長周期地震動の緊急地震速報をどう表現するか
これは防災アプリ Advent Calendar 2022 4日目の記事です。
3日目は、あめうまさんの「最寄りの強震モニタ観測点を割り出す」でした。
はじめに
地震が発生した際、気象庁は緊急地震速報や震度速報、震源に関する情報、震源・震度に関する情報などを発表しています。
2023年2月1日より、新たに「長周期地震動に関する観測情報」の発表(*1)や、緊急地震速報の発表条件に長周期地震動階級の基準が追加されます。今回は長周期地震動階級の基準によって発表される緊急地震速報を、どのように表現するかについて考えていきます。拙い文章ですが、最後まで読んでいただけると幸いです。
緊急地震速報
この記事をご覧になっている方は緊急地震速報には予報と警報があることはご存知かと思います。今回は緊急地震速報(警報)にあたる部分について触れていきます。
長周期地震動とは
こちらもご覧頂いている方は長周期地震動について理解されている方が多いかと思いますが、軽く触れます。
長周期地震動について発表される情報
2023年2月より新たに、緊急地震速報の発表基準に長周期地震動階級が追加されます。
具体的には、緊急地震速報の発表条件(最大震度が5弱以上と予想された場合)に加え、長周期地震動の階級が3以上と予想された場合に発表されるようになります。
(最大震度5弱以上または長周期地震動階級3以上と予想された場合に発表)
また、長周期地震動に関する観測情報として、実際に観測された長周期地震動の情報が配信されるようになります(*1)
情報の入手手段の多様化とわかりやすさ
ようやく本題にはいるわけですが、ここ最近で地震情報を確認する手段や方法がかなり多くなったと思います。(個人的に。)
地震情報を確認するためのPC/スマホアプリの開発がされていたり、YouTubeやTwitterで情報を発信したりと、様々な媒体や方法で確認できるようになりました。
私もTwitterで緊急地震速報や地震情報を提供するアカウント(以降BOTと表記)を2018年03月から(*2)運用していますが、ありがたいことにフォロワーも増えてきています。それだけ「手軽に」「迅速に」「わかりやすく」情報を得られる(*3)ということに需要があるのだろうと勝手に思っています。(*4)
情報発信には正確性や速報性、そしてわかりやすさが大切だと思います。
私のBOTでは震度や津波の情報を一番に気にされる方が多いと思い、ツイートを見たときにすぐに目につくような表記にするなど、なるべくわかりやすい形式になるよう心がけています。
緊急地震速報が発表された場合、テレビなどでは緊急地震速報が発表された際に強い揺れのおそれがある地域が表示されます。
緊急地震速報を表示するソフトを開発している方や、YouTubeLiveなどで情報を発信している方々も、緊急地震速報の警報対象地域などを表示して警戒を呼びかける事があるかと思います。
今回、緊急地震速報に長周期地震動階級の基準が追加されますが、今までとどう違ってどのように表現するべきなのでしょうか。
長周期地震動による緊急地震速報
緊急地震速報の発表条件に長周期地震動階級が追加されることは先ほど触れましたが、実際に反映された場合どういった形になるのかを画像でご覧ください。
このような形で、今まで発表されてきた緊急地震速報(予想震度による緊急地震速報のみ)とは違う形になっているのがわかります。
(画像の左側は滋賀や三重などでは警報の対象ではないが、画像の右側では離れた大阪が対象となっている)
長周期地震動階級が基準に追加されたことを知っている方は、すぐに「長周期地震動による警報だろう」と理解し、身を守る行動をとることができるかもしれません。(*5)ただ、緊急地震速報について詳しく知らない方が見たときはどうでしょうか。瞬時に身を守る行動につなげることができるでしょうか。
今回、普段BOTの情報をご覧頂いている方に、緊急地震速報や長周期地震動に関するアンケートを実施し、「長周期地震動による緊急地震速報が発表された場合、すぐに身を守る行動をとることができるか」という質問を行いました。(*6)
結果を見てみると、長周期地震動について知っている方はかなり多いのですが、長周期地震動の緊急地震速報が発表された場合に「すぐに身を守る行動をとれる」と回答した方は全体の約半数でした。
(アンケートの詳細はこちら)
「揺れるまで待つ/揺れてから行動する」や「何もしない」を選択したの中には、長周期地震動について知っていても「誤報だと思う」と回答される方もいました。
気象庁では以下の点から、予想震度による緊急地震速報と長周期地震動による緊急地震速報を区別せずに発表するとしています。
しかし、アンケートの結果から「長周期地震動による緊急地震速報」は今までの緊急地震速報と同じように表現するのではなく、何らかの工夫が必要と考えられます。
「長周期地震動による緊急地震速報は発表回数が少ないから大丈夫」という考え方ではなく、いざ発表されたときに「命を守る行動」に繋げられる人を少しでも多くするようにしていかなければいけないと思います。
ではどのように表現するか
まず「震度4以上と予想される地域と長周期地震動階級3以上の地域を区別できるのか」という点ですが、できなくはないと思います。
こちらは実際に気象庁から発表される緊急地震速報電文(XML)のサンプルになります。ForecastIntが予想される震度(下限~上限)、ForecastLgIntが予想される長周期地震動階級です。予想震度が3以下であれば、長周期地震動による緊急地震速報であるということが判別できるかと思います。
今回は「予想震度による発表か、長周期地震動による発表かを判別できる」という前提でテレビなどで表示される緊急地震速報をベースに数パターン考えました。
さまざまなパターンの画像をつくってみました。地図は変えずにテキストを変えたり、地図だけ変えたりと、いろいろなパターンがありそうです。
それぞれのメリット・デメリットを考えました。
いかがでしょうか。私は地図は予想震度と長周期地震動で地図を別にするパターン(画像だと左の一番下)がわかりやすいのかなと思います。
飛び地的な表示でもなく、誤報と考えられる可能性を低くしつつ、揺れに警戒が必要であるという呼びかけをすることができるのではないかと考えられます。
今回は「予想震度による緊急地震速報」と「長周期地震動による緊急地震速報」が判別でき、地図と警戒地域を表示するという設定で考えてみましたが、判別ができない場合であったり、ツイートのような文章だけといった場合はどうするのか。また緊急地震速報(警報)ではなく、緊急地震速報(予報)を扱っている開発者は、どのような表示にするのか、考える必要がありそうです。
震度別表示での長周期地震動の表現
ここからは予想震度を表示した場合の長周期地震動の扱いについてなのですが、先日気象庁のXML電文資料を見返していたところ、緊急地震速報(地震動)のXML電文(緊急地震速報に長周期地震動階級が追加された情報)について、長周期地震動による緊急地震速報が発表される電文では「長周期地震動階級が1以上と推定される地域」が発表されることがわかりました(長周期地震動階級が3以上で発表されると思っていました)。つまり、長周期地震動階級が1以上と推定される地域ならば、予想震度が4以下でも表示ができるということになります。
実際に地図に表示してみると、このような形になります。
画像のマップは長周期地震動については一切表示していませんが、予想震度による緊急地震速報で震度4以下の情報を表示する必要性(情報量が増えるため)、予想震度表示に加えて長周期地震動階級をどのように表現するかなども、考える必要がありそうです。
長周期地震動である緊急地震速報を区別することを強調したほうがわかりやすいのか、わかりにくいのか。人それぞれの表現方法あると思いますが、情報入手手段の多様化が進んでいる今、統一(または似たような形式に)するべきではないか、と思います。
最後に
今回のアンケートで、長周期地震動については広く知られているが、長周期地震動による緊急地震速報は誤解される恐れがあり、表現の工夫が必要であることがわかりました。
皆さんはこの記事をみてどう思ったでしょうか。今回、長周期地震動の情報をソフトの開発やYouTubeLiveなどで情報を発信している方を見たことがなく、他の方がどういった形で扱うのかが気になり、記事を書かせていただきました。(私が知らないだけかもしれませんが)
ぜひ、皆さんの意見もお聞かせいただければと思います。(Twitterでリプ飛ばす/noteのコメントにでも。)
長周期地震動に関する観測情報については今回触れませんでしたが、こちらも地震情報と観測情報、震度と階級がごちゃ混ぜになってしまう方もいるかもしれません。今後長周期地震動に関する情報をわかりやすく伝えるためにはどうしたらいいか、考えるきっかけとなればうれしいです。
防災アプリ Advent Calendar 2022 5日目の担当は秋風ヨルさんです。
他の方の記事もぜひご覧ください。
参考資料
気象庁|緊急地震速報|緊急地震速報の発表基準の変更について (jma.go.jp)
気象庁|長周期地震動について (jma.go.jp)
気象庁|長周期地震動について|長周期地震動とは? (jma.go.jp)
長周期地震動に関する情報について(気象庁) | 地震本部 (jishin.go.jp)
*1:長周期地震動に関する観測情報は、2013年3月28日から気象庁HPで試行的な提供、2019年3月19日から本運用がされていたが、2023年2月からオンラインによる配信が開始される
*2:アカウント作成日は2017年03月でしたが、Twitterのツイート検索で一番古いと思われるツイートが2018年03月18日でした。
*3:情報をいち早くお伝えするために、情報配信サービス「Project DM-D.S.S」を使用しています。
*4:多ければ多いほどいいわけではないかもしれませんが…。他のものと差別化できるならいいんじゃないんですかね。私のBOTは差別化できているかって?🤫。
*5:誤報だと疑わずに、地上/高層階と関係なしにすぐに身を守る行動をとれる。「長周期地震動による緊急地震速報→高層階にいないから大丈夫だ」という判断はよろしくない。
*6:テレビ等で表示される緊急地震速報の画面をイメージした画像に、長周期地震動による緊急地震速報を追加し、「もし発表された地域にいるとした場合にどのような行動をとることができるか」という内容でアンケートを実施。アンケート詳細や結果などはこちらから。
*7:緊急地震速報の画面を見たときに、一番最初に目につくのが地図かテキストかで変わってきそうですね。アンケートとればよかった。
*8:震度別の配色には「Kiwi Monitor カラースキーム 第2版」を使用しています。
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