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令和3年公認会計士試験体験記(2/9):統計学

※本記事は、こちらから始まる会計士試験体験記の一部です。全体の目次はこちらで見られます。

3.統計学

3-1.選択理由

選択科目は予備校申込時に統計学で仮登録し、選択科目の講義が始まる秋ごろに正式決定した。統計学を選択した理由は、試験勉強を機会に統計学を学んでおくことが、会計士として働くうえでヨリ有益だと考えたからである。学生時に独学に近い形で統計ソフトを触った経験はあったものの、基礎を疎かにしていたこともあって自身のスキルとして定着しなかった。その反省から、まとまった時間を取って所定のカリキュラムを履修し、基礎を体系的に身につけたいと思ったのである。

経営学が役立たないというのではなく、「カバーする領域は広いが、各領域を割と切り離して学べる」という科目の性質上、統計学よりも独学が容易だと判断した。また、説明会で経営学試験には「雑学クイズ」のような側面があると聞き、試験委員の意図を読むような作業に労力を割きたくないとも感じていた。とはいえ一人前の会計士になるまでに経営学の習得が必要とは感じていて、論文式試験の最終日に本屋に立ち寄り、経営学テキストを物色したのを覚えている。

統計学の場合、経営学よりも調整後得点が伸びにくいことは認識していたが重視しなかった。例年、統計学は1位でも調整後得点は60程度である(今年は珍しく65超)一方、経営学では1位が70以上になる(今年は78)。それなりの上位であれば、経営学に比べて科目で10程度、総合得点比率で1程度不利になる可能性があるとは思っていたが、一方で合否には関係ないだろうとも見込んでいた。合否に関係ない以上、会計士として一人前になるため、自身にとってヨリ有益と考えた科目を選択したということである。

経営学に比べて総勉強時間が少なくて済むという話も聞いていたが、あまり意識しなかった。ただし、本試験当日の昼休みに全範囲の復習ができるという話は、記事作成者にも当てはまった。加えると、試験前日も見直す必要がないので、時間を全て午前の科目(企業法)総復習に充てられる、という点も挙げられる。


3-2.試験結果

本試験は、一問目が素点50点(調整後得点30.9)、二問目が素点47.5点(調整後得点33.45)で合計の得点率が64.35(3位)だった。問題が解き終わったのは終了10分前くらいだったと思う(予備校の演習でも、いつもぎりぎりまで掛かった)。

統計学の出題範囲は比較的基礎的な内容に限定されているので、応用的な内容が出なければ満点も狙える。今年度の問題も全て、大原で勉強していれば解ける問題だった。一問目では、この年から試験範囲に加わった幹葉表示と正規Q-Qプロットが出題された。両者とも難しくはないものの初見だと迷う内容だが、大原の「論文総まとめ」でカバーされていた(自分もそこで初めて知った)ので、大原生が困ることは無かったと思う(TACの解答速報ではQ-Qプロットについて「初見の方が多かったと思う」と解説)。

なお、「正規Q-Qプロットから読み取れること」を記述する箇所があるのだが、大原・TACの解答速報とも、「正規分布に近い」ことしか答えていない。ネットで公開されていた統計学選択者の開示答案でも、同様の解答で一問目満点を得ていたが、本問からは「歪度が負である」ことまで読み取れるのではないかと思う(計算してみると$${-0.57}$$で、確かに負)。正規Q-Qプロットから常に歪度が読み取れるわけではないが、本問のプロットは割と特徴的な形状だったので、試験中には「正規分布に近い」は試験委員が設定した偽りのゴールであり、歪度まで答えさせるのが出題意図だと思っていた。しかし「出題の趣旨」を見ると、試験委員はこの点に関心が無かったようである。

二問目は、ひっかかりやすいのは問題2かなと思いながら解いていた。母比率検定が思い浮かぶが、標本サイズが大きくないので正規近似が使えないと判断する必要がある。また検定統計量と棄却域の設定にも迷う。本試験では正規近似を使えないことには気づいたが、検定統計量と棄却域についてひねくれた(今から見返すと問題のある)書き方をしたので、ここで減点されたと思う。結局ひっかかってしまった。


3-3.使用教材など

学習は、基本的には予備校のカリキュラムに従った。大原のカリキュラム通りに講義動画を視聴(2020年12月~2021年1月)し、問題集を解き、論文演習(基礎、応用、直対各4回)を全て受けた。用語の暗記等には、小冊子「ポケットコンパス」も使用した。演習のうち「応用」は優先順位が低いとされていたが、他科目の進捗度も考慮したうえで、全てリアルタイムで受けた。市販の教科書は意図的に使わなかったが、各論点で追加情報が欲しいと思ったときは適宜ネットで調べた。教科書を買わなかったのは、高度な内容に「溺れた」失敗を繰り返すリスクが高いと思ったからである。

学習時間は講義・演習が続く2020年12月~2021年3月が比較的多かった(計159時間、平均1.5時間)。記録を見ると、ほぼ毎日統計学に触れている。2021年4月以降もほぼ毎日なのは変えず、ただし30分におさえて触れていた(短答前一週間は2日のみ、合計1時間)。統計学の学習を息抜きのように使っていた気がする。

短答式試験以降は数日に1回触れるという感じで、計60時間程度使った。時間の使途は、直対演習、過去問3年分、「論文総まとめ」掲載の補足論点、「論文総まとめ」にも出てこないが出題範囲に含まれる用語のネット検索(ベータ分布など)など。学習開始から本試験まで計247時間使ったが、感触としては、試験対策としては2021年3月ごろまでで大体仕上がっており、その後は維持・定着を図っているような感じだった。

論文演習の点数は全12回の平均が73.4点(最低48点、最高100点)。公開模試は第1回(3月)が90点(換算得点61.30、4位)、第2回(7月)が87点(換算得点61.83、2位)だった。

テキストは情報量が抑えられているが、演習と合わせて試験に出そうなパターンを広くカバーしていたと思う。例えば「負の二項分布」という用語はどこにも出てこないが、実質的な考え方・計算問題の解き方は演習で出てきていたと記憶している。

テキスト・演習は大体正確だったと思うが、基礎演習の第1回について、$${\Pr(A∩B)=\Pr(A|B)×\Pr(B|A)}$$かつ$${0<\Pr(A)×\Pr(B)<1}$$でも$${A}$$と$${B}$$が独立とは限らないのではと電話で質問したことがある($${\Pr(A)=\Pr(\bar{B})}$$でも上式が成り立つ)。対応は非常にスピーディだった(確かその日のうちにウェブで訂正が出た)。なお、後半(直対演習第3回)で類題($${\Pr(A|B)=\frac{\Pr(A∩B)}{\Pr(B|A)}}$$が成り立つとき$${A}$$と$${B}$$は独立か?)が出たのだが、こちらはゼロ除算が定義できないので$${\Pr(B|A)}$$がゼロでないという情報を条件式が含んでいるという問題であり、独立と判断して良い。こちらは判定を間違えた(気づいたのが答案提出後だった)。あと、別の解法だと四捨五入の具合で答えが$${0.01}$$ズレることを伝えて、正解にしてもらったこともある。


最後に、統計学選択者の主な体験記を挙げておく。

【2022年6月18日追記】
同年試験で統計学1位の方が答案を公開されていたので、以下に紹介する。


(続きます)


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