かたつむりと小人のキキ

途方に暮れているキキにはお構いなしに雨はどんどんとひどくなっていきました。

「紫陽花の下で雨宿りしようかな、もうビショビショだけど…」

雨と涙でずぶぬれになった顔をゴシゴシと帽子でふくと、キキは一番大きな紫陽花の下に向かいました。
すると、紫陽花の下にはあのかたつむりがいるではありませんか。

「あれ?かたつむりさん!」
「あぁ、どうも」
「あぁ、どうも、じゃないわよ、もう!私、かえるさんに置いて行かれちゃったんだよ。ずっと寂しかったんだから」
「いや、だからきみの家からここは遠いよって…きみ、家帰らないの?」

キキは悔しくなってまた涙が出そうになるのをこらえました。

「帰りたいに決まってるでしょ!帰れないの!どこだかわかんないんだもん」

そしてアーンアーンと泣き出しました。

「家ねえ…」
かたつむりは自分のつのをピコピコと動かしました。
「きみのお母さんもきみを探しているみたいだな」
「え?お母さんが見えるの?」
「まぁ、そんなところかな、そろそろ来るんじゃないか?」

しばらくすると、キキのお母さんが心配そうにカエル紳士の首につかまってやってきました。

「キキ!もう…あなたって子は…」
「ごめんなさい!ママ、本当にごめんなさい!」

雨はいつの間にか上がり、ぼんやりと虹がでていました。

「いい眺めですな」カエル紳士はかたつむりに言いました。
「いいねえ」かたつむりさんもいいました。

お母さんが指笛を吹くと、小鳥のモモがやってきました。

「カエルさん、かたつむりさん、どうもありがとう」
「またね、マドモアゼル」
「今度はお母さんにきちんと言ってから遊びにおいで」
「ありがとう!じゃあ、またね!」

モモの背中にお母さんと乗ると、モモはバサッと飛び立ちました。

モモの背中から今日冒険した場所をそうっと眺めました。
紫陽花の丘は虹の中でおひさまに光ってキラキラしていました。


             〜おしまい〜

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