静かな朝に思ふこと。
今日が人生最後の日ならば。
もしそうだったなら、貴方は何をしますか?
って、もう耳に聞き飽きた質問だった。
問われる度に私は、
好きな人に会いたいだとか
家族と過ごしたいだとか
色んな答えを返してきた記憶がある。
たぶん、おそらくだけど、
"普通の日常をやり過ごしたい。"
それが最近は一番しっくりくる答えだった。
10月中旬、雨、石垣島。
年に一度、秋に来ると決めてから
2回目になる石垣島。
初日。土砂降りの雨の中。
海沿いのキャンプ場まで原付を走らせる。
目的地までやっとの思いで辿り着くことは出来ても、
島の怒りは治らなくて
ぐちゃぐちゃになった土の上に
テントを張って眠りについた。
深夜うなり続けた雷鳴と、安っぽいテントから染み出す雨水で何度か目が覚めた。
5回目くらいの嫌がらせみたいな起床。
もう空はうっすら明るさを帯びていて、
時計の針は12と6とを結んで一直線になっていた。
テントから出ると、まだ雨は降っていたけど
歩き出したくなって、フラフラと海辺に降りた。
このキャンプ場に来たのは今年で2回目。
去年初めてこの場所に来た時に歩いた
海に出れる道を私の足は覚えていた。
生い茂る木と木の間を縫って
行き着く先に広がった世界。
私の目の前に飛び込んできた世界の色は
どことなく怒りを隠せないまま泣いている様な
美しく切ない、グレーに呑まれた白と青。
どんより広がる雲の下で
怪しく、全く音のない海。
"人生最後"
なぜかこの言葉が頭をよぎり、
いつか、どこかで見た洋画のワンシーンで
主人公が世界の終末を迎えている時のような。
そんな気分になった。
私だって、最後くらいは。
壮大な、この地球の生み出す
美しく悲しい絵を
眺めていてもいいかもなぁ、
なんて柄にもなく思ってしまう。
-人生最後の日。
一体。
私は何をしているんだろう。
いつだって思い通りにいかないこの人生を
悔やんでいるだろうか。
それでも日々笑って暮らしたこの毎日を
振り返り微笑んでいるのだろうか。
当たり前で、私にとってありきたりな。
ただ過ぎていく日常という今日を
しっかりと生きて。
愛する人の腕の中で
「おやすみ」を告げて。
眠りに着く夜ならいいなぁ。
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