「昔この新川遊歩道の上でよく盆踊りをやっていたよ」と言われ偶然の一致に驚いたりもしました。
盆踊りは誰でも参加でき離脱できる祭りの在り方で、コロナ禍を経て多くの人から開催したいという話を同時多発的に聞いていたので、こんな形で新川モールが協力できてよかったと思います。これを機に定期的にやっていきたい。
街的体験の入口に
備忘録を兼ねてここまで長々と書いてきましたが、BON COFFEEはこんな風になったらいいなと思っています。
車社会の浜松では目的地to目的地な移動が多く、ぶらぶら街歩きをする文化が失われつつあります。街を好きになる第一歩は、街を歩いて何かお気に入りを発見することからだと、経験的にそう思っています。街には面白い店主がやっている面白い店はたくさんあります。美味しい店も。グーグルマップで星が多いところにいくより、誰かに紹介された店に行く方が印象深いものです。観光で訪れた街でも、地元の人に勧められた居酒屋でたまたま隣に座った人の話をよく覚えてたりするもんです。
BON COFFEEがそんな街的体験にアクセスする入口であり交差点になることを願って。