【空間が人を選ぶ】

おはようございます。建築やカフェ、イベントの裏方をしている八村です。

店舗でも住宅でも、空間の作り方によって、そこにいる人々の行動や会話のトーンが変わる。これは直感的に理解しやすいが、もう少し深く掘り下げてみると、「空間が人を選ぶ」という現象が浮かび上がるのではないか。

どんな空間を作るかによって、自然と特定の人々が集まりやすくなる。たとえば、格式のあるレストランには落ち着いた大人が訪れ、カジュアルなカフェには気軽に会話を楽しむ人たちが集まる。これは偶然ではなく、空間が持つ「フィルター」としての役割によるものなんですよね。

このフィルターは、デザイン、インテリア、音楽、サービスのあり方など、さまざまな要素によって機能する。そして、それらの要素が積み重なった空間デザインそのものが、「このお店が迎えたいお客さん」を無意識に選び、導いている。誘導している。

今回は、この「空間が人を選ぶ」という視点から、店舗デザインの本質的な役割について考えてみた。

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【空間が人の行動や会話のトーンを変える】

まず、空間が人の行動や会話のトーンに影響を与えることは、日常の中でも感じることができます。

例えば、オーセンティックなバーに入ると、多くの人は自然と声のトーンを落とし、静かに会話を楽しむ。一方で、ポップなカフェでは会話も弾み、よりフレンドリーな雰囲気が生まれる。

この違いは、空間のデザインによるものが大きい。

• 照明：柔らかい間接照明のバーでは、リラックスした雰囲気が生まれ、自然と落ち着いたトーンの会話になる。

• 音楽：ジャズが流れるカフェと、ポップスが流れるカフェでは、お客さんの雰囲気や会話のリズムが変わる。

• 家具：重厚な家具が並ぶ空間では、姿勢を正して座る人が増える。逆にソファ席が多いと、リラックスした体勢になりやすい。

こうした空間の要素が組み合わさることで、来店する人の行動や話し方、さらにはその場の空気感までもが変化していく傾向にあります。

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【空間はフィルターとして機能する】

ここで興味深いのは、空間のデザインが単に「人の行動を変える」だけでなく、「人を選ぶ」というフィルターの役割を果たしている点だと。

ハイブランドの店舗を思い浮かべてみてください。多くのラグジュアリーブランドの店には、入り口にドアマンが立っている。これは単なる接客サービスではなく、空間のフィルターとして機能している。

ドアマンがいることで、お店に入る際に「ここに入るには、それ相応の態度や価値観を持っている必要がある」と無意識に感じさせる。結果として、そのブランドの世界観に合う客層が自然と選別されている。

言い換えれば、「入りづらい」と感じる人は、そもそもブランドのターゲット層ではない可能性が高い。一方で、違和感なく入れる人は、そのブランドの価値観やライフスタイルに共鳴している。

この現象は、ハイブランドの店舗に限らず、あらゆる商業空間で見られる。

たとえば、
• 洗練されたミニマルなカフェには、シンプルな美意識を持った人が集まる。
• ナチュラルなウッディな空間には、リラックスを求める人や自然志向の人が訪れる。
• クラシックなバーには、静かにお酒を楽しみたい大人が足を運ぶ。

これらは、すべて「空間が人を選んでいる」例ではないでしょうか。

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【空間デザインが「どんなお客さんに来てほしいか」を決める】

この視点に立つと、空間デザインは単なる装飾や機能性の問題ではなく、「どんなお客さんに来てほしいのか」という本質的な部分を決定づける要素になる。

店舗を運営する側としては、単に「おしゃれな空間を作る」ことが目的ではない。
• どんな人にこの空間を使ってほしいのか
• どんな時間をこの場所で過ごしてほしいのか
• どんな会話が生まれる場所にしたいのか

これらの問いに向き合うことこそが、空間デザインの本質の一つだと思う。

例えば、静かにコーヒーを楽しむ人のためのカフェを作るなら、BGMは控えめにし、席の間隔を広めに取るべきだろう。逆に、人と人とが交流する場を作るなら、大きなテーブルを配置したり、活気のある音楽を流すことが効果的だ。

店舗に限らず、住宅も同じだ。

開放的なリビングは家族の会話を促し、コンパクトな個室は集中した時間を生み出す。どんな暮らし方をしたいのかを考えることは、どんな空間を作るのかを考えることと同義なのだ。

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【まとめ：空間は、人と人の関係性をデザインするもの】

「空間が人を選ぶ」という視点で見れば、空間デザインとは単なる意匠ではなく、そこに集う人々の関係性をデザインする行為じゃないだろうか。

お店であれば、ターゲットとするお客さんに合った雰囲気を作ることで、自然と望ましい客層が集まる。
住宅であれば、住む人のライフスタイルを考え、それに最適な設計をすることで、豊かな暮らしが生まれる。

つまり、空間デザインとは「人々がどのように関わり、どんな時間を過ごすか」を形作るもの。

だからこそ、「どんなお客さんに来てほしいのか」「どんな時間を提供したいのか」という本質的な問いに向き合うことが、空間づくりの第一歩だと思う。

そして、その答えが明確であればあるほど、その空間は自然と「ふさわしい人々」を引き寄せ、彼らにとって特別な場所となっていくんじゃないだろうか。

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PHILOSOPHY

「心地よく、豊かに、幸せに。」

空間は、ただの器ではない。
光と影、風と素材、温度と湿度——
すべてが響き合い、人の感覚に寄り添うことで、
心地よさが生まれ、豊かさへとつながっていく。

私たちは、建築とデザインを通じて、
身体が自然に呼吸し、心が静かに満たされる空間をつくる。
それは、意図を持って選ばれた素材の質感であり、
緻密に計算されたプロポーションであり、
日常の何気ない所作に溶け込む、流れるような動線の美しさ。

すべての要素が調和したとき、
そこには、健康で快適で、心から満たされる時間が生まれる。そんな「空間の本質」そのもの。

私たちの使命は、空間を通じて、人々の健康と心の豊かさを築くことにある。

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八村満

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八村満、菅井暁子の共同代表が設計、デザイン、施工をする建築屋。シンプルに、快適に、普段の生活を豊かにするためのデザインを提案していきます。住宅だけではなく、家具やインテリア、エクステリア、土地や環境を最大限に生かしたパッシブデザイン、アクティブデザインの両方から設計やデザインを思考し、お客様の価値観に合う建築を提案します。お金や保険も専門家のチームでご案内しています。
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