第一級陸上無線技術士に一発合格した話

ほぼ知識ゼロの状態から3ヶ月半死ぬ気で過去問周回したら一陸技に一発合格した話です。
※スコーンの話(過去の記事)を読みたい人はこちら
 ホームメイド・スコーンを楽しむ
 ホームメイド・スコーンとクロテッドクリームのレシピ
 英国のおうちスコーンを食す
今回はスコーンとは全く関係ない記事です。


試験結果(自己採点)

無線工学の基礎:122/125点
無線工学A:109/125点
無線工学B:84/125点
法規:78点
※法規は60点以上、法規以外は75点以上で合格
時間をかけて取り組んだ科目が順当に高得点となりました。

前提

  • 某国立大学の機械工学系の学部を卒業して10年弱

  • 大学入試の二次試験で電磁気を1問も手を出せずに終わるほど電磁気学を理解していない

  • 大学でも電磁気系の授業はなるべく選択しないようにしていた

  • 高校レベルの電磁気学で理解できていたのはオームの法則だけ

  • 数学(微分・積分)は、一陸技試験で使うレベルであれば特に問題ない

現職は特に理系っぽいところでもなく、大学の授業の内容もほとんど覚えていません。微分積分はかろうじてできますが、それ以外の知識レベルは文系の方と同じスタートラインだと思います。ただ、数式とかグラフとかにあまりアレルギーがないのは多少アドバンテージかもしれません。
大学生のとき、授業料が免除されないと金銭的に自主退学の危機だったので、トップレベルの成績を維持するために死ぬ気で勉強(試験の過去問周回)していました。その時に頑張った経験が今回の試験対策に役立ったと思います。

学習方法

使用した参考書

有識者から「とにかく過去問を回せ」とアドバイスがあったので、その言葉を信じて過去問を解きまくりました。
私が使用した本はこちらの2冊。
(アフィリエイトではありませんので安心してご覧ください)

緑の表紙の方は過去の受験者から譲り受けることができたので使いました。
上のリンクでは最新の「第4集」の方を貼っていますが、実際に使ったのは一つ古いバージョンの「第3集」であったため、一通り周回していざ最新の過去問をやってみたとき、無線工学A/Bが知らない問題だらけであまりにも太刀打ちできませんでした。
ここ数年でかなり出題傾向が変わっていることが分かったので、試験2ヶ月前くらいに慌てて過去問集(白い表紙の方)を購入しました。これだけでもかなり演習量を稼げるので、初めからこちらの過去問集に注力するだけでも合格圏内に到達できたと思います。
情報通信振興会が出版している黄色い表紙の過去問集もありますが、そちらは文字が小さくて細くて、解説も読みづらいので使いませんでした。吉川先生はいいぞ。
最終的には「自分が読みやすい過去問集を買え」ということなのですが、最近の一陸技試験は新しい問題がどんどん出てくるので(特に工学A)、過去問を回して合格するのであれば、そのとき買える一番新しいものを買うのが良いと思います。

学習方法

4月から勉強を始め、試験日の前日までの100日間、毎日欠かさず最低2時間以上(だいたい平日は帰宅してから22時頃まで、休日は8時〜11時、19時〜21時くらい)過去問を解きました。
毎日2時間はさすがに忙しい人には難しいかもしれませんが、どんなに時間が短くても毎日欠かさずやるというところがポイントです。夜寝る前に歯磨きするのと同じくらい、勉強が習慣になるレベルでやるということです。
また、問題を解くときはなるべく紙に書いて解くようにしました(電車の中ではさすがにできませんが)。書くという動作で、自分のアウトプットを客観的に見ることができるようになり、記憶が定着しやすくなる気がします。

過去問を周回するときは、次のような手順で進めました。

  1. 最初のページから順番に解き(解くときはノートに書き殴る)、答えが出せなかった問題にはふせんを貼ります(細めのふせんが邪魔にならなくて良いです)。最初のうちは当然ほぼ全部の問題にふせんが付くと思いますが、それで大丈夫です。

  2. ふせんを30枚くらい貼ったら、ふせんが貼られている最初の問題まで戻り、解き直します(できれば翌日に解き直すのが良いですが、早いサイクルで何回も周回するつもりなら数時間後でも大丈夫です)。

  3. 解ければふせんをはがして、表紙の裏にでも貼っておきます(後で解けない問題があれば再利用します)。解けなければそのまま貼っておきます。

  4. だいたい7割くらいふせんをはがし終わったら、2で中断したところまで進み、新しい問題を解き始めます。

  5. 1〜4を繰り返します。

以上の手順を1科目につき1ヶ月くらい(法規は2週間くらい)繰り返すと、新問入りの最新の過去問を解いてもなんとか合格点に到達するようになりました。
最初のうちは本当に何が何だか分かりません。問題文が何を言っているのかすらわからない状態ですが、それでもなんとか苦しみながら繰り返していると本当になぜか解けるようになってきます。…解けるというか「問題文が何を聞いているのか相変わらずよく分かっていないのに答えだけは分かる」という不思議な状態です。
真の意味で理解して学習している訳ではないのですが、私はただ試験に合格して資格が欲しいだけなのでそれで良いのです。

参考書の分冊化

勉強を習慣にするために意外と大事なことは「重い問題集を分冊化する」ということです。「吉川先生の過去問」はそのままの状態だと辞書より重いので、科目ごとにバラして持ち運びできるようにしました。これにより、電車の中やちょっとした待ち時間でも気軽に過去問を眺めることができるようになります。(「吉川先生の過去問」は最初から分冊になっているバージョンもあるのですが、少し高くなるのでケチりました。)

参考書のバラし方はこんな感じです。バラした後、適当な色紙を本と同じサイズに切って、表紙・背表紙になるようにのりで本に貼り付けてから背表紙テープを貼ると良い感じです。

アイロンとかヒーターとか使うと綺麗に背表紙が剥がれるようですが、そこまでせずとも3ヶ月半使うのに不便はありません。

メンタルの維持

特に最初のうちは問題が分からなさすぎて全然ページが進みません。気が滅入ります。しかも4科目もあるので本当につらいです。どうしても手が進まなくなってしまったときは、思い切ってオフの日を作りましょう。
私も5月末頃にどうしても何もかも嫌になってしまったので、平日に休みを取り、20年ほど愛読している漫画「ジョジョの奇妙な冒険」のスピンオフ作品の実写「岸辺露伴は動かない」の劇場版を見にいき、そのグッズを爆買いし、エドワード・ゴーリーという好きな絵本作家の展覧会を見に松濤美術館に行くというスペシャルな休日を過ごしました。すごくリフレッシュできました。

試験当日

会場にて

試験会場は晴海にある日本無線協会でした。
外は7月の灼熱地獄でしたが試験会場はちょうど良い気温でした。冷房が寒いかと思って羽織るものを持って行きましたが出番無し。試験会場は自由席で、来た人から順番に好きな席に座っていくスタイルです。
隣に人が来ると、消しゴムを消す時の机の振動が気になったりするので、なるべく教室の端の一人で座れそうな席に座るのが良いと思います。試験開始の30分くらい前に会場に着きましたが、一応選べる席がまだありました。
教室の前方2か所に時計があるので、腕時計を忘れてしまっても一応大丈夫。シャープペン(もしくは鉛筆)と消しゴムだけ忘れないでください。
遠方から来ている方は、スーツケースを会場の後ろの方に置いていました。ただし、荷物係の方がいるわけではなく、ただ邪魔にならないところに置いてあっただけなので、盗難が心配な方は事前にコインロッカーや宿泊先のホテル等で預かってもらっておいた方がいいかもしれません。
なお、私は試験前に糖分を取ろうと思ってマーブルチョコを持って行ったのですが、残念ながら試験室内は飲食禁止…廊下に出れば飲食できるのですが、それも面倒だと思って結局食べることはありませんでした。大学生の頃から、試験があるときはマーブルチョコをキメるのがルーティーンだったので少々落ち着きませんでしたが、まあ仕方ないです。

↑いつもは試験前に口に流し込んでいます。ジャンボサイズが好き。

昼ごはん

午前の試験を早めに切り上げて教室を出ると、廊下のベンチにずらっと受験生が並んで座っていて圧巻です。電線に並んで止まっている鳥を思わず思い浮かべました。みんなおにぎり頬張りながら必死で勉強しててすごい。
私は昼休みは外に出てリフレッシュしたかったので、近くの「東京海員会館」というホテルの中にあるレストラン「マリンクル」に行きました。試験会場から徒歩3分くらいです。

11時半オープンなので、開店と同時に入店できるくらいの時間で試験会場を途中退室します。早めに着いてしまったら、レストランの前(ホテル2階、エレベーターを上がったところ)にソファがあるので座って待てます。きれいなトイレもあり。
メニューは限定5食の週替わりランチと、牛丼、エビチリ、カレー、名物晴海ライス。どのメニューもなぜか味噌で味がつけられていて名古屋感があります。私は1日目は週替わりランチ(なすと豚肉の味噌炒め)、2日目は晴海ライスを食べました。晴海ライスは強いて言うならゆるいマッシュポテトにフライの衣と味噌ソースをかけたような感じの不思議な食べ物でしたが、妙にクセになる味でした。
オープンと同時に入店できるなら、週替わりランチが特別感があっておすすめです。コーヒー、ジャスミン茶、レモン水が飲み放題なので水分補給もしておきましょう。
お会計は食券制前払いです。多分現金のみ。
このお店は席数が多い割に空いていて穴場だと思います。12時以降は人が少し増えてきますが、その頃になれば試験会場が開放されるので、会場に戻って問題集の最後の確認をしました。

試験のコツ

試験を受ける頃には、過去問は大体解けるような状態になっていたのですが、どうしても分からない問題はありました。大体は2択くらいに絞り込めるのですが、そこから答えを決めるのに考慮したのは次の2つです。

詳しい説明はリンク先をご覧ください。
選択肢の均等配置則については、他の答えにある程度自信がないとあまり意味はないのですが、5つの選択肢のうち2つまで絞り込んだ答えを決めるときに役立ちました。
選択問題の多少混合則は、一部でも分かれば結構絞り込むことができるので役に立ちました。

自己採点

1日目が終わった後、あまりにも出来が不安すぎて爆発しそうだったので、帰宅してから自己採点しました。
非公式の解答速報は使わず、参考書(過去問集)で似ている問題があれば採点、なければ保留という形で採点しました。私が使っていた過去問集には、各科目最初のページに出題分野と設問番号の表が載っていたので、簡単に調べることができました。
この時点で、少なくとも答えが断定できる範囲で合格点を超えていることを確認。2日目が終わった後も同様に添削して、合格点を超えていることが確認できました。
公式の解答が出たその日にきちんと自己採点し直して、全科目合格を確信しました。

免許申請

合格発表後、免許証の申請を出します。

レターパックライト

返信用封筒は「定形で簡易書留推奨」とのことですが、封筒に免許証だけそのまま入れられた状態で届くのに破損等の不安があること、簡易書留だと日中仕事で不在にしているのに受け取りづらいことから、往復ともにレターパックライトを使ってみました。
簡易書留と比べて補償がないことが気がかりですが、免許証1枚に簡易書留の補償(5万円)は逆に過剰な気もします。また、対面でないと受け取れないのはかなり不便です。
その点、レターパックは追跡番号があるので、返信用レターパックの追跡番号をあらかじめ控えておいて、毎日荷物追跡の検索をすればいつ発送されたか分かりますし、そこそこ大きなサイズの厚紙封筒なので破損や紛失の心配も少ないのではないかと思います。
なお、返信用レターパックは、長辺を半分に折るとレターパックに入れて送ることができます。
免許証は、合格発表の当日に申請書を送付して約3週間後に到着しました。受験者の皆さんの反応からすると、郵送よりも直接受け取りに行った方が早く入手できるようです。
※レターパックの対応可否はその時の担当の方によって異なる可能性がありますので、ご利用は自己責任で。

証明写真

スマホのカメラは、真正面から自分の顔を撮影すると顔が実際の形と比べて歪んで見えます。最近はスマホで撮って証明写真サイズに加工してコンビニ印刷できるサービスもありますが、私はスマホで撮った自分の顔がとんでもなくブサイクで耐え難かったので、証明写真機まで写真を撮りにいきました。
これもネットで口コミを調べまくったところ、「Ki-Re-i EX」という機種(名前がプリクラみたい)が一番良く撮れそうだったので、近くの駅にあった同機種で写真を撮りました。
信越総合通信局が、写真を撮るときのアドバイスをしてくれています。

 左の写真のように、濃い目の服を着て、背景が服の色より淡い色の場所で撮影すると写真の仕上がり良いものになり、右の写真のように、淡い色の服を着て、背景が同系色の場所で撮影すると、頭(顔)の部分だけが印刷されたような仕上がりになってしまうのがお分かりいただけると思います。
 服の色と背景色について、これらのことを意識すると仕上がりが良い写真になります。

https://www.soumu.go.jp/soutsu/shinetsu/sbt/info/musenjuugisya.html

ということで、黒い服を着て青い背景で写真を撮りました。
証明写真機の美肌効果のおかげもあり、自分でもびっくりするくらい良い写真が撮れました。年をとってから「若い頃はこんな顔だったんだ」と誰かに免許証を見せて驚かせるのが将来の楽しみになりました。

受験を振り返って

初めから一発合格を狙って勉強していましたが本当につらかった。でもそれだけ合格時の喜びはひとしおです。
一陸技の有資格者の中でも、一発合格は「すごい」と言ってもらえることなので、自己肯定感も高まりました(さすがに筆記時代の試験で合格した方には到底及びませんが…)。ガウスの法則すら覚えてない状態から、よくここまで頑張ったと自分でも思います。
試験が終わってからしばらくの間は勉強癖が抜けないので、その勢いのまま別の資格の勉強を始めるのもいいかもしれませんね。