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父親が死んだ日。 リマスターver.
ドリルです。
noteをハチロウと始めたばかりの時 父親との思い出を 長々と綴った記事を書きました。
その記事の観覧数が いまだに20くらいなので、
「これは、ほとんど見られてないから 新作と偽って出しても大丈夫だろ。」
と 判断しましたので 若干の手を加えて載せる事にしました。
手抜きでは 無いです。
それでは、ここからが リマスター版です。
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僕は、生まれた時から父親が いません。
別に生まれた時に他界していたとかではなく 戸籍上いなかったというだけです。
10歳離れた姉がいますが 父親と母親は 同じです。
会ったことは ない(正確に言うと 一瞬見たことは ある)ですが 姉と僕の間に母親の違う兄がいてるらしいです。
なんかややこしいですが 母と離婚してからも ちょくちょく会っていてその時にうっかり できた子供らしいです。
父親がいない事に関しては 初めからいないので『サミシイ』とか『カナシイ』とかそんな感情は ありませんでした。
その分 母親から 沢山の愛情をもらいました。
2ヶ月か3ヶ月に1度 お金を渡しに家に来てそのまま 泊まっていきます。
僕は、それがとても嫌でした………。
父親が泊まりに来た時だけは 母が僕よりも父親を大事にしていると小さいながらも感じていて 母を取られたような気がしたからです。
幼かった 僕から見れば 父親は とても大きく 威圧的で、なんだか怖くて自然と敬語で話していました。
そんな2、3ヶ月に1度くる父親は 好きでも無ければ嫌いでもなく年に数回 家に泊まりにくるおっちゃん…くらいの感覚でした。
その、年に数回泊まりにくる おっちゃんも僕が高校生くらいになるといつの間にか 泊まりに来なくなっていました。
そうやって父親の事なんて忘れて大人になり 働くようになって数年……僕が 26歳の時 ある朝…朝といっても明け方4時か5時頃 姉から泣きながら電話がかかってきました。
「お父ちゃん…お父ちゃん…死んでんて……。」
姉は、10歳年上なので父親との思い出は 僕より 幾分かあるので泣いてるんでしょうが 僕は 一緒にどっか行った思い出も遊んでもらった思い出も何もありません。
いや……そういえば 指をひっぱったら屁をこいてたというのは 覚えてましたが それくらいです。
それくらいの思い出しかないので、『カナシイ』も『サミシイ』もなく、
「ふーん、そうなんや。」
と なんの感情もなく答えてしまい……
「ふーん…て、あんた!お父ちゃん死んで なんとも思わんの!」
正直 「何とも思わん」と言いたかけましたが、そんな事 言っても姉が悲しむだけなので、
「そやな…悲しいなぁ。葬式とかは、出れるの?僕らややこしいやん?」
「そやねん、それは 親戚のおばちゃんが、こっそり参列させてくれるって言うてくれてるから明日、明日のお昼、奈良の会館で お葬式らしいからそこに現地集合しよ。」
「まぁ、会社に言うて休めたら行くわ。」
「父親 亡くなって会社休まれへんてそんな会社あんの?明日 絶対きーや!」
まぁ、確かに……と思って
「わかった。」
とだけ言って電話を切った。
「どうでもいいわ…。」
と、呟いて 会社に行き 父親が亡くなったので休ませて欲しいと言うと会社の人達が口々に心配してくれ「 大丈夫か?」「無理すんなよ。」と みんな親切に言ってくれた。
心配してくれるのはありがたいが 本当になんともないので
「大丈夫です。」
としか返事ができない。
そして なんだか ずる休みするような気持ちで少しみんなに申し訳ないように 感じた。
そうして次の日 待ち合わせの時間に電車を乗り過ごしてしまい だいぶ遅れて会館についてしまった。
そこに姉は イライラして待っていたが 僕の頭を 見た瞬間 遅刻の事とは関係なく 急に声を荒げた。
「あんた!なんなん その頭!!」
当時 僕は 後ろの方だけ伸ばして後は全部剃っていた。
つまりラーメンマンみたいな髪型だったので久しぶりに会った姉は びっくりしたようだ。
「別に どうもしてないよ。普通やろ?」
「あんた、普通の意味知ってんの?一般的とか通常って意味やで?
この日本のどこにあんたみたいな髪型してる人おんの?
マンガでも そんな髪型してんの2人ぐらいしかおらんわ!」
(姉ちゃん……ラーメンマンとモンゴルマンは、同一人物やから実質1人やで…)
と心の中で突っ込んだが 流石に口に出す勇気はなかった。
「まぁ、今更どうにもならんし早く行かな葬式終わってまうで。向こうの家族の人に会っても ややこしいんやろ。」
と、言うと 姉は まだ何か言いたそうだったが、時間もあまり無いので会館の中へと急いだ。
親戚のおばちゃんに案内されて まるで犯罪者かのように こっそりと中に忍び込み一般の参列者として紛れ込んだ。
お焼香も終わって お葬式は既に花入れが始まろうとしている。
(あっ…あそこで泣いてる人が お父さんの再婚相手か……ほな、その横に立ってるのが、僕の腹違いのお兄ちゃんになるんかな……。)
と、今では2人とも顔も覚えてないが そんな事を考えているといつの間にか花入れの番が自分に回ってきた。
昔 見た 大きく怖かった父親の顔は 小さく痩せ細った老人の顔になっていた…。
(小さいなぁ…こんなちっちゃなってもうたんやなぁ……でも、顔見たら少しは 悲しくなるかと思ったけど、やっぱりなんも思わんなぁ……)
と、思っていたが気付いたら何故か頬が濡れていた。
それは、ポタポタと下に落ちて 棺を濡らす。
何故かわからない……でも、目から涙が溢れて 止まらない。
思い出なんてほとんどない……唯一あるのが、指をひっぱったら屁をこくお父さん……そんなお父さんをみてケラケラ笑ってた自分……そんな 屁みたいな思い出しかないのに何故か涙が溢れでてくる…。
モンゴルマンの髪型をした誰の知り合いかわからんオッサンが 何故かワンワン泣いてるのは、向こうの家族からしたら異様な光景だったかもしれません。
でも、そんな事を気にする余裕はなく ただただ泣いてしまっていた。
何故だか わかりませんが父親ってだけで泣いてしまう…別に好きでも嫌いでもなかったから泣いてしまったんでしょうか。嫌いなら泣かんかったんかなぁ……。
でも、最後に顔を見れてよかった。
顔を見ていなかったら きっとこんな感情には なっていないから………。
この話の本当度 100%
自分が子供を持つようになって父親になる時 見本になる父親がいなかった僕は とても不安でした。
でも、父親なんかいなくても子供は 勝手に 育つんやろなと開き直ったら少し楽になりました。
正解なんてないと思いますが 今のところ 息子とも娘とも仲良く過ごせていると思います。
指をひっぱっても屁は まだ出ないですが もっといっぱい思い出を作ろうと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました!
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