コロナ影響で、今後インバンド業界はどうなるの?
毎日、新型コロナウイルスのニュースばかり。経済活動もままならない状態が続き、見通しも暗く見えてしまいます。本来なら稼ぐべきシーズンだった春節の大型連休も、新型コロナウイルスのせいで中国人観光客はいきなり消え、インバウンド関連業界は軒並み大きな打撃を受けて、既に倒産廃業の会社も現れ始めています。
こうした中、「今後どうなるのか?インバンド業界にまだ先はあるのか?」と、よく質問されます。ここでお答えしたいと思います。
私の答えは、「当面は非常にしんどいが、先はかなり明るい」です。
新型コロナウイルスが続く限り、観光業は全く期待出来ないことは言うまでもありません。ですから、当面は最悪な結果を想定した対応策(資金調達するか、事業縮小するか、人員削減するか)を取って、とにかく生き残ることに集中すべきです。
では、何故、先はかなり明るいと言えるのか。
まず、日本のインバンド業界には、観光レジャー、グルメ、ショッピング、歴史、文化、もてなしなどの強みがあるからです。強みがここまで揃う国は、他にはそうない。
1. 観光資源が多い
2. 食べものが美味しい
3. 買い物天国
4. 歴史、昔の中国(特に唐の時代)の姿が観られる
5. 文化、漫画、アニメ、芸能、AVなどなど
だから、他の国や地域に比べて飽きにくく、リピート率が高い。
ただ、ひとつ注文を付ければ、もてなしについては、今一度考え直す必要があるかと思います。日本のインバウンドに最も貢献しているのは中国人観光客ですが、日本人は本当に中国人を心から歓迎しているかというと、実はそうではありません。多くは、中国人観光客に対する偏見(一部マナー悪い観光客がいることは事実)が根強く、お金を落としてくれることは歓迎だけど、本心からは歓迎していないのです。日本人のこうした心の内面を中国人は敏感に感じ取っているのです。
日本は観光立国という国策を掲げてから、まだそんなに年数が経っておらず、様々な問題や不満が起こるのも当然です。これについては、今後改善すればいいです。
日本人の良いところは建前と本音があり、接客マナーのレベルは世界一だということです。今後は、建前をさらに上手く使いながら、本音でも外国人観光客を歓迎し始めると、本当の意味で観光立国へと歩んでいけると思います。
前途が明るい二つ目の理由は、中国人の訪日客は今、年間1000万人ベースですが、これはまだ中国人の年間海外旅行の総人数の1/15に過ぎません。日本にとっては猛烈な成長かも知れませんが、中国マーケット全体からすると、伸びる余地は十分にあります。私は、少なくても向こう5年以内に3000万人(今の約3倍)になると推測しています。「え、そうなに増える?!」と思われるかもしれませんが、5年後に、中国の想定年間出国者人数が3億人と予測されていて(しかも控えめな予測)で、日本はその1/10を獲得すると考えれば、決して法外的な目標ではないはずです。
さらに、もう一つ、日本にとって有利な点は、今回、新型コロナウイルスの発生当初から日本は国をはじめ地方自治体、機構、企業など、中国、特に武漢に対して多大なる支援を行い、中国国民はそれを非常に感謝しています。この国民感情のベースが後に大きなインバンドの花として咲くでしょう。ソーシャルメディアには、「日本ありがとう」「コロナが過ぎ去ってから必ず日本に遊びに行く」と言った声が殺到しています。
ここで注意しなければいけないのは、日本から見ると、中国は一つの市場に見えるかも知れませんが、本当は二つ、三つの市場に分けて考えないといけません。
これまでのインバンドは、実は中国の沿岸部都市が中心でしたが、内陸の2線3線都市は、まだそれほど開拓できていません。それには、二つの理由があって、一つ目は、内陸2.3線都市は昔の戦争の遺恨が深く、感情的にアンチな部分があります。もう一つは、日本は積極的な開拓活動をあまりして来なかったです。
武漢は、中国の鶏のような国土のど真ん中、内陸の中心的都市です。日本がこれだけ惜しまずに武漢を支援したことは非常に評価され、内陸部の日本に対する国民感情は一変しました。これを機に、日本は内陸のインバウンド開拓に力を入れると大きな花が咲くでしょう。
日本の各都道府県事務所はほとんど、北京や上海や広州などに拠点を置き活動していますが、今後は、内陸の拠点を増やすべきです。拠点が難しいなら、上海にいながらでも良いので、仕事の中心を内陸開拓にシフトしていくべきです。沿岸部は放っておいても日本に来るので、もう誘致活動なんかしなくても良いのです。重要なのは、内陸です!内陸は富裕層がまだ少ないとか、消費力がまだ強くないと思ってる日本人がいるかも知れませんが、日本旅行に最もお金を落としているのは中間所得層であり、富裕層ではありません。内陸の開拓は、今後の日本のインバウンドを支えるもう一本大きな柱を構築することなのです。
今後のインバンド業界について、「当面は非常にしんどい、先はかなり明るい」と私は冒頭で記しました。日本の優位点を活かし、内陸にも目を向ける。さらに「明るい未来」を作るために、共に頑張って、この難関を乗り越えていきましょう。
執筆:盧 八味(編集:永島 雅子)