オンライン大学のVitruのIPO申請書から、なぜオフラインの教育も必要なのかを読み解く
ブラジルでオンライン教育を提供する企業Vitru(NASDAQ:VTRU)がIPOしました。主力サービスは、学士・修士・博士の学位を取得できる通信大学コース「Uniassielvi」です。IPO申請書(Form F-1)から、気になった点を抜粋します。
創業年
1999年
ビジョン
ブラジルの教育を、デジタルの力で民主化する
ペインポイント
ブラジルでは、高等教育(日本でいう大学)の学位を取得すれば、高卒よりも65.3%の収入増が期待できます。しかし、高額な学費を払えない、学習プログラムの質が低い、立地が物理的に遠いなどの理由で、ブラジルの学位取得率は国際的にみても低い水準にあります。
主力サービス
Vitruの主力サービスは、学士・修士・博士の学位を取得できる通信大学コース「Uniassielvi」です。特徴は、オンラインとオフラインを組み合わせた学習スタイルです。Vitruの学生は、ブラジル国内600カ所以上の「遠隔学習センター」に行き、バーチャル授業を受講します。
なぜオフラインが必要なのか
米国の大学であれば、100%オンラインだけで学位を取得できたり、ごく短期間のスクーリングで済ませるコースがたくさんあります。それなのにUniassielviは、あえてオフラインも取り入れています。その理由について、IPO申請書には以下のように書かれています。
・ブラジルでは、まだ「大学を卒業する」という文化そのものが未成熟であり、オンライン単体だけではドロップアウトする学生が多い
・リアルな教室に通い、チューターの親身なメンタリングを受けることで、コミュニティへの帰属意識が高まり、学習の質や継続率も高まる
上記に出てきた「チューター」とは、大卒以上を中心とする専門スタッフで、年間60時間以上の研修を通じてメンタリングのノウハウを体得し、全在校生と週に1度面談をしています。また、チューターは学生のニーズを吸い上げて本部に報告する役割も担っています。チューター制度への学生の満足度は非常に高く、Vitruは「チューター制度が差別化のキーになっている」と述べています。
アセット軽めのオフライン施設運営
600カ所以上の遠隔学習センターの約8割は「ハブパートナー」とよばれる第三者が運営しています。ハブパートナーは学習スペースと維持管理を提供し、利用者の学費に応じた収入を得ることができます。遠隔学習センターの数は昨年の436件から39.4%増加し、これからも増やしていくようです。
受講生数は28万人以上
2020年6月時点で、ブラジル全土から28万名以上の生徒が在籍しているVitru(CAGRは27.8%)。直接の比較は難しいですが、日本のN高等学校の学生数が1万5千人であることを考えると、その規模の大きさに圧倒されます。個人的には、28万人の生徒をまとめるメンタリング術とはどのようなものなのかが気になりました。
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